はじめましての方も、そうでない方も宜しくお願いします。
今シーズンは『鬼滅の刃遊郭編』の記事を担当することになった、くらむBONといいます。
初回1時間の視聴が終わり、TVアニメというよりもショートムービーのような構成と、ufotableの美麗な絵柄がマッチした第1話に圧倒されました。
この記事は、原作未読の状態で視聴したアニメファンが「どこに面白さを見出しているのか」や、伏線となりうる部分について考察していくシリーズ。
週刊少年ジャンプで原作を追いかけていたファンの皆さんや、単行本派の皆さんとはまた違った視点で、アニメ視聴勢がどう作品を捉えるのかを楽しんでいただけたら幸いです。
アニメ作品の内容に触れる部分がありますので、ネタバレに注意してください。
では第1話を振り返っていきましょう。
目次
第1話の4ブロック構成がスゴイ
『鬼滅の刃遊郭編』がジャンプアニメとしてフジテレビ系列でアニメ化されるという情報を聞いて、個人的に心配していた無駄なアクションの引き伸ばしなどが無かったので安心しました。
連載中のアニメ作品とは違い原作が完結しているという事情があるので、『鬼滅の刃遊郭編』では、引き伸ばしの必要もなさそうです。
第1話で初回一時間という時間での制作にあたり、ショートムービーのように見事な構成でストーリーがまとめられていて、見やすい印象を受けました。
原作未読なので漫画連載時の様子はわかりませんが、TVアニメ作品としてシリーズの導入部分が4つのブロックに別れているので、流れがつかみやすくなっていたと思います。
第1話の4つのパートブロック
①無限列車編の回想と猗窩座に対する鬼舞辻無惨のパワハラ描写(11分)
②無力感に苛まれる竈門炭治郎と煉獄家の出会い(21分)
③日の呼吸の謎とマッチョ化した炭治郎の決意(34分)
④宇髄天元との出会いと遊郭への潜入でエンディング(47分)
第1話の主な流れは①から④のように進行していきます。
それぞれのパートで気になった部分を整理してみましょう。
①無限列車編の回想と猗窩座に対する鬼舞辻無惨のパワハラ描写
一つ目のブロックは無限列車編の回想と、資産家の息子として人間界に潜入している鬼舞辻無惨の様子が描かれました。
視聴者目線では無限列車編の映像が記憶に新しいので、使いまわし感を感じている人もいるようですが、時間で見ると回想シーンはブロック①の冒頭5分のみです。
このブロックでは「有限会社鬼舞辻商会」ともいうべき、社長と部下のやり取りが行われていて、指示した内容を遂行しない部下の報告に苛立つ無惨社長のパワハラが描かれました。
無惨の現在の狙いは次のようにまとめられます。
・秘薬を完成させる「青い彼岸花」の捜索を戦闘狂の部下な猗窩座に命じていた。
・人間界に紛れ込み、鬼殺隊の殲滅(せんめつ)を画策している。
時代に見る敵サイドの上司部下の関係性
無惨のやりたいことは分かるのですが、適材適所という概念が分からずに脳筋戦士に参謀のような仕事をさせようとするのが、現代日本の中小企業経営者みたいで身につまされます。
奇しくも同じ週刊少年ジャンプ作品の、『ジョジョの奇妙な冒険・第2部戦闘潮流』に登場するカーズとワムウと似たシチュエーションで、上司と部下の描かれ方に違いを感じるのは気のせいでしょうか?
どちらもゲス上司なのは変わりませんが、比較してみると30数年前はゲスさを隠そうという配慮があったところに時代の流れを感じて面白いと思いました。
②無力感に苛まれる竈門炭治郎と煉獄家の出会い
第2ブロックでは煉獄杏寿郎を助けられずに無力感に襲われた炭治郎と、息子を失った煉獄槇寿郎の出会いがありました。
第1ブロック冒頭の回想シーンがあった事で、炭治郎が杏寿郎に対して負い目を感じている事が強調され、槇寿郎との出会いの際に食って掛かるセリフに説得力が生まれています。
煉獄杏寿郎の生きざまや強さに憧れと尊敬を抱いていたのに、単純に戦力差のある猗窩座の強さと、堕落した槇寿郎の鬱屈(うっくつ)とした感情によって否定された炭治郎の思い。
純粋な炭治郎の持つ思いや憧れが、残酷な現実によって否定されるこのシーンは、視聴していて少しつらかった場面でした。
槇寿郎の抱えるコンプレックス
槇寿郎が家名に恥じず努力して炎柱となったのに、何故か引退して酒浸りになっているマダオとなったのには何か理由があり、それはセリフの端々からうかがえそうです。
・ヒの呼吸について書物で読んで知っている
・全ての呼吸の源流となったヒの呼吸に対しコンプレックスを持っている
つまり、炭治郎が杏寿郎の弟の千寿郎に見せられた書物にヒノカミ神楽に関する記述があって、炎柱という地位がヒの呼吸の使い手に比べれば取るに足りない技術である事に気付いてしまったのでしょう。
炎柱としての努力やプライドが書物の中のたった一文によって否定されてしまったことで、燃え尽き症候群のような状態になってしまったのかなと思います。
今まさに葛藤の中にいる少年炭治郎と、葛藤の果てに堕落してしまったマダオの対比が光る演出だと感じました。
③ヒの呼吸の謎とマッチョ化した炭治郎の決意
槇寿郎によって書物「第二十一代目炎柱ノ書」はズタズタにされていて、炭治郎はヒの呼吸についての謎を知ることが出来ずに驚きます。
ここで、炭治郎がヒの呼吸によって短絡的なパワーアップに逃げずに、無力感から立ち直ろうとする若さや成長がまぶしく見えました。
鬼滅の刃が流行の異世界なろう作品と違うのは、少年漫画としての「こういうところなんだな」という感想が自然と湧き、個人的に人気の理由が腑に落ちます。
このブロックで千寿郎が別れ際に炭治郎に託した、杏寿郎の日輪刀の鍔(つば)が意味するものが何であったのかを考えてみましたが、言葉にできない思いが正解なのではないかと気付いて考えるのを止めました。
また、槇寿郎が杏寿郎の言葉を聞いて酒をあおろうとする場面は不甲斐ない自分と、4んだ後も槇寿郎を労ろうとする杏寿郎の家族の絆が垣間見えて良かったと思います。
己の弱さに向き合えなかったマダオの槇寿郎も悪い人間ではなく、ただ人間の一面として「そうあるしかなかった」というやるせなさを感じました。
炭治郎の決意と日常回帰
鋼鐵塚の登場で、杏寿郎の4と喪失いう非日常から、蝶屋敷を起点としたコメディタッチの日常と再生へと切り替わることで私も感情の切り替えが出来ました。
強くなるための鍛錬や鬼殺隊の任務を通じて、4か月の間にモリモリとマッチョになっていく炭治郎や善逸や伊之助の描写にたくましさを感じます。
1期とは身体の厚みが違い過ぎて草。
鬼殺隊として炭治郎が禰豆子と共に鬼を退治する場面は、アクション描写に定評のあるufotableらしさがありました。
第1話の公開にあたり、単なるシーズン開始の心情描写に終わっていないので、見せ場を意識しているのではないかと思います。
これがもし初回30分だったら、動きも少ない繋ぎの一話でしかなかったのではないかと感じ、1時間番組(正確には47分)として制作したのは流石だと思いファンとして脱帽です。
④宇髄天元との出会いと遊郭への潜入に向かうエンディング
新たな柱の宇髄天元の登場で遊郭編の新展開へと突入して、傍若無人な天元の性格とコワれた人格が面白いパートでした。
大正時代を舞台とした剣術活劇アニメで忍者キャラが出てくるとは思っていなかったので意外です。
天元が任務とはいえ女性隊員をモノのように扱っていますが、忍びという出自からなるほどなと感じました。
「遊郭」という言葉の扱いを巡って変な意味で話題になってしまったこのシーズンですが、遊郭という舞台装置と忍びという非情の存在を掛け合わせているモチーフに面白さを感じます。
OPテーマで3人の女性に囲まれた忍びという事が分かるので、スリリングな展開に期待できそうです。
ヒロインだって成長します
鬼殺隊員として成長しているのが炭治郎達だけではなく女性陣も成長しているのが分かって、その描写が可愛いと思いました。
蝶屋敷に現れた天元に対して、「どうでもいい」事を銅貨を投げて決めようとした栗花落カナヲが思いとどまって、自らの気持ちに従おうとするのは良い演出でした。
任務とか命令とか複雑な判断から言い訳をして目をそらしていたカナヲが、ほんのちょっとの勇気を奮い起こして一生懸命引っ張っているのがかわええ。
しかし、天元がアオイのお尻をぺちぺちしたのはあかんでしょ。
「お巡りさんこいつです」と通報しそうになりました。
決してかわって欲しいわけじゃありません。
OPから見るシーズン展開
OPのAimerさんの「残響散歌」は今後のアクション展開を決定づける曲調で、イヤがオウにも盛り上がります。
OPからシーズンでこれから描かれそうな鬼や展開を読み解けるとは思いますが、原作を読んでいる人にとっては「あのシーンがでてる!」というシーンばかりなのでしょう。
炭治郎や善逸が女装していることから、花魁となっている鬼を見つけるために遊郭に潜入する展開になりそうです。
イケメンで一番女装が似合いそうな、伊之助が相変わらず猪の被り物をしているのには驚きましたが、潜入捜索がムリな性格だし仕方ないかなと思いました。
下野紘さんが担当しているキャラで女装が似合うキャラというと、観察処分者のおバカなあの子が連想されてしまうので、個人的に今後が楽しみです。
鬼滅の刃遊郭編1話感想まとめ
今回紹介の4つのブロックを順にたどっていくと、炭治郎が目標を失った喪失感から若さゆえの前向きさで立ち直り、強くあろうとあがいていく様子が分かりやすく描かれているので気持のいいシーズンの導入でした。
改めて『鬼滅の刃遊郭編』を見て、炭治郎の性格と期待を裏切らない行動が分かりやすいので、複雑な設定が単純化されてきて小中学生が感情移入しやすいんだろうなと思います。
原作のストーリーは分かりませんが、制作のufotableが原作を上手く料理してくれているので、ショートムービーかと見まがう一話での安定感がスゴイ。
放送局を聞いたときに残念な気持に陥っていましたが今後に期待できそうです。
ではまた次回で。
ばいばい。
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コメント
くらむBONさん、はじめまして! 宜しくおねがいします。
アニメ愛を感じるとても深い考察と丁寧な解説でくらむBONさん大好きになりました。
くらむBONさんは立場上、担当作品を持ち上げ(応援)系の記事なのが当然ですので、
逆に私は残念に感じた事を書かせていただきます。同じ、原作未読の立場から。
今回は、声優さんと音響監督の仕事の件です。
煉獄パパが
①全ての呼吸がヒの呼吸の後追いに過ぎない。ヒの呼吸の猿マネをし、劣化した呼吸。
②ヒも水も風も…
と続けざまに言うのですが、私は「火の呼吸の後追いが、火も水も風もって…?」と感じました。
あまりに不自然な流れなので、ネットを見ると私と同じブーイング多数でした。
どうやら①のヒは「日」で、②のヒは「火(炎)」のつもりらしいのです。
漫画ではセリフは文字なので違和感など感じないでしょうが、私のように初見がアニメの人たちには、???だったと思います。
思い起こせば、炭治郎の声優さんは「ヒノカミ神楽」の発音の時、ヒからノへ上げる発音で、「日」を視聴者が意識できる発声を心がけていたのだと感心しました。
煉獄パパの声優さんは、ゲスト参加みたいなものでしょうから、そこまでの気使いは考えなかったでしょうが、この場面のセリフは、恐らく今後の鬼滅ワールドの世界観に関わる、最重要セリフだと思われ、声優さんの腕で、日と火の描き分けをして欲しかったな、と思いました。音響監督は、そこに絶対こだわって指摘と指導すべきなのに、とも思いました。いっその事、火は炎に言い換えさせても良かったかも、です。
yupoさんはじめまして。
ありがとうございます。ちょっとでも面白いなと感じていただけたら嬉しいです。
>アニメ愛を感じるとても深い考察と丁寧な解説でくらむBONさん大好きになりました。
サイト内のくらむBON名の過去記事をご覧になっていただけるとご理解いただけると思いますが、割と残念に思うポイントについても書いてしまいます。ただ、作品に対するリスペクトは忘れないようにしています。
>くらむBONさんは立場上、担当作品を持ち上げ(応援)系の記事なのが当然
そうなんですね。私は気になりませんでした。無限列車編で登場した煉獄の呼吸が炎でヒノカミ神楽とは違うものだと認識していたので、ヒノカミ神楽の音に通じるヒの呼吸だろうなと漠然と捉えていました。
謎を引っ張る演出で、今後の作中で触れられる伏線なのだろうと考えていましたが、答えを早く知りたい視聴者ニーズと、制作者の思いにギャップがあるのかもしれませんね。
>どうやら①のヒは「日」で、②のヒは「火(炎)」のつもりらしいのです。
漫画ではセリフは文字なので違和感など感じないでしょうが、私のように初見がアニメの人たちには、???だったと思います。
なるほどです。発音の部分には着目していませんでした。TVアニメ版無限列車編第二話の煉獄のセリフでは「だが知らん。ヒノカミ神楽という言葉も初耳だ」の後に呼吸の説明で「炎、水・・・」となっていて、今回の煉獄パパのセリフでは「火」となっているのが問題の根幹なのでしょう。原作漫画での表記がどうなっているのかは不明ですが、安易に原作漫画のセリフを変えると、原作原理主義のファンからの反発などもありそうです。
>思い起こせば、炭治郎の声優さんは「ヒノカミ神楽」の発音の時、ヒからノへ上げる発音で、「日」を視聴者が意識できる発声を心がけていたのだと感心しました。
>音響監督は、そこに絶対こだわって指摘と指導すべきなのに、とも思いました。いっその事、火は炎に言い換えさせても良かったかも、です。
記事内を補完いただく知見をいただけてありがとうございました。
また見ていただければ嬉しいです。
では。