皆々様こんにちは。
『ワンダーエッグプライオリティ(以下『ワンエグ』)』担当のgatoです。
前回はねいるが旧友の寿と再会し、最後に植物状態だった彼女の息の根を止めるという衝撃的な結末で終わりました。
他方でアカと裏アカが全ての元凶であることが示唆されるなど、物語の核心に迫る場面もありました。
いよいよクライマックスが近づいてきた感じがしますね…。
さて今回はタイトルでそれとなくわかるように桃恵が主軸の物語…と思いきや、やっぱり核心に触れる場面が多いようです。
早速振り返ってみましょう。
目次
男だとか、女だとか
前半の中心は桃恵の恋にまつわるエピソード。
切なく、ほろ苦い結果に終わったエピソードですが…じっくり振り返ってみましょう。
桃恵の恋
今回、桃恵はインスタのフォロアーの男の子とデートをして、告白されましたが…結果は残念なことに。
理由は男の子が桃恵を「男子」だと思ったから。
どうやら男の子は同性愛者だったようですね。
うーん、斜め上の結果に…。
元々桃恵は女の子らしさにこだわっており、男の子のデートも入念に準備し、スケジューリングするなど、並々ならぬ気合を入れていました。
しかし相手はまさかの女の子に興味なし。
これは当人としてはしんどいでしょうね…。
笑い話といいながらアイ達に話したところを見ると、一人で抱え込むのが相当辛かったことが窺い知れます。
まぁでも…以前桃恵は自分のイケメンぶりを他の女子との関係性を円滑にするために利用している旨の発言をしてたのを踏まえると、彼女なりの自己プロデュースが裏目に出てしまっている感じは否めませんね。
ただ、良かれと思って相手の要望に応じてしまう彼女の優しさが根底にあるだけに…なかなか辛いものです。
オトコノコの薫
今回登場したエッグの中の少女は栗田薫。
なんと性同一性障害であり、性自認は男という、これまでにないパーソナリティを持っています。
「見た目で判断してほしくない」という事情を抱えている点では、桃恵と共通しています。
ちょっと気障な動作が印象的な薫ですが(男を自覚するための意図的なものでしょう)、その過去は結構ハードなもので…。
剣道部に所属していた際に相談していた顧問(今回のワンダーキラー)に暴行された挙句に、妊娠させられるというかなり酷いものです。
というかエグすぎるやろ…。
性自認が男ということも考えると、薫の胸中は察して余りあるものです。
当人は男として生きたいと望んだだろうに、顧問に心身共にズタズタにされた挙句、妊娠というある意味「女」であることを強制させられるような目に遭わされたわけですからね。
それでも命を絶った際に巻き添えにした赤ちゃんを思いやる薫の気持ちを考えると…あの気障な仕草で明るく振る舞う姿が痛ましく見えてきます。
それにしてもこれまで出てきたワンダーキラーの中でもトップクラスの外道っぷりを見せた顧問ですが、あのデザインも露骨に「男」を強調したものでしたね(詳細は言えません笑)。
優しいキス
無事に顧問を倒した後、桃恵と薫は語り合い、最期にキスを交わします。
キスをされた後の桃恵のリアクションといったら…顔を真っ赤にして可愛かったですね(笑)
これまでも助けたエッグの中の少女に惚れられていた桃恵ですが、今回ばかりは様子が違いました。
まぁ「見た目で判断してほしくない」事情を抱えている者同士、お互いの悩みを理解し合えたことが起因したのでしょう。
残念ながら薫は故人なので、再び巡り会うことは難しそうですが、桃恵にとって、今回の出来事はある意味ハルカ以上の理解者を得る機会となったのではないでしょうか。
潜熱の終わり
桃恵のエピソードと同時進行で今回進んでいたのがアイと沢木の関係の行方です。
こちらもじっくり見てみましょう。
さらば、先生
元々絵描き志望だった沢木ですが、独り立ちできることになったため、教職を退職することに。
小規模とはいえ個展を開催できるところを見ると、それなりに軌道に乗っているようです。
ところで、そのことを伝えるやり取りの際、アイが「逃げるわけじゃなくて?」と思わず口にしていました。
これは恐らく小糸に関することでしょうか。
まぁ沢木に関しては小糸の自害との関係がまだ明かされていませんし、彼女と沢木の間に何があったかも不明です。
少なくともアイが「逃げる」という表現を使った辺り、彼女の中で疑念はまだ晴れていないのでしょう。
ただ、沢木への好意を自覚することで、やっと沢木と向き合えるようになった…というのが、今の彼女の状態なのかもしれませんね。
好きという前に
桃恵のゲームクリアを知らされた後、アイは一念発起して沢木の個展に向かいます。
恐らくそこで告白しようと考えたのでしょうね。
しかし自分がモチーフになっている絵を目の当たりにし、そこに込められた沢木の想いが「アイの中に垣間見える多恵の面影」だったことを知ることに。
つまり沢木からアイへのアプローチは多恵への愛情の延長線上にあるものだというわけです。
これを知ったアイは静かに涙を流します。
この段階で、アイは沢木を自分を見ていないことを悟ったのでしょう。
早い話が、失恋を感じ取ったわけです。
この時の沢木の表情と語調から考えるに、リカが言った「アイ目当てで多恵に近づいた」という説は否定されたといってもいいでしょう。
シンプルに沢木は多恵を愛し、多恵の娘であるアイを大切に想っているのでしょうね。
そして沢木への想いを整理したアイはついに小糸のことを切り出します。
ストレートに小糸の自害の原因を問われた沢木の表情はかなり真剣なものでしたが…。
どんな回答が待っているかは次回に期するしかないですが、あの様子を見る限り、沢木と小糸が恋愛関係にあり、彼が彼女に悪質な行為を働いたという可能性は低そうですね。
単純に考えれば沢木に振られた小糸がやけっぱちになって飛び降りた…って感じになりそうですけど、個人的には別の記事で示唆したようにアイが絡んでいる可能性もあるかと思います。
まぁいじめられていたアイの代わりに標的になった経緯がありますから、小糸がアイに対して複雑な感情を抱いていても不思議ではありません。
いずれにせよ、次回が重要な分水嶺になりそうですね。
お色直し
今回のエピソードで印象的な描写が、桃恵、ねいる、アイがそれぞれ髪型や服装を変えていたという点でした。
外見を変える描写は何らかの心情の変化を指し示すものになりがちですが、それぞれニュアンスが違う感じがして面白かったですね。
桃恵の髪型・服装の変化は「理想の自分になるため」のおめかしといえるでしょう。
とりわけ女の子らしさにこだわる桃恵にとって、本人の台詞にあったように、スカート(女の子らしさの象徴)をはくことはかなり重大な意味が含められています。
ねいるは髪型を変えていましたが、どこかリラックスした印象を受けました。
そもそもねいるは三つ編みにしたうえにヘアピンをいくつも使うなど、わりとかっちり髪型を作っている感じでしたが、今回見せた髪型は髪をおろし、リボンで止めるというもの。
なんていうか、開放的になった印象がありますよね。
まぁこれは寿の一件が片付いたことで彼女の心が解放されたことを示唆しているのでしょう。
そしてアイ。
アイのお色直しは服装を代え、髪も後ろに縛るなど、桃恵と同じ「おめかし」のニュアンスが強いものでしたが…。
その外見は母親の多恵そっくり、おまけにさきほど述べたように面影に多恵がいることを沢木に指摘されてしまいます。
アイからしたら沢木に好かれるようにきっちりしたかったのでしょうけど、結局は多恵と似ていることをより自覚させることになってしまった。
いうなれば、理想の自分が恋敵に似てしまうという皮肉な結果を招いたわけです。
多恵に対して蟠りがあると口にしていたアイですが、結局沢木と多恵の土俵に上がれないことが服装を変えたことで露呈するのはなかなか痛烈ですね。
エッグの陰にいる者達
前回はエッグにまつわる色んな裏事情が暗示されていましたが、今回も色々重要な情報が出てきました。
ジャパン・プラティ創始者
前回美咲と怪しげなやり取りをしていたアカと裏アカ。
前回の記事では黒幕説を唱えてみましたが、やっぱり黒幕でしたね(笑)
正確にはねいるが所属していたジャパン・プラティの創始者ということ。
天才科学者といわれるほど才能に恵まれていたようですが、今は肉体を捨てて脳だけ持っているとのこと(あの人形めいた肉体は義体みたいなものでしょう)
うーん、なかなかのSF臭(笑)
脳移植なんてオーバーテクノロジーな技術をどうやって実現したかも気になりますが、それよりまず注目すべきは2点。
まずねいるが彼らの正体を初めから知っていたということ。
写真まで持っていたところを見ると、アカや裏アカとは結構深い関係のようですね。
それにアイがエッグに関わる前に彼女が戦っていたことにもなんとなくつながります(恐らくエッグに関する計画の初期メンバー)。
そして彼らの専門。
「脳移植」という言葉や寿の研究のことも踏まえると、アカと裏アカは脳科学や精神分析に近いジャンルを専門としているのではないでしょうか。
後述するタナトスと工口スって精神分析で出てくる用語ですしね。
後、アカと裏アカが黒幕っぽい雰囲気が出ていましたが、今回のやり取りを見ていると、彼らはどちらかというと観測者って感じですね。
少なくとも『魔法少女まどか☆マギカ』のキュウべぇのようなポジションではなさそうです。
まぁ目的がよくわからない実験(めいたプロジェクト)に年端の行かない中学生を巻き込んでいる段階で、それなりにヤバい人達ですけどね(笑)
再生?
剣道部顧問を倒し、薫を見送った桃恵ですが、そこで念願のハルカの蘇生に立ち会うことになります。
あまりに引っ張られ過ぎて、最早蘇生なんて嘘なんじゃないかと誰もが思っていた矢先に(笑)
これで桃恵も無事にハルカと再会…と思いきや、彫像がなくなった一方、肝心のハルカも蘇生するなり消えてしまいました。
これは…一体…?
その後の展開を踏まえると、やっぱり蘇生は嘘だったんじゃないか…なんて思えてきますね。
まぁハルカの行く末が不明なので断定はできませんが、その後の桃恵の描写を見る限り、ハルカと再会したと思える示唆はありませんでした。
やっぱり「大切な人を蘇らせられる」って話はブラフだった可能性が高そうですね。
恐ろしきハイフン
ハルカが消えた後、突然現れたのはハイフンという謎のキャラクターでした。
セーラー服を着た少女…かと思いきや頭部は蝶の身体というかなりインパクトのある外見(羽を閉じている時の頭部がケムール人にしか見えない笑)、おまけに鎌を持っており、パニックを一撃で仕留めるほどの強さを誇ります。
ゲームクリアを告げたところを見ると、どうやらエッグでの戦いにおける重要な参加者のようですけど、やっていることは完全に悪役ですよね。
パニックの命を奪った挙句、その肉を食わせてきたハイフンのせいで桃恵は完全に心が折れてしまっています。
そんなハイフンですが、パニックが躊躇なく攻撃をしかけたところを見ると、アンチに近い存在だといえるでしょう。
また、桃恵に対して「お前、タヒにたいか?」と尋ねてきた辺り、どうやら彼女の立ち位置はタヒ神に近いものともいえそうです。
もし告白の一件で桃恵が立ち直っておらず、気の迷いで「イエス」と答えていたら…恐ろしい結果が待っていたでしょうね。
余談ですが、ハイフン=「-」は単語同士をつなげるために用いますが、それを踏まえるとハイフンはあの世とこの世…この後の内容を引き合いに出すならタナトスと工口スをつなぐ存在かもしれませんね。
タナトスと工口ス
ハイフンが登場したことと、そのタイミングでのアカと裏アカのやり取りで出てきたワードが「タナトス」と「工口ス」。
前回の記事であれやこれやと予想しましたが、この二つが出てきたことで大きく方向転換しなきゃいけない可能性が出てきました(笑)
ひとまず「タナトス」と「工口ス」ですが、これはフロイトが作った単語で実在するものです(ラカンなど精神分析や心理学の分野で研究されてます)
それぞれギリシャ神話に出てくる神の名前ですが(工口スは工ッチなことじゃない笑)、それぞれは言い換えると「タヒの欲動(デストルドー)」、「生の本能」となります。
意味合いとしては、タナトスはタヒ(正確には非生命)へ向かいたいという衝動的かつ破壊的な欲動であり、工口スはそのタヒの欲動に抗う本能…って感じでしょうか。
正直僕が浅学なうえに、タナトスは結構複雑かつ批判されている概念でもあるので、正確に捉えるには言葉が足りませんが、今回は辞書的な意味で使います。
そんなタナトスですが、直球で捉えるなら以前アカが語っていた「感情でタヒんでしまう女の子の話」が連想されるかもしれませんが、実際はもうちょっと複雑です。
タナトスと工口スは人間の欲望におけるコインの表と裏のようなものであり、この両者がせめぎ合っているような状態です。
人間の欲望は生に対する渇望であると同時に、自分や他者に対して破壊的な一面も持ち合わせている…といえばわかりやすいでしょうか。
作中のキャラクターでいうならリカが一番わかりやすい例でしょう。
リカは母親を嫌うあまり父親を愛し、求めていますが(これが工口ス)、他方で自分が母親になること恐れ、自傷行為にはしったり、ワンダーキラーの口車に乗せられて生きることを諦めようとしていました(これがタナトス)。
つまりリカは「母親からの脱却」という欲望を「父を求める」と「自傷する・生きることを諦める」という異なるベクトルの手段で遂げようとしていたわけです。
このように、一つの欲望の根幹には二つの欲動のせめぎ合いがあります。
お助けキャラとエッグの中の少女
さて、タナトスと工口スを簡単に解説しましたが(間違いがあったらご指摘ください)、これを踏まえてアカと裏アカ、そしてお助けキャラとエッグの中の少女の立ち位置を見ていきましょう。
アカと裏アカの台詞から考えると、どうやら二人は工口スの戦士として少女達をエッグ世界に召喚し、そこでエッグの中の少女を救わせ、やがて出現するハイフンに立ち向かわせようとしていたようです。
苦悩を抱いて自害した少女や圧倒的なタヒの恐怖をもたらすハイフンを「タナトス」の象徴に見立て、それを乗り越えさせることで工口スを優位にしようとした…といった感じでしょうか。
この見立てを念頭に置くなら、アカと裏アカの目的はタナトスを克服することにより、自害を失くそうとしている…と予測できる余地がありそうです。
そうなるとお助けキャラとエッグの中の少女の立ち位置が若干変わっていきます。
まずお助けキャラはアイ達の工口スを失わせないようにするための存在だったのでしょう。
いうなれば、お助けキャラはある意味アイ達を「母親」に見立てることで生きる活力を与えるようなポジションです(実際、リカはマンネンのおかげで再起していました)
ただ、同時にお助けキャラはアイ達が万が一タナトス=ハイフンに敗れそうになった際の身代わりの役目も与えられていたのでしょう。
だからハイフンは桃恵の代わりにパニックの命を奪ったわけです。
そしてエッグの中の少女ですが、彼女達はタナトス側の存在でしょう。
ねいるが助けた葵(サングラスをかけた少女)が代表例ですが、彼女達は自分達の苦悩や思想をアイ達に与えることにより、トラウマを想起させたり、同じ苦悩を味合わせてきたりします。
つまり彼女達は単純に救出すべき存在ではなく、油断すればアイ達をタヒに引きずり込み得る存在でもあるわけです。
同時に、それは彫像の少女達にもいえるかもしれません。
実際、彫像になった妹に対してねいるはタヒの誘惑を感じ取っていますし、小糸に関してもアイは「一緒にタヒんでくれと言ってほしかった」と思いを吐露するなど、彫像の少女もまた単純な救済対象とはいえません。
そう考えると、アイ達は常にタナトス…つまりタヒに近づかれているということになりますね。
『ワンエグ』第10話感想
桃恵とアイの印象的なエピソード、ハイフンの登場、ショッキングなシーンと盛り沢山な第10話でした。
クライマックスに差し掛かっているのはわかるけど、結構エグいな…。
パニックを喪い、ハイフンに圧倒的な恐怖を植え付けられた桃恵はどう立ち直るのか。
沢木の口から語られる小糸の自害の真相は?
次回も注目です。
▼ワンエグの記事はこちらにまとめてあります!
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