皆々様こんにちは。
『機動戦士ガンダム 水星の魔女(以下『水星の魔女』)』担当のgatoです。
前回からデリングやサリウスの不在を巡り、総裁選の幕が開けました。
グエルやミオリネがアスティカシア高等学園に帰還したことで、また一波乱ありそうな気配…。
エアリアルの奪取に失敗したエランや、プロスペラに追いつめられたベルメリアの動向も気がかりです。
さてはてどんな展開が起こったのか、じっくり振り返ってみましょう。
目次
御曹司達の戦い
ベネリットグループが総裁選で揺れ動く中、御三家の御曹司達に新たな動きがみられました。
暗躍
総裁選の座を狙うシャディクは早速ペイル社のニューゲン達に接触。
ガンダムを新規基幹事業にすることを条件に彼女達を味方につけます。
元々GUND技術を密かに取り込もうとしていたペイル社を味方につけることは理解できますが…。
ガンダムやガンダムの販売プランの決定権を彼女達に与えてしまうのは、ちょっと大胆過ぎる気がしますね。
第15話の記事で掘り下げましたが、シャディクの目的はベネリットグループの資産を地球に売却し、抑止力を生み出すことでした。
それこそガンダムは最大の抑止力として目玉商品になるだろうから、普通はGUND技術を独占してしまおうと考えるものですけどね。
となると、シャディクの計画においてガンダムはあくまで取引材料の一つに過ぎず、それより有効な切り札を持っていると捉えるべきでしょうか…。
シャディクの手の内が全然読めないんだよなぁ(笑)
窮鼠
エアリアルの拒絶され、奪取に失敗した5号ですが、ついにエアリアルを渡すようにスレッタに直接迫り、挙句にスタンガンを出して脅迫するなど、とうとう暴走し始めました。
そもそも14話の記事でも書いたように、5号は自身が生き残ることに固執している人物でした。
グエルに指摘されたように、度重なる失態で自身の命を失うことに怯えていたからこそ、あれだけの醜態を晒したのでしょう。
そんな5号ですが、なんとサリウス誘拐を目撃していたことから、あっさりシャディクに保護される道を選びます。
ホントこいつ節操ないな…(笑)
ただ、彼がシャディク側についたことで、5号・ニカ・ノレアという面白い面子が揃いましたね。
いずれも孤児であり、何らかの事情で真っ当な生活ができなくなった経験を持っているという共通点を持っています。
ちゃくちゃくとシャディク側の勢力に「みなしご」達が集まっている印象です。
おまけに5号は今後の展開に影響し得る不穏な発言をばらまいています。
4号の末路を知らないスレッタの前で「エラン・ケレスなんていない」と言ったり、ニカの前で「ガンダムでタヒぬ」と言ったり…だんだん5号がトラブルメーカーになりつつあるな(笑)
正直、今回の結末を考えるとスレッタに4号の末路を知られることは…かなりショックを与えることになりそうですね。
ただ、ニカがガンダムの真実を知るのはどういう展開になるのだろうか…。
ニカがノレアを助ける展開になったりするのかな?
告白
今回のエピソードにおけるもう1人の主役といっても過言ではないグエルですが…前半ではなんとスレッタに告白をぶちかましました。
真正面から想いを伝える男らしさにキュンとした方も多いのではないでしょうか。
グエルについては後半の決闘についても後述しますが、ここでは彼のスレッタへの好意について掘り下げてみましょう。
グエルは初登場時の印象こそ悪かったものの、スレッタに好意を持ってからはその想いをストレートに貫いています。
思えば作中のキャラクターはいずれも愛情に不器用であり、わかりづらい態度を取りがちですが、グエルは良くも悪くも単純に、実直にスレッタへの想いを貫き、彼女のために動いていました。
スレッタを泣かせた4号と戦ったり、ミオリネの提案に乗って今回の決闘を行ったのは、その典型例といえますね。
12話の記事でスレッタへの想いを貫くためにグエルが闇落ちするのではないかと危惧していましたが…。
それはもう杞憂といっていいでしょう。
むしろ、屈折も屈託もなくここまで愚直に想いを貫けるところがグエルの真価といえるのではないでしょうか。
思えば、シャディクはかつてミオリネをグエルに託そうとしていました。
シャディクはシャディクでミオリネに想いを寄せていましたが、グエルの本質を理解していたからこそ彼にミオリネを託そうとしたのかもしれませんね。
また、グエルの告白はスレッタにとってもよい意味を持っているように感じます。
前回、プロスペラの命令なら自分の夢すら捨てると豪語したスレッタですが、彼女の持っているものは確かに母親から与えられたものばかりでした。
学校生活、エアリアル、あるいはミオリネ(彼女との婚約もプロスペラの策略通りという意味において)。
しかし、グエルとの関係は、彼から寄せられた想いは間違いなくスレッタ自身が手に入れたものです。
加えてその想いをどう受け止めるかも、スレッタは自分自身で決めています。
ここまでプロスペラに洗脳された操り人形のような一面が強調されているスレッタですが、グエルとの関係にプロスペラの意向は全く関係ありません。
シーズン1での4号や地球寮の面々との関係についても同じことがいえるでしょう。
この先、恐らくスレッタはプロスペラやミオリネから突き放されることで、深刻なアイデンティティに陥ると思われます。
しかし、グエルや4号の存在は彼女自身がその手で手に入れたものが間違いなくあると証明するものとなるでしょう。
だって、グエルの告白を断ったのはまぎれもなくスレッタ自身の言葉であり…ミオリネという大切なものを選んだのは間違いなくスレッタ自身の意思なのですから。
そして、自分の意志で手に入れると決めた時…本当の意味でスレッタはミオリネやプロスペラと向き合えるのでしょうね。
最後の決闘
プロスペラの支配からスレッタを逃すためにミオリネが案じた一計は、グエルに決闘で勝利させてエアリアルを、そして自分自身を取り上げさせるというものでした。
この決闘がどんな意味合いを持っていたのか、ゆっくり振り返ってみましょう。
負け獅子の遠吠え
髪型を一新し、気合を入れて決闘に臨んだグエル…ですが、序盤はヴィムやシーシアのトラウマに苛まれていました。
まぁ初めて経験した戦場で実父を手にかけ、子どもが目の前で事切れるのを見ているわけですからね。
事実、トラウマのせいでまともに戦えなかったグエルですが、彼が立ち直ったきっかけはラウダやペトラを初めとするジェターク寮の声援でした。
かつて第3話の記事でグエルにとって「連携力」が重要になると書きましたが…運よく重なってくれましたね。
グエルはホルダーになるなり傲慢になっていましたが、それは彼が父への反抗心もあって自分自身の力にこだわっていたことの裏返しでしょう。
他方で、元々グエルは父親を慕っており、ラウダやフェルシー達も大切にしていました。
大切な存在だからこそ、自分を認めてくれないことが嫌で、反抗してしまう。
まぁ典型的な思春期なわけですが(笑)
そんなグエルにとって、スレッタとの出会いや自分の帰還に喜んでくれたラウダ達の存在は重大な転換点を迎えるきっかけになりました。
背を向けて自分の力を誇示するのではなく、逃げずに正面から対峙する。
徹底的に向き合わなければ、本当の自分を誰も認めてくれない。
かつて全力を尽くして戦ったスレッタから認められたときのように。
今回の決闘で、グエルはかつてヴィムにAIを仕掛けられたダリルバルデに搭乗していました。
自分の弱さを認め、あえてAIをそのままにした結果、そのAIはトラウマに苦しむグエルをサポートしました。
グエルはジェターク寮の仲間達だけでなくヴィムにも支えられていたということを、さりげなく暗示しているようでしたね。
今回の決闘でグエルはどうにかトラウマを乗り越えましたが、彼は「逃げれば1つ、進めば2つ」を本当の意味で体現していたように感じました。
逃げるな、進め
グエルを語るなら、やはり彼を支えていたラウダ達に触れないわけにはいかないでしょう。
前回、どこか不穏な雰囲気を漂わせていたフェルシーでしたが、無理にMSに乗って出撃することはありませんでした。
そこはちょっと安心(笑)
グエルを見るなり喜びのあまり卒倒したラウダも無事に復帰し、なんとペトラと付き合っていることが発覚していました。
そしてみんなが信じて応援したグエルが無事に勝利し、大団円…でしたが、ヴィムの最期って、やっぱり彼らが知っているようには思えない気がする…。
うーん、作劇的にスルーする可能性もゼロではないんですが、グエルがトラウマを抱えていることをラウダ達が気づいていない感じもするんだよな…。
正直、今回はジェターク社再興の希望が見えるエピソードだったので、真相を明らかにしてご破算にしてほしくはないですが…。
後、決闘を見るアスティカシア高等学園の様子も大分変わりましたね。
まぁちょっと前にエグい実戦が行われた場所でMS同士の決闘が盛り上がるのは難しいでしょうけど(実際目を背けている生徒もいました)。
ただ、個人的に今回の決闘ってちょっと面白い意味合いも感じるんですよね。
これまでの決闘はデリングがミオリネを守れる者を探すために仕向けているうえに、ベネリットグループの思惑も絡むなど、大人達の策謀が交差するものでした。
しかし、今回はプロスペラのサポートこそあったものの、決闘はミオリネとグエルが主体となって行われています。
少し洒落た言い方をするなら、子ども達による子ども達のための戦いになっているんですよね。
同時に、今回の決闘はミオリネ達があれだけ悲惨な実戦を経験しても、なおも逃げずに戦いに向き合うことを象徴しているようにも感じられました。
つまり、逃げずに進むことを選んだ者達が…あそこに集っていたといえるのではないでしょうか。
私とエアリアル
今回の決闘の、ある意味黒幕ともいえるミオリネ。
スレッタのためとはいえ、エアリアルを取り上げ、グエルに自身と婚約させるなど、なかなか強引な手段を使っていましたね。
そして相変わらずの説明なし。
…はい、このやり方、我々はよく知っていますね。
第11話の記事でも触れましたが…つくづくスレッタのやり方って、まんまデリングなんですよね。
愛しているから遠ざけ、愛しているから説明しない。
しかし、今回ばかりはミオリネのやり方が間違っているともいいきれません。
ミオリネの前で何の臆面もなくプロスペラへの依存を明らかにする彼女に、正攻法では通じないでしょう。
だからこそ突き放さなくてはならない。
例え本人が悲嘆に暮れても、絶望したとしても、徹底的にやらなければならない。
まさにミオリネがデリングに倣って、スレッタに向き合おうとしていることがわかります。
ところで、ミオリネがグエルにのみスレッタへの本心を明かしていましたが、その時のやり取りも印象的でしたね。
それは「ガンダムとか何にも縛られない自由な世界で幸せになってほしい」というもの。
しかし、そんなミオリネの想いをグエルはさりげなく「そんな世界はないよ」と否定します。
地球で戦場を体験したグエルだからこそいえるセリフですが、このやり取りは今後につながりそうなものだと感じました。
本当に自由な世界でスレッタに幸せに生きてほしいなら、ガンダムを含め、彼女を巻き込み得る呪いが跋扈する世界を変えなければならない。
完全に平和な世界に書き換えなければならない。
つまり、ミオリネがクワイエット・ゼロを実行する動機が誕生しているわけです。
しかし、それはきっと「エリクトの幸せ」を願ってクワイエット・ゼロを継続させようとするプロスペラと同じようなものになるでしょう。
そして同時にミオリネは強大な「呪い」や「罪」を背負うことになる…。
うーむ、前回の記事でも触れましたが、ミオリネの将来に不穏な気配が漂ってきましたね…。
それに、なんだかんだでスレッタに何も説明せずに突き放したミオリネの行動はかつてデリングがやったことと全く一緒です。
それがどんな蟠りを生むのか…ミオリネはよく知っているはずなんですけどね…。
母は語らず
個人的に一番ヤバいと感じたのは、今回のプロスペラの言動でした。
スレッタを解放したいというミオリネの願いを聞き入れるばかりか、恐らく罪悪感に負けたベルメリアを巻き込んでエアリアルを止める仕掛けを施すなど、積極的に協力してすらいます。
ここから示唆されるのは、プロスペラにとってスレッタはもうエアリアルを降りても構わない段階に入ったということ。
つまり、すでにプロスペラにとってスレッタは最後の決闘さえクリアしてくれれば用済みということです。
ミオリネやエアリアルを失ったスレッタに、プロスペラがどう接していくかにもよりますが…今回のエアリアルの様子を見ていると事は既に進んでいるようですね。
プロスペラはベルメリアに、スコア8に達し、クワイエット・ゼロを発動させればエリクトは物理空間でも生きられるようになると語っていました。
そして今回の決闘で、エアリアルが力を発動した際、これまでにない白い光を放っていました。
これは新たなパーメットスコアに達したと捉えるべき描写でしょう。
スコア8まではいかなくても、少なくとも達成を目前にした状態にまで進んでしまったというところでしょうか。
ミオリネの前でのプロスペラは相変わらずでしたが…この先の彼女の振舞い方によっては、スレッタをさらに絶望のどん底にまで叩き落すでしょうね。
ところで、エアリアルが白い光を発したとき、プロスペラのヘルメット(仮面?)にも反応があったような描写がありましたけど、あれはどういう理屈なのだろうか…。
データストームのネットワークにアクセスできるような機能を持っていそうですが、プロスペラ自身はデータストームの影響を受けちゃうしな…。
まぁエアリアルに取り込まれているエリクトの様子を逐一モニタリングできる機能を有しているというところでしょうかね。
大切なもの
さて、最後はサブタイトルにある「大切なもの」を踏まえつつ、今回のエピソードを総括しましょう。
17歳になったなら
17歳の誕生日を迎えたミオリネと、学園に帰還したグエルにとって、「大切なもの」は一致している印象でした。
まずは「父親の残したもの」でしょうか。
複雑なうえに呪いを孕んですらいても、自分と家族をつなぐ唯一のもの。
家族との間に蟠りを抱えつつも、ミオリネやグエルはそれを取り巻く家族の想いを知り、改めて向き合うと決めたわけです。
そしてもう1つがスレッタ・マーキュリー。
ミオリネもグエルも、総裁選がある以前に、スレッタのためだからこそ、彼女を苦しめるとわかっていても今回の作戦を取ったのでしょう。
なかなかの荒療治ですが、個人的に今回の決闘をミオリネやグエルが主導したことには意義深いものを感じました。
デリングに突き放されながらも、自ら対峙し、反発しながらもその想いを知ったミオリネ。
全てを失い、ヴィムをその手にかけてどん底に落ちるも、這い上がってきたグエル。
いずれも突き放されて孤独になっても、決して逃げずに進んだ経験を持つ人物です。
まさに「逃げれば1つ、進めば2つ」を本当の意味で実行したというべきでしょう。
巣立ちの時
さて、最後にスレッタを見ていきましょう。
これまでもプロスペラに依存してきたスレッタですが、それだけではうまくいかなくなりつつあることは随所に示唆されていました。
そしてさきほども触れたように、スレッタ自身が獲得したものも間違いなく存在しています。
そんなスレッタにとって、今回のエピソードは初めて自立した自我を萌芽させるきっかけになるものでしょう。
自分の知らない事柄のために、ミオリネもグエルも、そしてプロスペラも離れようとしている。
では、自分の大切なものであるミオリネを守るために、彼女と生きる未来を掴むためにスレッタはどうすべきか…。
これを踏まえると、今回の決闘はスレッタが改めて「逃げるか、進むか」を問う場面に立ったことを示しているのではないでしょうか。
母親の言いつけではなく、自分の意志で逃げるのか進むのかを選ぶ。
そう考えると、今回の決闘の相手がグエルというのも、なかなか面白い趣向ですよね。
初めてミオリネと結ばれるきっかけを作ったグエルに、今度はミオリネを取り上げられる…。
親の言いつけで生きてきたスレッタが、自立の道を進むグエルに敗れる…。
第1話で劇的に人生を変えたスレッタですが、今回もまた、同じ構図で劇的に人生が変わる分水嶺に立った。
プロスペラからすらも突き放されるであろう状況で、スレッタの巣立ちが始まろうとしています。
その意味では、ミオリネがエアリアルを止めた際に合図として流れた「ハッピーバースデー」は、やっと1人の人間として自立するスレッタを示すものでもあるかもしれません。
『水星の魔女』第17話感想
スレッタがまさかの花婿脱落という、なかなかインパクトのある展開でしたが、これまでのミオリネやグエルの描写を踏まえると、納得のできる展開ではありました。
それにスレッタ×ミオリネ×グエルの構図も、シーズン1と重ねつつも、絶妙に変化を反映させているところが小憎らしいですね。
そして、ここからいよいよスレッタの本当の戦いが始まります。
プロスペラの娘としてのスレッタではなく、スレッタ・マーキュリーという一個人として、どうやって世界と、ガンダムと、そしてミオリネと向き合うのか…。
と、続きが気になるところですが、次回は総集編。
再来週のエピソードでお会いしましょう~。
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