皆々様こんにちは。
『機動戦士ガンダム 水星の魔女(以下『水星の魔女』)』担当のgatoです。
前回はミオリネ達が主力事業を決めていく過程が描かれました。
その結果、彼女達はガンダムにまつわるGUND技術を医療技術として活用する術を模索する道を選びます。
そんな中、度々ミオリネに接触していたシャディクがエアリアル強奪のために動き出し…。
複雑な人間模様がさらに進展する第9話、じっくり振り返りましょう。
目次
集団決闘
今回はシャディクを中心としたグラスレー寮と株式会社ガンダムの面々が集団で決闘しました。
久しぶりに激しいMS戦が展開されましたが、気になった描写を拾ってみましょう。
チーム・シャディク
前回の終盤から登場したサビーナ達ですが、一見するとシャディクのハーレムにしか見えないですよね(笑)
まぁシャディクはグエルから「決闘に女を賭ける」とバラされているので、ある程度女遊びが派手なことは予見されていましたが…。
ただ、サビーナ達のシャディクへの接し方は彼のことが好きな女性のそれにはあまり見えなかったですね。
男をキープしまくっているレネは言わずもがな、エナオ達はシャディクのミオリネへの接し方について冷静に語り合っています。
シャディク自身も彼女達といちゃつくような描写はないですし、グエルのように取り巻きとして連れ歩いているわけでもありません。
そう考えると、彼女達はシャディクがお気に入りとして侍らせているというより、単純に能力を評価して取り入れているメンバーなだけかもしれませんね。
まぁミオリネ自身、シャディクは「誰も信用していない」と指摘していますし、シャディクは単純に惚れた腫れたで人間関係を構築したりしないんでしょうね。
ただ、シャディクのミオリネへの感情を知っているようですし、それなりの信頼関係は築いているようです。
というか、見間違えじゃなければ、サビーナが戦闘中にエアリアルを抑え込んだイリーシャごと撃とうとしていたような…。
下手したら大惨事になる戦い方ですけど、少なくともそれを恨み言なしでやってのけるだけの関係性なんでしょうね。
そう考えると、サビーナ達は結構ドライな一面があるんだな…。
アンチドートとグラスレー社
今回はシャディク達が対GUNDフォーマット用のアンチドートを使用している場面がありました。
形はだいぶ変わっていますが、原理としては『PROLOGUE』でケナンジ・アベリーが使用したものに近い兵器でしょう。
シャディク達がアンチドートを使用したことに対して、オリジナルは「まだ持ってたんだ」と言っていましたが、確かにガンダムが歴史の表舞台から消えて20年以上経過しているのに、まだ現役で使える状態のものがあることは意外な印象があります。
ただ、グラスレー社がアンチドートを有していることは、ガンダム否定派であるサリウスの意向が関係しているのでしょう。
つまり、いつガンダムが蘇ってきてもいいように対ガンダム兵器をしっかり温存していたわけですね。
ガンダムに対するサリウスの用心深さと警戒心を感じさせますね。
オーバーライド
集団決闘の終盤で、スレッタは再びエアリアルの真の力を発揮させていました。
現象としては第6話の記事でも触れたものと酷似していましたが、ちょっと感じが違っていましたね。
4号との戦いで出てきた子どもと思しき幻影は現れず、普段は赤く発光している部分が青く発光していました。
後者は、現象としては『PROLOGUE』でエリクトに流入していたパーメットが青く発光していた現象に近い印象があります。
また、今回は第6話と違ってGUNDフォーマットを使用したMSがエアリアルしかないため、相互干渉とは違う原理で発動していることがわかります。
あの現象の原理自体は不明ですが、今回はスレッタがエアリアルに呼びかけるような形で現象が発生しているため、ある程度意図的に発動できる状態変化であることが窺えます。
シリーズで引き合いに出すなら、『OO』のトランザムモードに近い感じでしょうか。
ただ、スレッタがエアリアルと対話するようなやり取りが増えたり、エアリアル自身が敵の位置を探知しているような描写があったため、推進力や機動性の強化というよりも、パイロットとMSのシンクロ率を極限まで引き上げるようなもののようですね。
他方で、驚くべきはエアリアルの覚醒がアンチドートを受けた後でも発生していた点です。
『PROLOGUE』でアンチドートを受けた際、ウェンディの機体はダウンし、短時間では復旧しませんでしたが、今回はアンチドートを受けてガンビットが全て無力化されていたにも関わらず、機体を瞬時に復旧させていました。
つまりスレッタとエアリアルの覚醒は現時点でグラスレー社が想定しているGUNDフォーマットのスペックを凌駕している可能性が高いことがわかります。
うーん、エアリアルの底知れなさがまた深まった印象ですね…。
まぁでも相変わらずスレッタがガンビットを「みんな」と呼びかけているところを見ると、エアリアルに「何か」が組み込まれている場合、それは複数形である可能性は高そうです。
ところで、エアリアルが覚醒した際、試合をモニターしていたプロスペラが一瞬涙を零すような描写がありましたね。
まぁ手塩にかけた「娘達」が新たなステージに上ったことを喜んだ涙なのでしょうけど、もしかしたら21年前のヴァナディース機関壊滅を思い返していたのかもしれません。
かつて対抗手段がアンチドートにエアリアルが…ガンダムが勝利した。
あの時の敗北を覆すピースが揃いつつあることこそが、プロスペラにとっての最大の喜びなのかもしれませんね。
父に抗えず
凋落著しいグエルですが、今回は父の意向を無視できない惚れたスレッタの助けになってやれず、さらにヴィムから退学を突き付けられるなど、より酷い状況に追いやられていました。
退学して子会社に赴任する…この時点でヴィムからは後継者からも、そしてパイロットとしても完全に見捨てられたことがわかります。
ここまで来たら自棄になって株式会社ガンダムに入っちゃいないよと思いますが、それができないのはスレッタが指摘したようにグエルがヴィムを完全に突き放せないことが原因でしょう。
正直ヴィムはいささか問題のある父親ではありますが、グエルからしたら父の言いつけを破って戦っても結果を出せず、その期待に応えられなかったことは何よりもショックなことなのでしょう。
いじめられてもやり返さず、現状を甘んじて受け入れているのは、彼なりの反省と自制の表れなんでしょうね。
そしてそんな親思いなグエルだからこそ、同じように親を大切にし、親への愛情に共感してくれるスレッタに惹かれるものがあるのかもしれません(これと対照的な理由でシャディクはミオリネに惹かれているのかもしれませんね)。
水星女は許さない
窮地に追いやられているグエルに対し、実質的なジェターク家の後継者となったラウダですが、彼は彼で…ちょっと鬱屈がたまっているようですね。
とりわけスレッタがシャディク達に追いつめられている場面で喜んでいる様といったら…。
普段クールなラウダですけど、腹の底ではスレッタを激しく嫌悪していることがわかります。
ラウダは元々グエルを兄として好いていましたし、彼の凋落の原因となったスレッタのことは嫌っていてもおかしくない(笑)
まぁグエルへの愛情の裏返しとして、ああいう形で感情が発露したんでしょうね。
大人達の眼差し
集団決闘への準備の過程で、相変わらずリソースのなさを露呈する株式会社ガンダムですが、今回は意外にもベルメリアが力を貸していましたね。
ベルメリアは株式会社ガンダムの設立をどこか喜んでいるような節がありましたが、今回のサポートはベルメリアなりに株式会社ガンダムを応援したい表れなのでしょう。
この点は傍観に徹していたプロスペラとは対照的になっている気がします。
ただ、4号がスレッタに負けた件を踏まえると、ベルメリアの状況って必ずしも安泰ってわけじゃないんですよね…。
第7話ではスレッタやミオリネに称賛を贈るような振る舞いをしていたオリジナルも、決して100%味方って感じでもないし…。
そもそもベルメリアは4号の廃棄にも反対していましたからね。
この先彼女がペイル社と対立する可能性も否定できないところです。
キミに踏み出せたなら
さて、ここからは前回からエピソードの中心となっているシャディクについてまとめてみましょう。
幼馴染をやめるには
個人的にシャディクはいろいろ企んでいるキャラクターという印象があったので、彼の言動は逐一拾っていました。
前回の記事でも、彼がベネリットグループを何らかの形で変えようとしている予感を書いていましたが…。
もう、何もかも野暮でしたね(笑)
シャディクについては、あーだこーだと考える必要はなかったです。
だって、少なくとも第7話以降の彼はミオリネのことしか考えていなかったわけですからね。
とりわけスレッタに止めを刺そうとする場面で「ミオリネの隣に立つのは俺だ」と叫ぶ場面では、もう馬鹿正直に本心を曝け出していましたし(笑)
彼がグエルを引きこもうとしたり、株式会社ガンダムを手に入れようとしたりしたのは、何もかもミオリネのためでしょう。
有能かつグラスレー社の豊富なリソース・人脈を持つ自分なら、少なくともエアリアルしか取り柄のないスレッタやリソースも何もない地球寮の面々よりミオリネをサポートできる。
少なくともベネリットグループを全面的に敵に回すやり方を取る必要はない。
もしかしたらグエルを引きこもうとしているのも、ベネリットグループに変革をもたらそうとしているのも、全部ミオリネのためなのかもしれませんね。
ただ、前回の記事でも指摘したように、ミオリネはベネリットグループそのものから自立したいと考えていますが、シャディクはあくまでベネリットグループの勢力図を動かすことでミオリネを守ろうとしていました。
ミオリネが自立を目指す以上、シャディクのやり方はどうしても彼女と相容れないものになってしまうわけです。
また、ミオリネの立場を尊重しているように見せて、その実彼女を自分の手の内に囲ってしまうシャディクのやり方は、どことなくデリングのやり口に近いものがあります。
そう考えると…娘にガンダムを託すだけの度量を持っているにも関わらず、彼女が「子ども」と見るや突き放し続けたデリングは、ミオリネを守るべきものを見なして彼女の自立を許せなかったシャディクに近しいものを感じますね。
ヤマアラシは寄り添わない
それでは最後にシャディクは「何がいけなかったのか」について掘り下げてみましょう(彼には悪いけど笑)。
さきほども触れましたが、シャディクの最大の失敗はミオリネのためとはいえ彼女の自立を妨げるようなやり方しかできなかったこと…ミオリネの言葉を借りるなら、「誰も信用していなかった」ことでしょう。
今回のエピソードでは愚直に花嫁を信じるスレッタとシャディクを対比させていますが、実際シャディクは愛するミオリネのことすら信じていないことがわかります。
ただ、難しいのが信用することと愛することは(少なくともシャディクにとっては)似て非なるものです。
シャディクのここまで徹底したシビアさは孤児出身である彼の半生が大きく影響していそうですが、少なくともベネリットグループや世界の趨勢を見極めて身の振り方を選ばなければならない状況だったのでしょう。
それ故に、嫌でもグループ全体に去就が注目されるミオリネが何も考えず行動することは我慢できない。
ミオリネが心配だからこそ、彼女が最善の道を選べるようにあらゆるリスクを排除したいと感じてしまう。
その結果、ミオリネ自身の選択でさえも信頼できなくなってしまう…。
良くも悪くもいろんなものが見えすぎるからこそ、何よりも愛しているからこそ、シャディクはミオリネを信頼できないんでしょうね。
ただ、個人的にはシャディクはそれよりも非常に致命的なミスをしているように感じられました。
そもそもシャディクはホルダーに興味がないと明言しており、ミオリネを巡る決闘には一切参加していません。
ここには彼女を会社の付属品として扱わない、シャディクなりの真心の表れでしょう。
一方で前回のグエルとのやり取りで当時ホルダーだったグエルとの決闘を避けているうえで、グエルに「お前になら任せられると思ったからだよ」と告げています。
前回の記事ではあまり触れませんでしたが、今回のエピソードを踏まえると、実はシャディクはホルダーを諦めると同時にミオリネをグエルに託そうとすら考えていた可能性が浮上します。
そう考えると、シャディクは結構悲しい決断をしていることがわかります。
シャディクはミオリネのために好意を抱いている彼女がグエルの花嫁になることを黙認していた…いうなれば、自分より相応しい人物にミオリネを託したというわけです。
愛しているが故に、花婿の座を捨てる…。
いやぁ~シャディク、その決断は切なすぎるよ…。
気持ちはわかりますけどね…ホルダーになってミオリネを奪うことは彼女の本意に反するし、下手したら余計に彼女から嫌われる。
かといって彼女を地球へ連れ出すなんてただの現実逃避であり、なんの意味もない。
でも、やっぱりシャディクのこのやり方は完全に間違っています。
確かにシャディクの判断はミオリネが望まない扱い方を避けられますし、グループの人間を警戒するミオリネとの関係も継続できる。
ただ、それだけなんです。
ミオリネの望まない状況は絶対に代わらないし、結局彼女を苦しめるグループの呪縛は継続する。
当時イケイケだったグエルが花婿になっても、それは同じでしょう(それでもグエルに託したのは彼が愚直な人間だったからでしょう)。
シャディクが本当にすべきことは、花婿候補から身を引くことではありません。
ベネリットグループ全体を敵に回してでも、ミオリネを信じて背負い続けるべきだったんです。
無自覚にそれをやってのけているスレッタのように。
実際、ミオリネはシャディクが「ホルダーとなってミオリネを守ったら何かかわったのか」と聞いたとき、決してそれを否定しませんでした。
ミオリネもミオリネでシャディクを受け入れる可能性はあったのでしょう。
でも、実際シャディクは何もしなかった。
いえ、むしろ何もしないと理解していたからこそ、ミオリネは決してシャディクに頼らなかったかもしれません。
もしシャディクがグエルに託さず、自分の手でミオリネを守ると決めていたら…スレッタの立場にはシャディクが立っていたのかもしれませんね。
ところで、エナオはシャディクがミオリネの前だと「ヤマアラシ」になると評していました。
ここでいうヤマアラシとは、「傷つけたくない・傷つきたくないために距離を取ってしまう」ことのメタとして使われるものです(『エヴァンゲリオン』での引用が有名ですね)
シャディクはミオリネの本意に反してたくないために、そして彼女を傷つけたくないためにホルダーを巡る戦いに参加しないという道を選びました。
シャディクの選択は確かにヤマアラシ的ですね。
他方で、そんな彼を見ていると…彼が最も信じていなかったのは自分自身だった…そんな気がします。
『水星の魔女』第9話感想
久しぶりにがっつりMS戦をやりつつ、シャディクを丁寧に描写していた第9話でした。
いやーシャディク…切ない奴だな…。
歳不相応に大人過ぎたことが…彼のダメだったところでしょうね。
というか、地味にシャディクはスレッタハーレムには加わっていないですね。
それだけミオリネ一筋だったってことかな…(笑)
さて、これで御三家を巡る戦いはひとまず決着がつきましたが、次回からどうなるんだろうか…。
要注目ですね。
▼水星の魔女の全記事はこちらにまとめてあります!
▼当サイトでは他にも多数のアニメを考察しています!
最新情報をお届けします
Twitter で2017春夏秋冬アニメ考察・解説ブログをフォローしよう!
Follow @anideep11
コメント
サビーナがイリーシャごと撃ち抜こうとした場面、あれエアリアルが守らなければコクピット撃ち抜いてるような角度ですよね。
イリーシャもそうしろと言わんばかりの組みつき方でしたし。
前回、「私たちは覚悟を決めてる」と言ってましたが、決め過ぎだと思います。
彼女たちとシャディクの間に恋愛感情はないけど、家族同然かそれ以上のものがありそう。
全員孤児上がりとかだったりするのかもですが。
コメントありがとうございます!
>前回、「私たちは覚悟を決めてる」と言ってましたが、決め過ぎだと思います。
言い方は悪いですけど、決闘は学校の実践演習の延長線上にあるものだと思いますし、そこまで命を賭けるほどなのか?と感じる部分は正直ありますね。
>彼女たちとシャディクの間に恋愛感情はないけど、家族同然かそれ以上のものがありそう。
>全員孤児上がりとかだったりするのかもですが。
あーその可能性は高そうですね。
ベネリットグループは企業とはいえ血族を重視する風潮が強いですし、血統がない孤児上がりはそれなりに命を賭ける気概がないと出世できない風潮があるのかもしれません。
それに全員孤児上がりだからこそ、あの独特な人間関係が築けている可能性も高そうですね。