皆々様こんにちは。
『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完(以下『完』)担当のgatoです。
前回は八幡が雪乃や結衣との関係を巡って、それとなく追い込まれていく様が描かれていました。
色々片付かないままプロムが開催され、なんやかんやで八幡と結衣は雪乃達生徒会を手伝うことに。
もちろん色々わだかまりやすれ違いを残したまま…。
決して良好とはいえない状況の中、八幡は積もり積もった屈託をどう解消していくのか。
今回何があったのか、振り返っていきましょう。
原作ファンの方は初見勢の考察にニヤニヤしながら読んで頂ければと思います。
※コメント欄でのネタバレも厳禁でお願いします。
いろはのもくろみ
前回の記事でいろはが八幡のフォローをしていると指摘しましたが、やっぱり彼女が八幡に生徒会を手伝わせようとするのは雪乃との間を取り持つためでしたね。
何かにつけて八幡に助けを求める自分のキャラクターなら、自然と雪乃に引き合わせることができる…彼女らしいフォローといえますね。
まぁそれをする自分を「都合の良い女」っていってしまうのはちょっとヤバい気もしますが(笑)
ただ、いろはとしては八幡個人だけでなく、雪乃や結衣も含めて「奉仕部全員の関係」を守りたいという想いが強そうですけども。
他方でいろはと八幡のお約束のやり取りですが、台詞を拾って見ると意外と「八幡に告白されても構わない」ってニュアンスがありますよね。
「遊びに行くくらいはいいですけど、それ以上は全部終わってからにしてくださいごめんなさい!」
この台詞だって、裏を返せば「遊びに行く以上はやっても構わない」とも読めますからね。
まぁいろはは前に八幡と雪乃の関係に嫉妬めいた苛立ちを見せていましたし、あわよくば…みたいなところもあるかもしれません。
尤も、素直に八幡と雪乃との関係を応援しているからこそ、まずはフォローに回っているんでしょうけどね。
シャル・ウィ・ダンス?
大盛況に終わったプロムですが、合間では八幡と結衣のダンスが見られました。
いやー、ここで踊ってあげるところが八幡の良さであり、ダメなところであり…(笑)
結衣も結衣でなんやかんやで八幡を求めてしまうからなぁ…。
相変わらず八幡が結衣のお願いを叶えてあげるやり取りは続いているようですが、ついに結衣が「次で最後にするね」と口にしました。
まだ八幡の「お願い」が決まっていないにも関わらず、これを口にしたということは、結衣はこのやり取りを「終わり」にすると決意したのでしょう。
結衣が言う所の「最後のお願い」は順当にいけば「八幡に想いを伝えること」…になりそうですが、個人的には「八幡の願いを叶えること」である可能性も意外と高いのかと思っていたりします。
前回の公園でのやり取りで、結衣は八幡が「できない範囲でも無理してやる」一面をシリアスな口調で諫める場面がありました。
あのやり取りから、八幡が無理して自分のお願いを叶えることは結衣にとって本意ではないと窺えます。
そして結衣は八幡と雪乃の運命的な関係性を認めている…つまり、八幡が自分の想いに応えるのは彼が無理をしていることに等しくなってしまう。
だとしたら、結衣が「最後のお願い」を切り出したのは、いい加減八幡に無理をさせないようにするための彼女なりのフォローなのかもしれません。
雪乃のお願いとはいえ、実際八幡は結衣とのやり取りに欺瞞を感じていましたし、結衣もまたそれを感じていても不思議じゃありません。
そう考えると、結衣のあの台詞には単純にけじめをつける以上の、重くて切ない覚悟があったのかもしれませんね。
母と向き合い
雪乃の苦悩の根源である母親との確執ですが、今回は小さいながらも一歩を踏み出したようです。
畏怖の対象である母に対し、雪乃は自分の将来の夢を伝えることができた点は、例え細やかでも雪乃にとっては大きな一歩だといえるでしょう。
まぁでも雪乃の母の反応と言ったら…。
陽乃の言う通り、実質的なゼロ回答ですよね(笑)
一見認めているように見せかけて、さりげなく最後を「ゆっくり考えましょう」で締めている。
つまり「確定ではなく、今後の考え次第では変更され得る」というニュアンスをきっちり残しているわけです。
やっぱり一筋縄ではいかないお母さんですね。
まぁ陽乃の言う通り、母としてはまだ合格点をあげる段階ではないのでしょうけども…。
ところで、雪乃と母のやり取りでさりげなく陽乃がフォローを入れていましたが、そこには陽乃の屈託が大いに影響しているようでした。
その話は最後の項でじっくり掘り下げましょう。
これまでと、これから
一番重要な話は残り2つの項で記しますが、ここで一度閑話休題的な
プロムは大団円を迎えましたが、やはり奉仕部の面々の屈託はそう簡単には解消されませんでした。
それを浮き彫りにしたのはやっぱり我らが陽乃。
前に八幡や結衣に突き放されましたが、それにも懲りずに陽乃は今回のプロムの締めくくりは「納得がいかない」と断じます。
そこには陽乃の「20年の重み」があるわけですが、それは後々語るとして…。
ひとまず、陽乃に色々言われた後の3人のやり取りを見てみましょう。
陽乃が去った後、結衣は八幡や雪乃に自分達が過ごした一年を振り返り、「大好きになるくらいすごい長い時間だった」と評します。
雪乃はその台詞に同意しつつも、「終わらせるなら今がいい」と返し、結衣は雪乃に同調しつつも「続けられるならそれでいい」と零します。
つまり雪乃は「終わり」を志向し、結衣は「続き」を志向していると明確に表現されているわけです。
そして二人は同時に八幡を見る場面では、その決定権が八幡に握られていることを示唆しています。
あの場面は最終話に向けた現状の構図を端的に表していることがわかりますね。
雪乃の手、八幡の手
さて、一番重要な話の一つをここであれこれ掘り下げてみましょう。
テーマは「雪乃に対する八幡の感情」。
雪乃と結衣の視線に応えず陽乃に会うためにその場を立ち去った八幡ですが、そこで雪乃に止められ、彼女にこれまでの感謝、そして「もう大丈夫。これからはちゃんと一人で上手くやれるようになるから」と告げます。
話が終わってもまだ積もる想いがある雪乃は八幡の袖を掴みますが、それを八幡は優しく引き離し、そのまま立ち去ります。
この一連のやり取りの中で個人的に印象的な描写が2つあります。
1つ目は雪乃の感謝の言葉に応える前に、八幡は窓ガラスに映った自分を見る場面です。
ごくごく短いですが、あの場面は八幡が雪乃の言葉に応える前に一度自分を顧みていることを示唆しているのでしょう。
だとしたら、八幡は雪乃と話すうえで、自分を顧みるだけの冷静さを保っており、同時にちゃんと思考を張り巡らせながらやり取りしていることがわかります。
つまり、八幡は感情的ではなく、ある程度理性的に、明確な意図を以て雪乃に対応しているわけです。
そして2つ目は八幡が雪乃の手を優しく引き離す場面。
八幡は躊躇いつつも、一度雪乃に手を添えたうえで、わざわざ一本ずつ指を離し、最後に優しく持ち上げて引き離していました。
これだけ細かく書けるくらい、複雑な動作でしたよね。
引き離すという結果は変わらないですが、要所要所に雪乃への想いやりがあることがわかります。
さて、上記の2点をお膳立てにした場合、これまで何かに付けて課題にしてきた「八幡の恋心問題(笑)」に個人的な着地点を見出すことができました。
八幡は雪乃への恋心を自覚しています(笑)
「恋心」と名付けていない可能性は否めませんが、少なくとも雪乃に対する好意を念頭に置いて彼は行動しているといえるでしょう。
結衣の「お願い」を聞いてほしいという雪乃の「お願い」を聞いてしまうのも、「一人で大丈夫」という雪乃から離れてしまえるのも、全て雪乃のためにやっているわけです。
八幡は雪乃のために(あるいは好意の赴くままに)、彼女を助けてきました。
しかし雪乃はそれが自分のためにならない、一人でやれるようにならなければならないと考え、問題の根源である家族と一人で向き合う決心をします。
無論それは雪乃にとって重要な命題ですし、実際彼女は一人でもやれるようになる必要がありました。
八幡自身、雪乃が自分に依存するという関係性を望まないため、そんな彼女を応援する道を選びます。
ただ、八幡からしたら雪乃を一人にすることは決して望ましいことではありません。
彼女を助けたいという自分のエゴもありますが、それ以上に雪乃を放っておけない。
だから八幡は彼女が拒んでいることを理解しつつも、プロムで助ける道を選びました。
あの「対決」という構図は自分達の原点に返ることで、八幡が雪乃を支えられる新たなアプローチを提示する意図もあったのかもしれませんね。
例え君が一人になっても、勝負(関係)は続けられる…みたいな。
だけど、それも雪乃の本意ではありませんでした。
もちろん八幡の助けを得られて雪乃は嬉しかったですが、それ以上に「結果的に八幡の力を借りてしまった」という事実が、表に出さないだけで結局内心で八幡を求めてしまったことが、雪乃にとって大きなネックになってしまったのでしょう。
そしてプロム開催が決定した時に雪乃から勝負の終了を告げられた時、勝負の継続を望みつつも、最終的に八幡は雪乃の決定を受け入れました。
あそこで八幡が引きさがれてしまったのも、雪乃の本心を尊重できたから、加えてその本心が八幡の「本物が欲しい」という想いを汲んだものだったからでしょう。
雪乃がそう望むなら、自分のことを想ったうえで望んでくれるなら…そう悟った八幡は自分の負けを認めたのでしょう。
この決断には第一期で八幡は雪乃に自分の理想を押し付けていたことへの反省が活かされているのかもしれません。
自分が思う雪乃ではなく、雪乃が思う雪乃になってほしい…こんな思いが反映されているからこそ、八幡は雪乃の想いにどこまで付き合えることができるのでしょう。
例えそれが、今までの関係を「終わり」にすることであったとしても…。
何はともあれ、八幡の雪乃への恋心がわかりにくかったのは、これが原因ですね。
好きな人にありのままの自分で生きてほしい、好きだからこそ邪魔になりたくない。
八幡は雪乃を好きだからこそ、彼女のために彼女を手離そうとしているわけです。
…とはいえ、八幡が完全にそれに徹しきれているわけではない描写も所々にありますね。
結衣に依存している時に出てきた自虐的な独白や、今回のラストの陽乃とのやり取りがまさにそれですね。
いずれにせよ、八幡は「終わり」でも「続き」でもない、新たな道を見出す必要があるわけです。
本物なんて、あるのかな
さて、もう一つの重要な話である陽乃に触れていきましょう。
なんか陽乃が出てくるたびに何かにつけてダラダラ長文を書いてしまう癖がありますが、やっぱり陽乃は放っておけないわけで(笑)
陽乃は今回のプロムの結末が自分の20年の価値に見合ってないために「納得できない」と断じ、さらに八幡達が「自分達の関係をごまかしてだましてきた」と糾弾します。
いやー痛い所を見事についてくる辺りは、さすが陽乃姉さんとしか(笑)
ただ、今回の陽乃はちょっと様子が違いました。
最初は容赦なく糾弾しつつも、次第に八幡に訴えかけるような口調になり、そして最後には「本物なんて、あるのかな」と切なげにつぶやきます。
あの切実さには、まるで「ニセモノみたいな人生」を八幡に歩んでほしくないと陽乃が想っているようにも感じました。
これまで色々陽乃について語ってきましたが、意外とこれが陽乃の本心であるような気もします。
以前、第8話の記事で陽乃の「愛憎」の矛先が八幡ではないかと書きましたが、今回のやり取りでの陽乃の言葉は須らく八幡自身に向けられたものでした。
やはり陽乃は自分と八幡を重ねている節があることが窺えます。
ただ、彼女が八幡に向ける愛憎…とりわけ「憎」の部分はもう少し複雑で、切実なものです。
陽乃は自分の20年を「ニセモノみたいな人生」と否定的に形容していますが、それは八幡と同様に「酔えない」からこそでしょう。
つまり陽乃はその場の最適解を求めるあまり、例え欺瞞を孕んでいても自分の望みすら捨てて実現してしまう…それこそ八幡のような振る舞いをしてしまうのでしょう。
しかしそれで得たのはニセモノみたいな人生と、諦め続けることで冷めてしまった自分だけ。
そして雪乃に対しても、真っ当に「お姉ちゃん」が出来ず辛辣に当たってしまう。
ただ、そんな自分を八幡に重ねているからこそ、陽乃は彼に辛辣にあたると同時に彼を立ち上がらせようとしているのかもしれません。
八幡の雪乃への想いも、八幡達の関係が美しいからこそ、陽乃は彼らの欺瞞を糾弾し、本物に向かわせるのでしょう。
かつて自分ができずに後悔したことを、繰り返さないために。
八幡が自分にできなかったことを成し遂げること…それこそ自分を納得させる結末を見せることが、「ニセモノみたいな人生」に囚われた陽乃が今の自分を脱却できる機会になるのかもしれませんね。
ここからの、八幡
最期はラストの平塚のやり取りを踏まえつつ、八幡の現状を改めて整理しましょう。
八幡は雪乃への想いを貫くために雪乃を手離し、そして彼女の「お願い」を叶えるために結衣の「お願い」を叶える選択肢を取りました。
しかし八幡は自分の想いを欠落させたまま、自分がキーマンになっている関係を回しています。
キーマンがキーマンとして振舞わず、本心を隠したまま雪乃と結衣の言葉に追従しているだけですから、まさに八幡自身が認めているように、「大嘘を二人に呑み込ませる行為」です。
ただ、ここには八幡なりの葛藤もあるのでしょう。
当然八幡自身が本心をうやむやにしているのもありますが、八幡が本心を露わにすることは雪乃の望みを潰し、結衣を傷つけ、奉仕部を最悪な形で終わらせるリスクを孕んでいます。
雪乃・結衣・奉仕部全てを大切に思っているからこそ、八幡は結論を出せない。
しかし、自分を犠牲にして最適解を出すこれまでのやり方では何も変わらない。
その結果、欺瞞を繰り返してズルズルと現状維持をするしかない。
八幡にとって、今の状況は袋小路も当然でしょう。
ただ、そんな八幡の状況を打開し得るのが、結衣や平塚がいった言葉かもしれません。
今回印象的だったのは結衣や平塚が自分達の過ごした時間や八幡達の関係を顧みながら、改めてそこに価値を見出す言動が多かったことです。
今の八幡は雪乃や結衣に目を行き過ぎているがために、板挟みになっている節があります。
ただ、そもそも奉仕部の面々はこれまで様々な困難に遭いながらも乗り越えてきた実績があり、乗り越えてきただけの強度があるはずです。
その実績と強度と改めて向き合い、改めて雪乃と結衣を信じて結論を出すことが今後の八幡の活路ではないでしょうかね。
『俺ガイル完』第10話感想
いやー…気づいたら長くなっていた(笑)
個人的には陽乃の新たな一面が見られたり、八幡の雪乃への想いが垣間見える場面があったりと、色々充実した回でした。
まぁもう10話ですし、次回は平塚のフォローを受けつつ、八幡がようやっと動き出す感じになるんでしょうかね。
いずれにせよ、この物語がどんな「終わり」を迎えるかに期待しましょう。
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コメント
こんにちは!はじめまして
色んな人物の気持ちが垣間見えて、とてもいい回でしたね。
八幡に酔えないと陽乃さんが言っていましたが、卒業式で泣いていた八幡は「酔えている」あるいは酔える部分があると個人的に考えています。(ただの花粉症かも笑)
陽乃さん自身も代償行為で八幡たちに託して、期待してるから、あんなに辛そうに辛い言葉を吐露したと思うと悲しいですね。本当に俺ガイルは相手に言ってるようで、自分に言ってることが多くて、どうゆうこと?って何回か見直さないと分からないことが多いです。ま、それが醍醐味ですね笑
オモイカネさんコメントありがとうございます!
>卒業式で泣いていた八幡は「酔えている」あるいは酔える部分があると個人的に考えています。
た し か に
普通に「エモい」って言っていましたし、八幡はかなり卒業式に「酔っている」といえるでしょうね。
それに、八幡は確かに良くも悪くも俯瞰的に物事を見てしまう人間ですが、相手の心情に慮って接する人間です。(間違える方が多いけど)
その意味では、陽乃ほど冷淡とはいえないでしょう。
>陽乃さん自身も代償行為で八幡たちに託して、期待してるから、あんなに辛そうに辛い言葉を吐露したと思うと悲しいですね。
陽乃は自身の経験から雪乃や八幡に対してかなり倒錯的な一面がありますからね。
悲劇的といえば悲劇的ですが、大人としては少しダメな感じも(笑)
ただ、彼女はある意味雪乃以上に辛いポジションにいるわけで、その状況に対する唯一の足掻きがあの代償行為だとすれば、少し切ないものを感じます。