皆々様こんにちは。
『平家物語』担当のgatoです。
前回は福原遷都(ふくはらせんと)が進む中、清盛が物の怪に悩まされたり、維盛(これもり)が富士川の戦いで大敗したりと、平家の状況が着実に悪くなっていく様が描かれました。
おまけにいよいよ頼朝も挙兵し、治承・寿永の乱(じしょう・じゅえいのらん)…つまり源平合戦が幕を開けようとしています。
そんな中、今回は重要人物が次々と旅立ってしまう急展開が目白押しのようです。
平家の斜陽がいよいよ目前に迫る中、びわは何を想うのか…。
目次
南都焼き討ち
遷都を進めていた福原から京に戻った平家ですが、早速南都焼き討ちというとんでもない行為をやらかします。
敵対していた興福寺と戦う過程で、平家側が興福寺と東大寺を焼き尽くすというとんでもない事件ですね。
今作でも、原点の平家物語においても重衡(しげひら)が灯かりにするために燃やした民家の火が燃え移ったための、故意ではなく事故的に起こった事件だと描かれています。
ただ、他の史料では敵が籠っている施設に放火した結果、想像以上に燃えてしまったとされています。
戦略としての放火と、事故的な延焼の違いは大きいですが、いずれにせよ東大寺まで焼いてしまうようなことは平家側は想定しませんでした。
史実の重衡も、今作で描写されたようにかなりショックを受けていたでしょうね。
事実、彼はこれが原因で南都から根深い怨みを買うことになります。
他方で、清盛は南都焼き討ちを聞くなり高笑いするなど、かなり剛毅な一面を見せていました。
「たたり」と聴いて若干ビビってはいましたけど(笑)
いずれにせよ、平家の悪行はここに極まった感じですね。
第3話でも書きましたが、寺社への攻撃はタブーであり、重衡が気に病むのは無理からぬことです。
実際に維盛達も南都焼き討ちで平家がさらに恨みを買ったことを悟っており、平家の斜陽をその身に感じています。
おまけに後半では木曽義仲の蜂起にも触れられており、ついに平家が滅びる未来が近づいていることが示唆されていました。
高倉上皇崩御
前回から病に伏していた高倉上皇ですが、今回の前半で病没しました。
ここでは高倉上皇の病没に際した、徳子の立ち回りをチェックしましょう。
駒にはならない
高倉上皇が危篤となる中、清盛と時子に呼び出された徳子は「後白河法皇の後宮(こうきゅう)」になるよう薦められますが、出家をちらつかせてそれを拒否します。
つーか、いくら当時の価値観が今と違うとはいえ、旦那に先立たれた娘をその舅(しゅうと)と結婚させようってなかなかえぐいですよね(笑)
まぁ傀儡とはいえ院政を司る高倉上皇が見罷った以上、院政に影響力を持つために次に権力を握り得る後白河法皇と婚姻関係を持つことは、政治的には間違っていないのでしょうけど…。
そんな提案を受け、徳子は初めて清盛に正面から反発しました。
これまで彼のやり方に疑問を抱きながらも従ってきた徳子ですが、ここで明確に自分の意思を提示したわけです。
この様、どこか重盛を彷彿とさせますね。
尤も、彼は成親を救えなかったり、清盛の暴走が止められなかったりと報われなかったためにすっかり気落ちしてしまいますが、徳子はわりと清々しい表情をしていました。
徳子からしたら、前回の高倉上皇から言葉をもらえたから報われたと感じたのでしょう。
清盛に駒にされ、望まない結婚を強いられた徳子ですが、それでも自分の想いが確かに愛する人に伝わり、向こうもまた自分を愛してくれた。
それを知れただけでも、徳子は世界と向き合い続ける覚悟を決められたのかもしれません。
そんな徳子が得た報いは独りよがりなもののようですが、びわの目を通じてみると、それは確かなものでしたね。
徳子と安徳天皇に寄り添う高倉上皇の霊の姿…。
「今更」と感じるかもしれませんが、高倉上皇にとって、病没したことが平家や後白河法皇とのしがらみから初めて解放され、ありのままの気持ちで徳子や安徳天皇と向き合える機会だったのかもしれません。
思えばこれまでの霊を通じた過去視の描写の中でも、初めて描かれた幸せそうな場面でしたね…。
泥の中にでも咲く花
終盤で徳子は後白河法皇との対話で、「望まぬ運命が不幸とは限りませぬ」と気丈に振る舞う姿を見せました。
かつては清盛の駒とされる運命に鬱屈を抱いていた彼女ですが、高倉上皇からたった一言とはいえ愛情を向けてもらえたことで、自分の運命に向き合う気概を得たような感じがします。
また、後白河法皇だけでなく、自分の代わりに後宮(こうきゅう)に入った御子姫君(みこのひめぎみ)のフォローに入るなど、積極的に家族を支えていく姿勢も示していました。
個人的に、この時の徳子は第2話で自分の身を儚んで仏門に入った祇王と対照的に捉えられる気がします。
祇王は権力者の駒とされることを避けるために、世を離れるべく出家しました。
これに対し、徳子は駒とされることに立ち向かいながら、世に留まる決心をしたわけです。
ここには、徳子が高倉上皇や安徳天皇への愛情という、誰でもない自分だけの想いを手に入れたこと、そしてそれは報われ得ることを知ったことが大きく影響しているのでしょう。
また、第5話で触れた彼女の「世界を赦す」という想いもここに絡んでくる感じがします。
確かに望まぬ結婚を強いられ、権力者の駒として扱われるこの世界はロクなものではない。
だけど、そんな中でも自分の大切な想いは守ることができる。
それも、ただ受動的に耐えるのではなく、能動的に手にしていける。
高倉上皇との結婚は、徳子にとってろくでもない世界を赦し、その世界で強く生きていく自信を手に入れるきっかけになったのではないでしょうか。
他方で、後白河法皇が指摘していたように、すでに彼女が浸かった泥は想像以上に深くなってしまっているのですが…。
清盛逝く
これまで平家の繁栄の、そして悪行の中核を担っていた清盛が、今回はいよいよ息を引き取ることになりました。
時子の恐れ
清盛について触れる前に、個人的に印象だった時子について掘り下げたいと思います。
夢で清盛を無間地獄(むげんじごく)に連れて行こうとする牛頭(ごず)と馬頭(めず)に遭遇した時子ですが、気丈な彼女にしては珍しく動揺していましたね。
当初は得体のしれない熱病に侵される清盛に引いていましたが、夢を見た後の時子は熱に茹だる清盛に自ら手を差し伸べ、遺言を聞き届けようとしています。
この時の時子って、普段差している紅を差していないんですよね。
夢を見て動揺していたこともあるのでしょうけど、清盛のことが心配になっていの一番に駆け付けてきた感じもします。
個人的に時子の清盛への愛情を垣間見た気がする場面でした。
余談ですが、清盛を襲った得体のしれない熱病は一説にはマラリアとされています。
この時清盛を襲ったマラリアは大国から侵入してきたとも言われているとか。
日宋貿易を開始し、日本を海洋国家にすべく動いてきた清盛の末路にしては、あまりに皮肉ですね。
憎まれ逆らわれ
さて、いよいよ清盛といきましょう。
頼朝の首を墓前に供えるよう求める清盛の今わの際の発言は、原点の平家物語に沿ったものでした。
ただ、今作は最期に「徳子はまだへそを曲げているのか」という台詞が入っています。
自分に歯向かう最大の反抗勢力の頼朝ではなく、最期の最期で徳子に触れている点は印象的でした。
思えば、息を引き取る前の清盛は相手が誰でもあれだけ力づくで反抗勢力を潰してきたにも関わらず、徳子に反抗されてからは気落ちしているような一面を見せたり、前回もしんみりとした様子で重盛に触れていました。
ここからも彼の心情をうかがい知ることができます。
個人的に、今作における清盛は実の家族と対立したことにショックを受けており、そこに彼の悲劇性があると思っています。
これまでどんな相手でも平然と踏みつぶしてきた清盛ですが、それも平家一門の、ひいては自分の家族の繁栄のためでした。
しかし前回の記事で触れたように、その清盛のやり方は重盛や徳子といった面々には通じず、むしろ彼らとのギャップを深める結果になってしまった。
恐らく今作における清盛には家族愛と権力欲の区別がついてなかったのでしょうね。
当時の武士の地位の低さを考えると、立身するには敵対する者を打倒し、あらゆる手段を講じて権力を得ていかなければならないため、清盛のやり方は必ずしも間違いではありません。
でも、そのやり方は翻って自分の家族をも傷つけてしまうことになる。
清盛はいつしか家族についていた傷に気づけなかったのでしょう。
良くも悪くも武士である清盛にとって傷は栄誉のようなものだったのかもしれませんが、その傷にもっと早く気づいていたら、相応に労わっていれば…もう少し幸福な晩年を過ごせたのかもしれません。
ただ、悲しいかな、栄華を築くと同時に身内にすら嫌われ、敵を作るやり方を続けてきた清盛も、宗盛や知盛からしたら誇らしい父親以外の何物でもなかった。
だから宗盛達はその後も清盛のやり方を踏襲し、源氏と真っ向から敵対する道を選んでいるわけですが…。
後、清盛が息を引き取る場面で一瞬映された濡れた椿が個人的に好きでした。
なんというか、個人的には実の子と分かり合えず泣いている清盛を暗喩している気がしましたね。
残された者達は
清盛が息を引き取った後、最も動揺が描かれていたのは皮肉にも重盛の子供達でした。
ここでは維盛(これもり)と資盛(すけもり)を掘り下げてみましょう。
維盛は揺らぐ
富士川の戦いでの大敗以降、武士になりきろうとする強迫観念に囚われ始めた維盛ですが、今回はびわに対して動揺した様子で未来視を求めるなど、錯乱した一面が描かれました。
うーん、維盛が悪い方向に落ちている感じが半端ない(笑)
重盛に悩み過ぎているところが似ていると指摘されていた彼ですが、図らずもこの時の彼は病没する直前に一心不乱に熊野詣をしていた重盛を想わせますね。
資盛に諫められて冷静になるところを見ると、まだそこまでおかしくはなっていないようですが…。
前回から無理に武士をなろうとしている維盛は、ある意味徳子と対照的といえるかもしれません。
高倉上皇との結婚で何だかんだ自分の想いを生かす術を見出した彼女と違い、維盛は無理に武士になろうとすることで自分の想いを抑圧している感じがします。
そう捉えると、彼もまた清盛が図らずも傷つけてしまった者の一人かもしれませんね。
資盛は諭す
個人的に今回のエピソードで大きく印象が変わったのは資盛でした。
今までは口さがない生意気な青年という感じがしましたが、維盛を諫める場面を見ると意外と資盛が一番のリアリストであり、冷静に状況を見据えていることがわかります。
思えば福原遷都の時に「京都は廃墟のようになる」と零していた場面でも、それが現れていましたね。
個人的に今作の資盛がここまで冷静に物事を視られるのは、第1話~2話で経験した殿下乗合事件(でんかのりあいじけん)が影響している気がしなくもありません。
平家絶頂期の中、資盛は重盛から真っ当に罰を与えられたことで、自分を取り巻く状況や平家を巡る感情に敏くなったのではないでしょうか。
資盛にとってはほろ苦い失敗ですが、絶頂期の中でちゃんと失敗できたことが、今の彼の人格形成に大きく影響した気がします。
ただ、「先が見えたって何もできない」という発言は良くも悪くも状況を分かり過ぎていますね…。
個人的に、この台詞をいう資盛は病没する前の重盛を連想させました。
第4話の記事でも触れましたが、今わの際で重盛はびわに平家滅亡を半ば認めているような発言をしていました。
この時の重盛を僕は「諦め」の中にいたと書きましたが、これと同じような感情を資盛は持っているのかもしれません。
つまり、この時点で資盛は平家の滅亡を心のどこかで悟っていたのではないでしょうか。
清盛という主柱を喪い、四面楚歌となってしまった状況で最早平家に打つ手はない。
だから資盛は「先が見えたって何もできない」といい、滅びゆく平家の一族に巻き込ませないために、びわを追い出したのでしょう。
平家の一族に巻き込んだことをびわに詫びていた重盛の跡を継ぐように。
だとしたら…資盛の心中を考えるとかなり切ないですね。
憎まれ口を叩き合いながらも、なんやかんやでびわと資盛は一番よく絡んでいましたし、恐らく一番分かり合っていたのでしょう。
だからびわも、笑顔で資盛に従ったのではないでしょうか。
びわの行く末
終盤でびわは資盛に言われた通り平家から出て行くことになりますが、この前後が印象的だったので掘り下げてみましょう。
重盛は語らない
今回は台詞なしとはいえ、久々に重盛が登場しましたが、微笑むばかりで、いくらびわが尋ねても何も語りませんでした。
この時の重盛(の霊)の心中は察するしかないですが、ここには最近のびわの行動が絡んでいる気がします。
思えば、最近のびわは未来視を全くしていないんですよね。
元々びわは未来(さき)が見えることが怖いと言っていましたが、そのためか最近のびわは霊視=過去視ばかりをしています。
今回の重盛を視ている様からして、どこか過去にすがっている感じがしますよね。
まぁびわもびわで、様々な人間が命を落とし、平家を取り巻く状況が悪化していることから、維盛のように動揺しているところもあるのでしょう。
それを差し引いても、びわが本格的に迫っている平家滅亡の未来を恐れていることは窺えます。
もしかしたら重盛がそんなびわを見て何も語らないのは、あの問いが関係しているのかもしれません。
「びわは、赦したか?」
滅亡の未来へ着実に時を進める世界を、それでも赦せるか。
重盛の問いは残酷かもしれませんが、徳子のように世界を赦しながら懸命に生きる道はあります。
もしかしたら重盛は、びわにそのことを気づかせたいのかもしれません。
化け猫は野良猫へ
終盤でびわは資盛の言う通り平家から出て行くことになりました。
これからびわがどうなるかは次回を待つしかありませんが…。
ところで、前回の感想でも触れましたが、びわが出会ったあの猫は何なんでしょうね…。
弾き語りをする大人のびわを彷彿とさせる外見に加え、思った以上にびわと分かり合っている感じがする…。
出て行ったびわがわざわざ連れ出しているところを見ると、今後も重要な立ち回りを見せる可能性が高そうですね。
tips:治承・寿永の乱
さて、今回は治承・寿永の乱…俗にいう「源平合戦」を掘り下げてみましょう。
歴史の教科書にも出てくる治承・寿永の乱ですが、そのスタートは以仁王(もちひとおう)の乱とされています。
皇族である以仁王が令旨を出したことにより、平家を討つ大義名分が生まれた結果、日本全国で反平家の勢力が次々と決起するわけですね。
一般的には頼朝や義経、義仲が有名ですが、今回のエピソードでも触れていたように、この時期で決起した反平家勢力は日本のあちこちにいます。
頼朝達がいる東国はもちろん、東海や中部地方、あげくには中国地方や九州でも反平家勢力が立ち上がるなど、文字通り平家は四面楚歌に陥るわけです。
他方で、治承・寿永の乱は単純に源氏VS平家という構図に留められるわけではありません。
代表例でいうなら頼朝+義経VS義仲がそうですが、実は治承・寿永の乱の過程では源氏同士の戦いも何度も勃発しています。
おまけに頼朝にいたっては義仲だけでなく、佐竹氏や足利氏、志田氏など同じ反平家勢力と衝突して滅ぼしています。
つまり治承・寿永の乱は単純に平家の排除だけでなく、その後釜を狙う者達同士でのつぶし合いも起こっていたわけですね。
治承・寿永の乱は日本で最初に起こった全国的な内乱といわれていますが、個人的にこの戦いは平家を排除する単純なものではなく、平家を潰した後に主導権を握れるように、有力な勢力が互いに潰し合う、まさに蟲毒のような戦いだと思っています。
『平家物語』第7話感想
個人的に清盛ってやっぱり嫌いじゃないんですよね(笑)
今作の清盛は原典の平家物語に近い感じで描かれていますが、それとなく子供達と理解し合えない父親みたいな感じも出ていて…それとなく悲哀を感じさせます。
徳子もなぁ…。
彼女なりに高倉上皇のことに整理をつけて、前向きに健気に生きようとしていることはわかりますけど、それがかえって悲劇性を増しちゃっている気が…。
おまけに義仲が決起したわけですから、いよいよ都落ちが迫ってきますね。
加えてタイミング的にそろそろ義経も出てくるかな…。
有名人が目白押しになりそうですけど…そろそろ本格的に平家ヤバいんですよねぇ…。
何はともあれ、次回も楽しみにしましょう。
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