皆々様こんにちは。
『機動戦士ガンダム水星の魔女(以下『水星の魔女』)』担当のgatoです。
前回は前日譚『PROLOGUE』でゴリゴリのSF感を醸し出してきた本作ですが、今回よりいよいよ本編に入ります。
『ガンダム』シリーズ初の女性主人公が、初の学園もので一体何をするのか…。
わくわくしながら迎えた第1話ですが、序盤から超展開があったようで…。
一体何があったのか、じっくり振り返ってみましょう。
目次
学園へようこそ
スレッタが編入したアスカティア高等専門学園ですが、一見するとまともそうに見えて…実際はなかなか強烈な場所でしたね。
パイロット科・経営戦略科・メカニック科があるところを見ると、MS開発等を行っているベネリットグループが扱っている事業に関わるノウハウを学べる場所のようですが…。
なんと金銭・権利・謝罪などを賭けて生徒同士がMSに乗って戦う決闘という制度があり、それを総括する決闘委員会なるものまで置かれているようです。
おまけに決闘委員会でとりしきっているのは生徒達自身、決闘も模擬戦みたいなものかと思ったら、相手のMSのブレードアンテナを折るためなら実弾もビームサーベルも使えるというガチ仕様。
つーか、未成年がほかの生徒がいる前でMS乗り回して私的な理由で戦えるって…そこそこの無法地帯じゃないか?(笑)
まぁ学園の運営母体であるベネリットグループの御曹司とかご令嬢がいることもあって、ある程度学生に主導権が与えられているのでしょうね。
貴族的な生徒達
学園も学園なら、当然生徒も生徒です。
今回は見事にかませ犬役を果たしてくれたグエルを始め、学園の生徒もかなり個性的な雰囲気が漂っていますね。
また、グエルの言動から伺える限り、一部の生徒からは貴族的な印象を感じました。
『F91』や『W』も貴族的なキャラクターが多いですが、それよりもちょっとひどい感じだな(笑)
おまけにグエルの父であるヴィムもミオリネとグエルの婚約関係を作ろうとするなど、古式ゆかしい家同士の婚姻関係を重視している印象があります。
ただ、婚姻の決め方が決闘という乱暴な手段であることを踏まえると、家柄・格式・歴史的な血統よりも、シンプルに腕っぷしがものを言う極端な実力主義であることが窺えますね。
グエルとミオリネが決闘前に「結果が全て」と語っているところも見ると、あの学園の生徒…少なくともスクールカースト上位にいる生徒達は自分達の願望を実力により達成することを絶対視する思想を植え付けられているのでしょう。
そして「結界以外の言葉を私は必要としない」と言い放ったデリングが…この思想の根源なんでしょうね。
実際、婚約者絡みのルールはデリングが作ったことがグエルのセリフから仄めかされています。
まぁ単純明快でわかりやすいですが…ここまで実力主義だと辛いなぁ(笑)
悪意渦巻くベネリットグループ
学園が学園なら、生徒が生徒なら、もちろん大人達も大人達です。
『PROLOGUE』でヴァナディース機関を壊滅させた面々が中枢に籍を置くベネリットグループですが、こちらもこちらで生き馬の目を抜くやり取りがされています。
やはり一番驚いたのが、グエルとミオリネを結婚させるためにデリングを吹っ飛ばそうとしたヴィムでしょう。
おまけに彼の口ぶりからするとベネリットグループに属するグラスレー・ディフェンス・システムズやペイル・テクノロジーズのトップも同じ行動をやり得るということがわかります。
婚約関係を重視するところは何とも貴族的ですが、そのために親同士が平気で命のやり取りをするって…ここまでくるとただの経営者にしては発想が異常ですよね。
それにしても『PROLOGUE』においてデリングは終盤で監査組織であるカテドラルのトップになったものの、そこまで地位が高い印象はありませんでしたが、第1話時点では呼び捨てにしていたサリウスが敬語を使うなど、ベネリットグループを統括しているかのような振る舞いをしていました。
本編開始までの間でかなり出世したようですが、カテドラル自体がどうなっているかはまだよくわかりませんね。
ただ、グエルが口にしていた「ドミニコス」とはカテドラル直轄の特殊部隊のことだそうです。
ここら辺が将来的にスレッタと敵対する存在になりそうですね。
解放望む花嫁
さて、第1話から脱走するなどお転婆ぶりを発揮していたミオリネを掘り下げてみましょう。
婚約者になんてならない
ツンツンしていてなかなかデレてくれないうえに、いきなり宇宙空間に身一つで脱走しようとしたミオリネですが、彼女を取り巻く環境は…決してまともではありません。
ミオリネはデリングが作った謎ルールにより、決闘の勝者が婚約者になってしまううえに、その座に収まっているグエルがなんとまぁ乱暴なこと。
同級生にも嘲笑された挙句、グエルが暴れて自室をメチャクチャにしているのにSPは興味すら示しません。
ベネリットグループトップの娘でありながら、誰も彼女を守ろうとはしないわけです。
大切にされ過ぎて息苦しいお姫様はいましたけど、ここまで大切にされてなさ過ぎるお姫様もすごいですよね…。
ミオリネが身一つで脱出しようとしたり(何かあてはあったのでしょうけど)、使えないMSで戦おうとするのも、周りに頼れる人がいないからこその行動なのでしょう。
他方で、勝てないとわかりながらも「自分のケンカ」を自分で果たそうとするところを見ると、「トロフィー」として扱われることに抗い、自分の人生を自分で決定したいと願う彼女の強い意志が感じられますね。
ところで、ミオリネを巡る決闘とか婚約者のやり取り、グエルの振る舞いって『少女革命ウテナ』を彷彿とさせるんだよなぁ(笑)…。
クソ親父は語らない
実の娘から「クソ親父」呼ばわりされていたデリングですが、ミオリネに嫌われるのも納得な人物でしたね。
思春期の娘の意志を無視して決闘の勝者を婚約者にするという謎ルールを作った挙句、脱走しようとしたミオリネに会うことを「つまらん時間」と言い放つなど、強権的かつ冷徹な性格が強調されています。
『コードギアス反逆のルルーシュ』に出てくるシャルル(本性を表す前の)に似ていますね。
おまけに極端な結果主義者であり、例え回復する可能性があっても求める業績を達成していない会社は容赦なく切り捨てています。
まぁ娘にも同僚にも嫌われますわな(笑)
ただ、『PROLOGUE』での彼の姿を見ていると、色々複雑な事情を抱えていそうな印象もあります。
『PROLOGUE』でもデリングはヴァナディース機関の壊滅を独断で実行するなど強硬的な人物として描かれていましたが、カテドラル設立を宣言する際の彼の演説はどこか筋が通っていました。
要約すると、「兵器は人をコロすためのものだからこそ人は罪を背負う。その罰は人によって科さなければならない。それが戦争という愚かしい行為における最低限の作法であるべき。戦争や人ゴロしは自ら引き金を引き、奪った命の尊さと贖いきれない罪を背負うものでなければならない」といった感じです。
この演説からは、デリングが「人の命を奪う罪を背負い、その罰を受け入れる覚悟」を決めている人物であることが窺えます。
この覚悟を決めているからこそ、彼の決して妥協しない人間性が醸成されたのでしょう。
そして、彼はアスティカシア高等専門学園で、少なくとも兵器を直接扱うパイロット科で「奪った命の尊さと贖いきれない罪を背負える人間」を育成しようと考えているのではないでしょうか。
だからこそ実力主義的な気風を作ったのかもしれません。
…と、根拠もなくとりあえずデリングについて色々語ってみました。
まぁ彼の考えが仮にこれだったとしても、現時点でミオリネへの仕打ちの正当性は全然思いつかないのですけどね(笑)
強いて言うなら、ミオリネに会わないのは彼女を甘やかさないというデリングなりの厳しさの表れで、彼女を決闘の勝者と結婚させようとするのも、彼が理想とする「奪った命の尊さと贖いきれない罪を背負える人間」なら彼女を守れるという彼なりの愛情の裏返し…といった感じでしょうか。
まぁシャルルみたいに結構ヤバいこと考えている可能性もありますし、今はこれくらいにしておきましょう。
土いじりと母の影
改めてミオリネの話に戻しましょう。
ミオリネといえば印象的だったのが、彼女の趣味がガーデニングや農業などの土いじりという点です。
周囲からは小馬鹿にされていますが、彼女の口ぶりからすると、あの趣味はトマトなど野菜の栽培や研究していたと思しき母親の影響であることが窺えます。
すでに故人となっているようですが、ミオリネにとって土いじりは母親に想いを馳せられる重要な行為なのでしょう。
彼女が自室に戻ったときに「ただいま」と言っているところを見ると、花々に囲まれたあの空間が彼女にとって「家」を感じさせる安らげる場所なのかもしれません。
また、冒頭での彼女の無謀な脱出は地球へ向かうためだったことも明かされています。
うーん、前回の記事でアーシアン・スペーシアンが宇宙世紀におけるアースノイド・スペースノイドに相当するものかもしれないと語りましたが…。
もしかしたらミオリネの母親はアーシアンかもしれませんね。
だとしたら、ミオリネは母の故郷である地球に行こうとしていた…みたいな感じでしょうか。
ただ、『PROLOGUE』でのモビルスーツ評議会のやり取りやグエルの言い草を見ると、宇宙において地球の地位はわりと低いようです。
作中の世界での地球はまだ登場していませんが、どういう状況になっているのかが気になりますね。
魔女は水星より来る
さて、いよいよ主人公であるスレッタについて掘り下げていきましょう。
世間知らずの田舎者
冒頭からお人好しながらもコミュ障全開な田舎者っぷりを見せつけてくれたスレッタですが、彼女の振る舞いから母親や水星の状況がそれとなく伺えます。
恐らく彼女の母は『PROLOGUE』に登場していたエルノラでしょうけど、スレッタのセリフを見る限り、どうやら彼女はまだ生存しているようですね。
お父さんのナディムが酷い最期だったので、唯一の幸いといったところでしょうか…。
そんな彼女が現在何をしているかは不明ですが、スレッタが「水星を豊かな星」にするために学園に編入されたといっているところを見ると、水星の開拓か何かをやっているのでしょうかね。
そんな水星ですが、学園の生徒達の反応を見るとかなりの辺境…というか、スレッタがトマトを初めて見たことを踏まえると、農作物すら満足に育たない過酷な場所である可能性が高いですね。
うーん、水星も直接的な描写が出てきていないのであれですが、個人的には『鉄血のオルフェンズ』の火星よりも酷い…『クロスボーン・ガンダム』の木製帝国みたいな印象がありますね。
まぁあそこみたいに独裁者がいるゴリゴリの管理社会ってことはないんでしょうけど。
いずれにせよヴァナディース機関を潰した連中の子ども達がいる学園に娘を送り込むってそれなりに裏があるように思えちゃうんだよな…。
スレッタ自身、名前変えていますしね。
水星の描かれ方も今作において重要な印象があります。
少女が駆るガンダム
さて、早速第1話でグエルをコーラサワーばりにボッコボコにしてくれたガンダムエアリアルですが、恐らく『PROLOGUE』で登場したルブリスの発展形といったところでしょうか。
スレッタが子どものころから一緒だったようなことをいっていたうえに、初めて登場したときと同じようにガンダムと対話するような描写があったので、ベースはルブリスのままで、改良して現在でも使えるようにしている…って感じですかね。
ただ、『PROLOGUE』では「否定する」とまで言われて、開発元であるヴァナディース機関と一緒に試作量産型がぶっ壊されていたガンダムが、何事もなくパイロットと一緒に学園にやってくるのはちょっと驚きですね。
エランが「ガンダム」と口にしていたところを見ると、一応存在自体はちゃんと知られているようですけど、『PROLOGUE』から10年以上経っているから多少は緩和されたのかしら…。
いずれにせよ、ガンダムを否定したデリングの娘が、ガンダムのパイロットと運命的な出会うのは皮肉ですね。
そして魔女は花婿に
強引にミオリネを嫁にしようとするグエルをやっつけて大団円…かと思ったら、スレッタがまさかのミオリネの婚約者に!
おまけにミオリネがちょっと受け入れているうえに、学園の界隈では同姓婚が当たり前だと…なんてリベラルなんだ!
…っと、観ていて僕も動揺していましたが(笑)
これがLGBTQの文脈に乗せていいものか、アニメ的な百合と考えるべきか、それともそのまま『少女革命ウテナ』っぽい感じでやるのか…。
この辺りの判断は次回以降にしますが、この二人はなかなか面白い共通項がありますね。
スレッタは両親に愛されており、父に先立たれながらも母親を慕い、彼女の想いを継いでいる印象があります。
他方でミオリネは父を嫌っており、慕っていた母親は故人になっています。
片や父が不在、片や母が不在とちょうど真逆ですが、いずれも母親に想いを馳せており、母親の存在が言動に大きな影響を与えています。
この辺りが今後絡んでくる印象はありますね。
『水星の魔女』第1話感想
『PROLOGUE』では設定がメインで語られていましたが、第1話はミオリネを取り巻く状況を示唆する描写がメインでしたね。
「父と子の対立」は個人的に大河内一楼らしい印象でしたが、ベネリットグループ内の抗争や殺伐とした学園の雰囲気もあって、この先不穏なことが起こりそうな気配が盛りだくさんでしたね。
まぁちゃんとMS戦をやりつつ、いいBGMや演出でしっかり盛り上げていたし、スタートとしてはよかったのではないでしょうか。
次回はガンダムについてピックアップするようなので、本編でガンダムがどう扱われるかに注目したいと思います。
ところで…虫の言葉で謝罪するってなんなんだろう…?
▼水星の魔女の全記事はこちらにまとめてあります!
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コメント
水星の魔女の公式サイトにスレッタが学校に行くまでの経緯が書かれた小説「ゆりかごの星」が掲載されてますので是非読んでみてください!
ジョセフさんコメントありがとうございます。
これはうっかりしていました…。
まさかそんな小説が公開されていたとは。。
次回からはその内容も踏まえたうえで記事を作成しますね。