皆々様こんにちは。
『機動戦士ガンダム 水星の魔女(以下『水星の魔女』)』担当のgatoです。
前回はグエルとシャディクの対決、破壊される学園都市、そして暴走したノレアと5号の悲しい別れなど盛り沢山の内容でした。
もうクライマックスが近づいていることを感じさせましたね。
そして今回は悲劇の後で新たに事態が動き出すそうです。
夢の学園生活を失いつつある中、スレッタは何を決断したのか…じっくり振り返りましょう。
目次
嵐のあと
まずはミオリネや御三家の御曹司達の様子を振り返ってみましょう。
過ちと知って
クイン・ハーバーの一件後、宇宙に戻ったミオリネですが、アスティカシア学園までも破壊されたと知り、自責の念ですっかり落ち込んでいました。
街が燃え、人々が命を落とす様を見てかなり強いショックを受けていたようですね。
第8話の記事でミオリネが「戦争のリアリティ」を知らない点を指摘していましたが…クイン・ハーバーの一件は最悪な形で彼女を学ばせてしまったようです。
戦争のリアリティを知ったミオリネは人のタヒがトラウマになり、ひいては誰かを犠牲にする行為そのものを忌避するようになります。
これはすっかり彼女が臆病になってしまったともいえますが…前向きに捉えるなら、アーシアンとの和解しようとするなど、「犠牲を出さないやり方」へのこだわりをまだ持っているともいえるでしょう。
しかし、宇宙議会連合が強制介入を決定した状況で犠牲を全く出さずにベネリットグループを守るのは不可能。
うーん、この状況だと、ミオリネが「唯一犠牲にしてもいいもの」として自分自身を差し出す展開が待っている気がするんだよなぁ…。
ラウダも明確にミオリネを敵視するようになっちゃったし…。
確かにこの状況だと罪/呪い/責任を「誰かに背負わせる」という選択肢が重要になりますが、誰かに背負わせ続けた結果として作中の世界が生まれているともいえますからね。
本質にアプローチできているとはいえないんだよなぁ…。
ところで、サリウスから「デリングからもっと学ぶべきだった」と窘められたミオリネですが、冒頭で宇宙に戻った際、いの一番にデリングが寝ている病室のすぐ傍にいました。
これまでデリングに対して反抗的に振舞っていた(デリングが悪いとはいえ)ミオリネですが、この瞬間だけは、1人の娘としての「ミオリネ・レンブラン」になっていた気がします。
デリングから叱ってほしかったのか、慰めてほしかったのか、励ましてほしかったのか。
いずれにせよ、父親に甘えようとする娘らしさを、ミオリネが初めて見せた場面かもしれませんね。
支える者
前回、壮絶な戦いの末にシャディクを捉えたグエルですが、今回は自責の念に囚われるミオリネを支えながら、後処理をしている姿が描かれました。
個人的に前回の戦いでグエルはシャディクよりも未熟な一面があるところを指摘していましたが…逆に今回は彼が変わったことを感じましたね。
落ち込んでいるミオリネに対し、片膝をついて話しかける姿は第1話での傲慢振りからは想像もつきません。
第1話時点ではホルダーとして自分が得た勲章のようにしか扱っていなかったミオリネを、1人の人間として、思いやるべき仲間として見ていることが窺えます。
今でこそヴィムの後を継いでジェターク社のトップにいるグエルですが、一度何もかもを失ったからこそ、あの思いやりを身につけたのでしょうね。
しかし、後述するようにラウダがすっかり闇落ちしてしまったために、グエルの最悪な受難はこれからも続くことになりそうです。
思えば、グエル自身、父であるヴィムに認めてもらえなかったことに苦しんでいたり、彼が自分の行方を捜していたことを今わの際に知ったりするなど、悲しいすれ違いをした経験がありました。
皮肉にも、ヴィムがグエルとすれ違った理由は、彼がベネリットグループでの権力闘争を優先して行動していたからです。
そして、今は自身が知らぬ間に置いてけぼりにしていたラウダとすれ違っていく状況になっています。
それは、グエルがベネリットグループに戻り、ジェターク社の再建に着手してからでした。
自らの責務を全うする道を選んだ結果、家族とすれ違うという結果を招く…。
皮肉にも、グエルはヴィムと同じような運命も引き継いでしまったといえそうです。
貴公子は咎を負う
前回、激闘の末に捕らえられたシャディクですが、意外と涼やかな感じでしたね。
まぁ、捕まってしまった以上、もう観念したのでしょうけど、それでもサビーナ達を庇うなど仲間への配慮は忘れていませんでした。
そんなシャディクですが、自身の計画について語る際、「踏ん切りがついたのは…」といいかけてミオリネを見つめていました。
恐らくこれは第9話でのエピソードを指しているのでしょうね。
シャディクはミオリネに想いを寄せていましたが、ミオリネの気持ちをわかっているがゆえに、ヤマアラシであるがゆえに、ホルダーを巡る戦いには参加しませんでした。
そんなシャディクにとって、第9話の戦いはミオリネを手に入れる最後のチャンスだったのでしょう。
もしあの戦いに勝っていれば、シャディクは自分の計画にミオリネを巻き込まずに済んだ…あるいはミオリネと共に別のやり方を選んでいたのでしょうね。
しかしそれは叶わなかった…叶わなかったからこそ、シャディクは最悪な手段を選んだ。
シャディクの行いは許されるものではありませんが、アーシアンのためにやらなければならなかった。
それをわかっていたからこそ、そして自分もまた多くの人間を巻き込んだ自責の念があるからこそ、ミオリネはシャディクを責めなかったのでしょう。
いつかまた同じ場所で
無事に地球寮の面々と合流できたニカですが、今回は彼女とマルタンのやり取りも描かれていました。
通報したことに責任を感じているマルタンに対し、ニカは罪を償うために退学し、自分の力で学校に通うと宣言します。
そしてニカは地球と宇宙の架け橋になるという夢を諦めなかったのは、みんながいたから、そしてマルタンが気づかせてくれたからだと語りました。
個人的に、このロジックは結構好きでしたね。
確かにマルタンの行いにより、ニカは罰を受ける立場になり、学園を退学する道を選びます。
しかし、だからこそニカは罪を抱えて孤独になる道を選ばずに済んでいたわけです。
隠し続けるのではなく、隠さないからこそ、本当の意味で仲間達とわかり合える。
後半で描かれるスレッタの告白にも通ずるものが、ここにはあったような気がします。
また、シャディクに監禁されている間の5号とノレアのやり取りもニカに影響を与えていたのかもしれませんね。
5号のこれから
前回ノレアと悲しい別れを経験した5号。
ウルのコックピットが空だったため、そのまま逃走したかと思いきや…しれっと帰ってきていました。
本当にしれっと(笑)
前回の記事では闇落ちする可能性にも触れていましたが…こいつのメンタルをなめていた(笑)
しかし、彼の言動はこれまでとは違うものでした。
これまで篭絡しようとしたり、暴力をふるったことをスレッタに謝る姿はあまりに真摯過ぎて、「キャラが違う」と指摘されていました。
そして「行きたいところができた」というセリフ。
これは間違いなく命を落としたノレアが描いた風景画の景色を指しているのでしょう。
第18話の記事で指摘したように、5号は「生き残る」以外の目的を持たない、ある意味空っぽの存在でした。
これは、ある意味エラン・ケレス以外の生き方を5号があきらめていたことも意味しています。
しかし、ノレアとの出会いと別れをきっかけに、5号は初めて自分が行きたい場所に行くという目的を持ったわけです。
出番こそ少なかったですが、あのシーンは5号が改めて生きる覚悟を決めたことを如実に示していたといえるでしょう。
強制介入
前回の事件の影響により、ついに裏で暗躍していた宇宙議会連合が強制介入という直接行動に打って出ます。
ここでは後半のエピソードを中心に掘り下げてみましょう。
ペイル社の離反
まず驚かされたのはペイル社の離反でしょう。
前回のエピソードまでで発生した一連の事件に介入してこなかったペイル社ですが、ここに来たあっさりとベネリットグループを見限ったわけです。
恐らく狙いは強制介入後のグループの掌握といったところでしょうか。
シャディクという逆賊を生み出したグラスレー社はもちろん、世論の後押しを得てクワイエット・ゼロに加担したミオリネとグエルを同時に排除し、まんまと総裁の地位を手に入れようという魂胆なのでしょうね。
おまけに宇宙議会連合は裏でGUND技術を利用していたから、自分達がGUND技術を利用することにもお墨付きがもらえる…。
いやー確かにペイル社にとっては、この状況なら裏切りが一番でしょうね(笑)
ただ、そんな彼女達にとって5号が完全に自由になった状況が仇となりそうな気がします。
養父の覚悟
前回無事に救出されたサリウスですが、宇宙議会連合の強制介入に際してミオリネと連絡を取り、何と自分とグラスレー社に責任を全て押し付けて切り捨てるように申し出ます。
その際、ミオリネに「もっとデリングのやり方を学ぶべきだった」と告げている点が印象的でした。
第7話での記事でも触れましたが、サリウスはデリングを警戒しており、シャディクのプラント・クエタ襲撃も認めるなど、これまで彼と対立しているようなスタンスを取っていました。
そんなサリウスが娘であるミオリネを認め、さらにデリングのやり方に学ぶよう口にしているところを見ると、なんやかんやでデリングの辣腕をちゃんと認めていたようです。
やり方と考えが合わないだけで、サリウスにとってデリングは有能な総裁であったのでしょうね。
それに、宇宙議会連合が動くなり自分を切り捨てるように進言する姿は、仲間を庇って自分が責任を負おうとしたシャディクを彷彿とさせます。
サリウスにとってシャディクは養子であり、シャディクはサリウスに感謝しつつもやり方を非難していましたが、なんやかんやで親子らしさを感じさせる場面でしたね。
大人の流儀
ここでは今作の大人達の振る舞いに着目してみましょう。
今回のエピソードを見てみると、作中に出てくる大人は大体2種類に分けられます。
まずは今回のサリウスやデリングのように自ら罪/呪い/責任を引き受ける大人達。
彼らは一見すると冷徹に見えますが、その実大切な人や守るべきもののために、例えその身が滅びようとも自らに罪/呪い/責任を引き受ける傾向があります。
その意味では復讐に巻き込まないためにスレッタを突き放したプロスペラも同類といえる側面があるかもしれません。
そしてもう1つがベルメリアのように罪/呪い/責任を子ども達に背負わせてしまう大人達です。
グストンが「嫌なもんだな」といっていた大人達ですね。
中には手前勝手な理由で子ども達に残酷な運命を課す連中もいますが、切実な理由で背負わせざるを得ない者達もいます。
この点は同情できる余地がないわけではありませんが…もちろん正しい行為ではありません。
しかし、前者のように自ら罪/呪い/責任を背負ってくれる大人は、正しくありつつも、誰かを突き放してしまう側面があります。
その結果、デリングとミオリネのように深刻な仲違いを起こす可能性もあるわけです。
そう考えると、本当に正しいのは罪/呪い/責任を背負いつつも、然るべき相手に誠実な態度で託せる大人なんでしょうね。
現状、プロスペラの野望を阻止する使命を、間違っているとわかりながらもスレッタに託したグストンが、その大人に一番近いのかもしれません。
静寂に帰せ
今回はプロスペラとエリクトの手によってクワイエット・ゼロが初めて起動されましたが…想像以上でしたね。
なるほど、パーメットリンクを利用したあらゆる機器を掌握し、一方的に蹂躙していく様は…ニューゲン達がいったように確かに大量破壊兵器でした。
第16話の記事でクワイエット・ゼロについてあれこれ書きましたが…。
思ったよりシンプルなものでしたね。
暴力で「戦争のない世界に書き換える」…そんなの力で無理矢理現状変更しているだけだよ…。
プロスペラの目的についてこれまであれこれ考えてきましたが…笑顔で宇宙議会連合の艦隊を全滅させる様は、『ゆりかごの星』で書かれていた、エアリアルを「剣」としてしか見ていない復讐者そのものでした。
恩師であるカルドが嫌悪したGUND技術の兵器としての運用を平然とやっちゃっているわけですからね…。
うーん、これだけ見るとプロスペラがかつて信仰した理念を捨ててまで復讐に走っているというべきですが…。
第19話で量産型ガンダムを破壊した際に「理念を汚した」ことへの怒りを口にしていたところを見ると、プロスペラは完全に理念を捨てていないようにも感じるんですよね。
それに力による現状変更とはいえ、プロスペラの目的はあくまで「エリクトが幸せに生きられる世界」の構築ですし。
ここまでくると、プロスペラはエリクトの再生のみを優先していて、自分の生存までは考えていない(だから理念を捨てて罪を背負える)のではないかと感じたりします。
激高のラウダ
終盤ではこれまで懸念されていたラウダがついに闇落ちをしました。
それもガンダムシュヴァルゼッテの前で…。
せっかくペトラが危篤とはいえ生存したのに、これでラウダが敵対することが確定しましたね。
ところが、ラウダが標的にしていたのは意外や意外、父の命を奪ったグエルではなく、グエルが没落するきっかけを作ったスレッタでもなく、なんとミオリネでした。
ちょっと意外なうえに、若干逆恨み感もありますが…もうちょっとラウダに寄り添って考えてみましょう。
まず、ラウダにとって、いくらヴィムを標的にしたとはいえグエルを標的にすることは難しいでしょう。
再会するなり驚きと過労で卒倒するほど、ラウダはグエルに入れ込んでいますし、現状彼のサポートをすることに生き甲斐を感じている以上、それを自ら捨てることはしないと思われます。
ただ、グエルと違ってラウダはヴィムの代行として目立った活躍ができず、陰口を叩かれていたので、その劣等感が今回の闇落ちに絡んでいる節はありますが…。
スレッタに対してはシーズン1で散々敵視していましたが、18話の記事で触れたようにグエルに敗れたスレッタにしっかり嫌味をいいつつも、さほど敵視している様子は見せていませんでした。
ラウダにとってスレッタは既に負け犬で、脅威として思っていないのでしょう。
ではなぜミオリネか。
少なくとも、グエル復帰以降、ジェターク社を取り巻く状況はミオリネを中心にして回りつつあります。
また、ラウダはクワイエット・ゼロやGUND技術の真相を知らない立場であり、当然ながらプロスペラとも接点がほとんどありません。
そのため、彼からしたら宇宙議会連合が強制介入するような事態を引き起こした元凶はミオリネとしか思えないでしょう。
それにミオリネはスレッタという存在をベネリットグループの渦中に引き込んでいますから、ある意味ではグエルの没落に加担しているともいえます。
つまり、何も知らない立場からしたらミオリネはジェターク家を脅かし続ける存在と捉えられるわけです。
まぁ、確かに事情を知っている人間からしたら、ミオリネを怒りの矛先に向けるのはお門違いですが…。
事情も説明されないまま迎えによこされるなど、ずっと蚊帳の外にいたラウダにとって、ミオリネはあり得ない選択肢ではないのかもしれません。
君は変わった
ここでは今回のエピソードを通して、スレッタの変化を追ってみましょう。
いつかのトマト
前半ではスレッタが困窮する学生達のためにミオリネの温室で育てたトマトを配っていました。
個人的にトマトの分配をスレッタは「自己判断」で行っている点は、非常に興味深いものでした。
かつて第10話の記事でスレッタが「頼られることでしか愛情を確認できない」と指摘しましたが、恐らく当時のスレッタだとこのような行動はとれなかったでしょう。
誰かに頼られる形でしか愛情を確認できないことは、目に見えない相手の気持ちを慮れないことと同義です。
忠実にミオリネとの約束を果たすことにこだわり、プロスペラに盲目的に従う行為は、相手の気持ちがわからないからこそできる行為でもあるんですね。
しかし、今回のスレッタは「ミオリネならそれをしろという」と自己判断してトマトを配っていました。
ここには、スレッタがミオリネの気持ちを慮って行動していることが窺えます。
そもそもスレッタがこのような行動がとれるようになったのは、やはり第19話の記事でも触れたエリクトの言葉が大きかったのでしょう。
エリクトは一番いいやり方でないとわかっていても、スレッタを巻き込まないために彼女を突き放した。
かつて自分との婚約に縛られてほしくないと考えたときのミオリネの対応を、スレッタは理解できませんでした。
しかし地球寮の面々との関わりを通じて、エリクトの真意を理解できた。
だからこそ、スレッタはミオリネの気持ちを慮り、そのうえで彼女とどう向き合うかを考えられるようになったわけです。
また、個人的にミオリネの温室が破壊されたことをスレッタがさほど気にしていないところも印象的でしたね。
今回のエピソードにおいて、スレッタがミオリネの温室を復旧させようという行動は見られませんでした。
それだけスレッタが学園の状況に、困窮した学生達に目を向けていることが窺えます。
これまで、スレッタはミオリネやプロスペラ、4号といった、自分にとって大切な人との間にだけで構築される「セカイ」に執着している傾向がありました。
だからこそプロスペラの命令なら学園生活を捨てられたし、ミオリネのためならためらいなく人の命を奪えた。
しかし、今のスレッタはさまざまな出会いを体験し、物事の複雑さを学び、人の命を奪う意味や、自分が背負わされている呪いを知りました。
そして危機に陥ったミオリネを見て「世界」と向き合う覚悟を決めた。
だからこそ、今回のスレッタは何よりも困窮した学生達のためにブランケットやトマトを配ることができたのではないでしょうか。
みんなだから知ってほしい
ベルメリアとグストンからプロスペラを止めてほしいと頼まれたスレッタは、そこで初めて自分のことを全て仲間達に話しました。
個人的に、この場面は3つの点で印象的でした。
1つ目は、初めて自分のことを語る場にミオリネがいなかったことです。
さきほども触れたように、スレッタは大切な人に依存する傾向が強かったですが、もしその状態のままだったら、地球寮の面々や初めて対面するグストンに自分について語ろうとはしなかったでしょう。
もちろんスレッタは人間不信ではありませんが、ミオリネやプロスペラに何もかもを委ねちゃうような性格の人間に、自己開示なんて簡単にはできません。
それに、そもそもこの告白を行うことを、話の流れとはいえスレッタは自分で決断しました。
これは、それだけスレッタが周囲の人間に信頼を寄せていると同時に、自分の判断で物事を決めることができるようになったことを示唆しているといえそうですね。
そして2つ目は、スレッタが泣かなかったことです。
今回、スレッタはプロスペラにとって自分よりエリクトが大事であることを告白し、エラン・ケレスは既に彼女が知っている人物ではないことを知りました。
しかしスレッタは一切動じておらず、とりわけ前者について語る際は悲しげながらも笑顔を見せています。
この時点で、スレッタは一度プロスペラやエリクトに突き放された過去を乗り越えたこと、そしてそのうえでさまざまな現実を受け入れていく覚悟を決めたことがわかります。
ここにもスレッタの成長が垣間見えます。
そして3つ目が呪いを引き受ける覚悟を決めたことです。
また、ベルメリアからエリクトがデータストームの負担(呪い)を肩代わりしていたことを知った際、スレッタはデータストームの負担を引き受けることを理解したうえで、エリクトやプロスペラに会うためにキャリバーンへの搭乗を決めました。
自分の代わりに呪いを負ってくれた存在がいる、そして同じように呪いを負って犠牲になっていく者達がいる。
スレッタの決断はエリクトやプロスペラだけでなく、4号やソフィ、そしてミオリネとの出会いがあったらこそでしょう。
さきほども触れたように、自発的に大切な人の想いに触れるようになったからこそ、スレッタはこの決断ができるようになったわけです。
ところで、先述しましたが、ミオリネはクイン・ハーバーでの出来事で誰かを犠牲にすることを極端に恐れるようになりました。
それとは対照的に、今回スレッタは自身が犠牲を引き受ける覚悟を示しています。
この点が対比となっていて面白いですね。
ただ、スレッタの場合は事態を収拾するために犠牲になるというスケープゴート的なものではなく、「誰かと向き合うために必要な通過儀礼」として犠牲を引き受けるというものです。
このような彼女のスタンスは、今作のテーマの1つを体現しているといえるかもしれません。
今、できること
最後に、今回のスレッタについて総括しましょう。
改めてエリクト(エアリアル)やプロスペラと向き合うために、スレッタはデータストームの負担を引き受けることを覚悟したキャリバーンに乗る覚悟を決めました。
これにより、『ガンダム』シリーズで恐らく初めての「主人公機がラスボスになる」構図が出来上がったわけですが…。
ただ、個人的にはそれよりも、スレッタの「何も手に入らなくてもできることをすればいいんだ」というセリフが印象的でした。
第12話の記事のように、これまで僕は進む/逃げるを主軸に置いて考えてきましたが…、このロジックがあったのか…。
そもそもプロスペラがスレッタに与えた「逃げれば1つ、進めば2つ」は、何かが「手に入る」ことを前提しているものです。
つまりこの教えは自発的に獲得する意義を説いたものであり、進まないと「手に入らないものがある」ことを示唆しています。
しかし今回スレッタが口にしたのは「手に入らなくてもできることをする」というものでした。
これは獲得を前提としておらず、「できることをする」という行為自体を重視しているスタンスであることがわかります。
そもそもスレッタがこのセリフを発したのは、「エリクトやプロスペラともう一度話したい」という目的を語っていたタイミングでした。
既に自分に価値を見出していないプロスペラに相手されないリスクがある以上、スレッタが進んだところで2つどころか何1つ得られない可能性があるわけです。
そして、スレッタはそれでもできることをする=エリクトやプロスペラの元へ「進む」決意をしました。
ここでいう「進む」は何かを得るためのものではありません。
もちろんこれまでのスレッタは何かを得るために進んでいたわけではありませんが、シーズン2では自分の行いを正当化するために得るものを確かめるようになっていました。
しかし重要なのは進んだことで何を得たかを確かめることではありません。
自分の想いに正直でいられるか、自分の行いの結果を受け入れられるか、そして受け入れたうえで進めるか。
クイン・ハーバーでの事件をきっかけに、自分の罪の重さに耐えかねて前に進めなくなったミオリネとは対照的に、スレッタはあらゆるリスクを飲み込んだうえでそれでも自分の想いのままに進めるようになっています。
そう考えると、かつて子どものように誰かに依存していたスレッタが、ミオリネより成長していることを示しているのかもしれません。
『水星の魔女』第21話感想
例に漏れず長くなりましたね…今回は短くなるかなと思っていたのに(笑)
いやー、個人的にスレッタへの印象が大きく変わったエピソードでした。
健気ながらも、彼女の芯の強さを感じられましたね。
他方でミオリネはかなりヤバい状況に…。
まぁスレッタが目の前でトマト事件を起こしたときにもかなり動揺していましたし、人のタヒにはまだ耐性がないから無理はありません。
それにしても状況がどんどん悪化している中で、どうやって収拾をつけるんだろうか…。
残り2~3話くらいでどう終わらせるかも見ものですね(笑)
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コメント
やっと追い付いた!
この手のアニメは視聴しただけだと自分の頭が悪くて全く理解できないです笑
キャラの目線だったりどういう構造で話が進んでるかなど、ここまで解説してくださっているのは助かります。ありがとうございます。
このサイトの記事を読む前は正直適当に流し見してましたが、21話から感情がぐっと入るようになりました!
過去話の記事で他のガンダムシリーズに例えるのは分かりますが、別のアニメに例える箇所はポカーンって感じでした笑
今回の記事にはなかったので読みやすかったです。
たつじさんコメントありがとうございます!
>この手のアニメは視聴しただけだと自分の頭が悪くて全く理解できないです笑
『水星の魔女』はさりげない描写が多いので、うっかり見落としてしまうことがありますよね…。
正直僕もこの記事を書くために2~3回繰り返し視聴していますが、そこでやっと気づく描写もあったりします(笑)
>キャラの目線だったりどういう構造で話が進んでるかなど、ここまで解説してくださっているのは助かります。ありがとうございます。
もったいないお言葉…こちらこそありがとうございます!
>このサイトの記事を読む前は正直適当に流し見してましたが、21話から感情がぐっと入るようになりました!
ここまでおっしゃっていただけると励みになります…。
>過去話の記事で他のガンダムシリーズに例えるのは分かりますが、別のアニメに例える箇所はポカーンって感じでした笑
ちょいちょい余談的な感じで別のアニメを引用するのは癖みたいなもので…読みづらくさせていたら申し訳ありません。。。
まぁ同じようなモチーフを使っているアニメを引用して見えてくることもありますので、ついやっちゃうんですよね(笑)
とりわけ設定に絡むところは、どういう意図でその設定を使っているかを考えるうえで便利でして…。
アニメを知らない方からしたら「?」って感じるかと思いますが、色々比較してみると意外と面白いですよ(笑)