皆々様こんにちは。
『機動戦士ガンダム 水星の魔女(以下『水星の魔女』)』担当のgatoです。
前回はスレッタとエリクトが激闘を繰り広げる中、ミオリネや5号達がクワイエット・ゼロを停止。
しかし宇宙議会連合が起動したILTSの巨大レーザーを防いだために、エリクトが操るエアリアルが大破。
戦いが終息する中、スレッタはどうプロスペラと向き合うのか…。
いよいよ『水星の魔女』最終話、じっくり振り返りましょう。
決戦

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まずは簡単に宇宙議会連合とミオリネのカウンターについて振り返りましょう。
守護者の暴走

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民間人がいるにも関わらずILTSをぶっ放しただけでは飽き足らず、宇宙議会連合は再度ILTSを充填するだけでなく、MS部隊を派遣するなど構成の手を緩めませんでした。
ここまで暴走しておきながら「守護者」を自称する様には、艦隊を率いていた艦長もうんざりした表情を見せていました。
身内のフェンやグストンが警戒していただけあって宇宙議会連合の強硬派はかなりヤバい連中だということがよく伝わる場面でしたね。
というか、作中では搾取するスペーシアンVS搾取されるアーシアンの対立構図がメインでしたが、よくよく考えるとスペーシアン同士でも武力を使った争いが起こる火種があることがわかります。
辺境の地扱いされ、過酷な環境で大勢の人々が労働させられているという水星もそうですが、スペーシアン同士でもかなりえぐめな格差があることは元々描写されていましたからね。
ルブリス・ウルやソーン、ガンヴォルヴァ、ILTSだけでなく、宇宙議会連合が密かに用意していた兵器はまだまだあるのかもしれません。
幕引きをするなら

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宇宙議会連合の魔の手が迫る中、ミオリネが取った行動は相変わらず大胆なものでした。
なんとミオリネの奇策は標的になっているベネリットグループを解散させ、宇宙議会連合の目的そのものを失してしまうというもの。
一時的とはいえ会社を倒産させて全員解雇…みたいな手法ですね(笑)
ただし、事態の悪化を招いたことへの責任を取ると同時に、復興特需を狙って宇宙議会連合と結託したペイル社にも一矢報いれると考えると、なかなか冴えたやり方といえるでしょう。
まぁ地球への資産売却がトントン拍子で進んでいたところを見ると、恐らく第22話の記事で書いたシャディクとの取引はこれに関するものでしょう。
個人的にはもっと軍事的なフォローかと思っていましたが、シャディクを通じてナジ達に資産の売却先とつなげてもらう…といった具合でしょうか。
この取引、一見すると急場しのぎに見えますが、結果的にベネリットグループ全体の資産売却が実現したことで地球を復興を援助しているので、シャディクの目的も半分達成しているようなものです。
まさに「地球と宇宙の架け橋」を実現する糸口にもできる一手といえるでしょう。
それにしても、ミオリネに出し抜かれたペイル社のCEO4人組の顔は秀逸でしたね(笑)
エピローグでは派手な格好をしたおばちゃんになっていましたが…あれはあれで様になっている気がします(笑)
エリクトのいない世界で

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ここではプロスペラについて振り返ってみましょう。
呪いを背負って

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プロスペラを説得するために大破したエアリアルと戻ってきたスレッタですが、彼女を迎えたプロスペラのある秘密が明らかにされました。
プロスペラはデータストーム汚染に侵されており、足が動かなくなっているとのこと。
思えば『PROLOGUE』の時点でデータストームにやられている人々の描写はありましたし、ヴァナディース機関在籍中はもちろん、壊滅後もエアリアル完成までGUND技術の開発に関わっていたことを踏まえると、深刻な状態になっていることは想像に難くありません。
恐らくあのマスクは体に流入するデータストームを制御するフィルターのような役目を果たしていたと思われます。
しかし、作中でのちょこちょこ描写されていたように、プロスペラはエアリアルと常時リンクしていたような感じなので、結局悪化を止められてはいなかったのでしょう。
それでもプロスペラが先頭に立ち続けていたのはエリクトのためなのでしょうが…スレッタがデータストーム汚染に相当苦しんでいたことを踏まえると、プロスペラはそれ以上の負担がかかっていたと考えられます。
プロスペラについてはこの後詳しく述べますが、ヴァナディース事変で歪んでしまった彼女は呪いそのものであると同時に、ある意味作中の誰よりも呪いを背負っていた人物といえるかもしれませんね。
復讐より未来を

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終盤ではスレッタによって巨大なデータストームが拡散する中、プロスペラはヴァナディース事変で失ったナディムやカルド達と再会し、スレッタやエリクトと言葉を交わしました。
ここでは初めて彼女の本音がわかります。
プロスペラはヴァナディース事変で夫、恩師、仲間を喪い、エリクトを喪うことを恐れていました。
喪失の恐怖がプロスペラの行動の根源だったわけですね。
第13話の記事以降、プロスペラの行動においてイマイチ復讐が徹底されているように感じないのはそのためだったのか…。
当然ながら、プロスペラの行いは決して正しいものではありません。
クイン・ハーバーでの事件はもちろん、クワイエット・ゼロの起動によって多数のフロントを危機に晒し、大勢の人間の命を奪いました。
しかし、シーズン2でのプロスペラの行動はそもそもデリングが不在だったうえで行われたものであり、そしてデリングの不在は彼女が関知していないシャディクやフォルドの夜明けが原因によるものです。
つまりデリングが健在だったら、プロスぺラの計画はもっと穏便な形で行われた可能性がありそうですね。
もちろんミオリネを前にいったように、プロスペラ自身はヴァナディース事変を引き起こしたデリング達への憎悪を忘れてはいないでしょう。
しかしその憎悪よりも、復讐よりもプロスペラはエリクトが幸せに生きられる世界を、未来の実現を優先していました。
だからこそ、プロスペラは本来なら仇敵であるべきデリングと手を組めたのでしょう。
歪んでこそいたものの、プロスペラは最後まで復讐よりもエリクトの生還に心血を注いでいたといえるでしょうね。
他方で、プロスペラは人の命を奪うこと以外にも1つ大きな間違いを犯していました。
それはプロスペラが自身の生存を考えていないという点です。
先述したようにデータストーム汚染によって体に限界が近づいているため、プロスペラはすでに自分自身に見切りをつけていたのでしょう。
エリクト自身もそれを理解しており、だからプロスペラを止めなかったのかもしれません(自分のせいという罪悪感もあったのでしょう)。
だからプロスペラは終始「エリクトと幸せに生きる世界」ではなく、「エリクトが幸せに生きる世界」を望んでいました。
この時点で、恐らくプロスペラはエリクトと別れることも覚悟していたはずです。
しかし、いやだからこそ、プロスペラが最後の最後で計画を諦めたのでしょう。
愛する娘であるスレッタが、そしてエリクトが「生きてほしい」と願ったから。
失われた者は来りて

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ここでは再登場したキャラクター達に触れてみましょう。
再会の4号

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個人的に、いや恐らく大勢の視聴者が今回のエピソードで最も嬉しかったシーンといえば…。
そうです、4号の復活です。
本当によかった!(笑)
第14話の記事から4号が何らかの形で再登場する可能性には触れていましたが…。
一度は諦めていましたが、やっぱり復活してくれましたね(笑)
知らないところでお別れになってしまったスレッタが4号と言葉を交わす場面は…胸を打つものがありましたね。
そんな4号ですが、クワイエット・ゼロにオルガノイド・アーカイブが内蔵されているため、エリクトと同じように生体コードだけの存在になっているとのこと。
オルガノイド(人工細胞で作ったミニチュア臓器の意)・アーカイブが一体何なのかはさっぱりですが(笑)、もしかしたらこの復活にはベルメリアが絡んでいるのかもしれませんね。
プロスペラに協力させられていたベルメリアが、ペイル社にあった強化人士のオルガノイド・アーカイブを提供した…という筋道が成立しますし。
ただ、この後の描写も踏まえると、4号の復活の原理はそれだけではない印象がありますが…そこは後述します。
何はともあれ、復活した4号はスレッタを導き、事態の収束につながりました。
というか、前回のエリクトとスレッタの戦いで干渉したのは間違いなく4号でしょうね(笑)
ミオリネには悪いですが…スレッタの「初恋」が良い形で結末を迎えたといえるでしょう。
魂は巡り会う

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いやー4号の復活にも驚かされましたが、ほかにも驚かされたことといえば、ナディムやカルドといったヴァナディース事変で命を落とした者達や、ソフィとノレアが復活した点です。
前回の記事で書いたことがはまるとはなぁ…。
となると、GUND技術の捉え方が少し変わりますね。
これまでGUND技術は『PROLOGUE』で解説されたように身体拡張技術として捉えてきましたが、エリクトとエアリアルの一体化をきっかけに、「魂の定着」を実現する技術という側面を見せています。
これ自体はこれまでも第6話の記事などで触れてきました。
事実、前回の記事で触れたように復活していたのは過去にGUND技術に関わっていた者や、ガンダムのパイロットをしていたキャラクターばかりです。
いずれも4号のように生体コードを何らかの形で内蔵していた、あるいは記録されていたと捉えるべきなのでしょうが、いささかオカルトな表現をするなら、ガンダムは「魂の依り代となるもの」と表現するべきでしょう。
…となると、第14話の記事で書いたように本当に『NT』が伏線になるんですけどね(笑)
ただ、「魂と交信し、実体化を可能とする技術」だとそのまま『NT』になっちゃうので、個人的にもう一捻り解釈に手を入れたいところです。
となると、重要なのはミオリネが宇宙議会連合と通信していた場面でしょう。
敵味方問わず通信ができるうえに受信側の意思で切断できない…これは第11話の記事でも触れたように『PROLOGUE』でエリクトがナディムにハッピーバースデーを歌う場面を彷彿とさせます。
これ自体はGUND技術のオーバーライドによる影響であり、パーメットリンクをハックしているからこそできる現象です。
あくまでGUND技術の本質は魂の定着と実体化であり、オーバーライドはあくまで副次的なものと考えるべきところですが…あえてこの2つを組み合わせて意訳するなら…。
GUND技術の本質は想いの伝播ではないでしょうか。
パイロットの、故人の、そしてGUND技術に関わる者達の想いを、あらゆる障害を乗り越えて届ける。
破壊でも支配でもなく、喪われていく想いを届けることこそが…GUND技術の至るべき極地なのかもしれません。
水星の魔女

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ここではスレッタとエリクトについてまとめてみましょう。
「違うよ」

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個人的に印象的だったのが、エアリアルを連れてきたスレッタがプロスペラにクワイエット・ゼロ再起動を拒否する場面でした。
第16話の記事でも触れましたが、かつてのスレッタはプロスペラに依存しており、彼女のためなら夢を諦めるとさえ発言しています。
そんなスレッタが恐らく作中で初めてプロスペラの頼みを拒否…いうなれば「反抗」したわけです。
ただし、間違えてならないのはスレッタは決してプロスペラの想いを否定しているわけではない点です。
もちろんクワイエット・ゼロで多くのフロントを巻き込むプロスペラの計画自体は阻止しますが、スレッタはエリクトを想うプロスペラの気持ちを一切否定しない。
それどころかエリクトを想うプロスペラの気持ちを肯定し、またプロスペラを失いたくないエリクトの気持ちも汲んでいます。
つまりスレッタの振る舞いはプロスペラに対する「反抗」だけでなく、プロスペラやエリクトの想いを「肯定」するという別の意味合いを含んでいるわけです。
これまで大切な人に依存し、自立した行動がとれなかったスレッタですが、今回のエピソードで改めてその成長ぶりを実感させられましたね。
ただ自立し、自分で考えて行動するだけではなく、現実を見据えながらも誰かを犠牲にしたり否定したりしない「一番いいやり方」を見つけようとする。
強くもなりながらも、優しさを失わない今のスレッタが一番好きかもしれません(笑)
選んだからこそ

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スレッタの呼びかけに応えた際、エリクトやカヴンの子達は「選べるのにそれでいいの?」と問いかけていました。
ここにエリクトの本音があるように感じましたね。
振り返れば、過酷な宇宙環境に耐えられないためにエリクトはプロスペラの手によってエアリアルと一体化しました。
エリクトがそれを望んだかはさておき、生存を優先するなら選択肢はそれしかないから仕方ないことです。
この時から、エリクトは生存と引き換えに自由を奪われてしまった状態になってしまったといえるでしょう。
魂は存在していても、パーメットスコアを引き上げなければ実体化できず、プロスペラの行為を止めることもできない。
何よりガンダムになってしまった以上、GUND技術を嫌悪する世界と対峙する道を進むことしかできない。
そんなエリクトにとって、戦いとは無縁で、優しい人達がいる場所を選べたスレッタはうらやましくあると同時に、大切にしてほしいと願っていたのでしょう。
だからエリクトはスレッタを突き放したといえます。
スレッタを巻き込みたくないと同時に、自分で選べる選択肢を大切にしてほしいために。
そう考えると、エリクトはちゃんとスレッタに対して「お姉さん」をしていたといえそうですね。
しかし、スレッタはエリクトの想いを受けつつも、プロスペラや大切な人達を守る道を選びます。
他ならぬ、選べるからこそ進める道を選んだ。
思えば、「エリィを想えばあなたも進めるでしょ?」とスレッタを説得したプロスペラの言葉は第12話でのやり取りを彷彿とさせます。
この時スレッタはただプロスペラに従うままでしたが、今回のスレッタは自分の想いを明示したうえで進む道を選ぶ姿勢を見せました。
ただ進むだけではなく、ただ逃げるだけでもなく、たとえ何も手に入らない可能性があっても、自分で選んだ道を進む。
スレッタにとって大切なおまじないでもあり、時に呪いとなっていた「逃げれば1つ、進めば2つ」に対し、スレッタはちゃんと自分の答えを提示できるようになったことがわかります。
すべては光となって

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スレッタがパーメットスコアを最大限まで上昇させた結果、キャリバーンとエアリアルだけでなく、ファラクトとシュヴァルゼッテも起動し、それぞれのガンダムが力を合わせたことでILTSはオーバライドによって停止し、戦局は終焉を迎えます。
しかしそれとは引き換えに、全てのガンダムはクワイエット・ゼロごと粒子化して消滅してしまいました。
ガンダムの粒子化は『OO』でも行われていましたが、まさかクワイエット・ゼロごと粒子化するとは…ちょっと圧巻でしたね(笑)
ただし、今作におけるガンダムの消滅は意義深いものを感じます。
そもそも『水星の魔女』におけるガンダムは禁忌の機体であり、呪いそのものであり…敵対する人間だけでなく、パイロットの命も奪ってきてました。
何よりガンダムはGUND技術を兵器に転用した産物であり、GUNDの理念においても誤った存在といわざるを得ません。
しかしすぐれた兵器であるために、ガンダムは多くの人間が目的を果たすために利用されてきました。
さきほど述べたようにGUND技術の本質が「想いの伝播」であるなら、ガンダムもある意味その目的を果たしていたといえます。
ソフィやノレア、5号、ラウダはその典型例でしょう。
届かない、成就しない想いを失わないために、守るための剣となる…たとえ歪んでいても、ガンダムはGUND技術の本質を完全に喪っていなかったといえるでしょう。
しかし、兵器として運用されてしまう以上、結局ガンダムは新たな呪いと罪をばら撒くことになります。
これを踏まえると、作中の世界において、やはりガンダムはあってはならないものといわざるを得ません。
他方で、今回のエピソードはそんなガンダムの呪いを払拭するようなものだと感じました。
最後にガンダムをフル活用したスレッタは一切人を傷つけず、全ての兵器を無力化しました。
その結果、ミオリネを始めとする大勢の人間の命を救っています。
これまで命を奪う形でしか『想いの伝播』を実現できなかったガンダムが、初めて命を守る形で『想いの伝播』を実現したわけです。
最終的にガンダムはGUND技術の根底にある「人の命を救う」という理念を見事に体現したといえるでしょう。
これまで呪いとして忌み嫌われきたガンダムですが…これで少しは報われたかもしれませんね。
魂を導く者

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さて、最後に『ガンダム』シリーズと照らし合わせながらスレッタを総括しましょう。
最後のスレッタの戦いぶりは誰も傷つけず、ミオリネの想いを届け、戦いを終局に導くものでした。
データストームの耐性を持っていないにも関わらず、エリクトと分かり合い、ガンダムの性能を極限まで引き出したスレッタの頑張りは、なるほど『ガンダム』シリーズの主人公らしいといえるでしょう。
しかし、スレッタの「『ガンダム』シリーズの主人公らしさ」は、別の形でも現れていたと感じました。
それは「魂を導く者」という一面です。
エリクトの正体が判明して以降、スレッタはほとんど故人も同然であるエリクトや4号と対話し、彼らの想いを受け、自らの力としています。
オカルトじみた表現でいうなら、スレッタはある意味シャーマンのような存在になっていたわけですね。
これは『ガンダム』シリーズで度々扱われてきた「ニュータイプ」と重なる一面があります。
『ガンダム』シリーズにおけるニュータイプは様々な解釈がされていますが、今回は「魂と対話する・意思を力にする」という系統のニュータイプが使われている印象です。
このタイプのニュータイプの代表例は『Z』の主人公であるカミーユ・ビダンでしょう。
カミーユはラストでパプテマス・シロッコを倒すために多くの魂をその身に宿して力としていますが、これもある意味シャーマン的な存在になっているといえます。
このような描写は『ZZ』や度々引き合いに出している『NT』などにもありますね。
このスレッタのニュータイプ的な一面はGUND技術と通ずるものがあります。
GUND技術が人々の想いを伝播させる役目を担い、スレッタがそれを通じて対話する。
ガンダムを駆り、その能力と自身の素養を組み合わせることによる、スレッタはある意味ニュータイプの域に達したといえるでしょう。
ただし、スレッタがこれまでの『ガンダム』の主人公と違う点は、魂を別の器に移すことができたという点です。
終盤でスレッタがエリクトを人形に移したことが明らかになりましたが、僕の記憶にある限り魂を別の場所に移すなんて行為はどのシリーズの主人公でもやったことがないような…。
地味にとんでもないことをやっちゃっている気がしますね(笑)
そして忘れてならないのは、エリクトもまた魂を導く役割を果たしていたという点です。
前回のデータストームに干渉をしかけた者(恐らく4号)に対し、エリクトは「願いが叶うのに」と口にしてました。
もしかしたらエリクトはプロスペラだけでなく、4号達のためにも戦っていたのかもしれません。
不条理な暴力や誰かが押しつけた呪いによって悲しい最期を遂げた者達が報われるようにしたい…。
そんな想いを抱えていたからこそ、エリクトはプロスペラの行いを間違いとわかりつつも、クワイエット・ゼロに積極的に協力していたのでしょう。
3年後

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さて、ここではエピローグを順番に振り返っていきましょう。
学園は終わらない

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まずは地球寮の面々から。
髪型を変えたニカはマルタンへの宣言通りに学園に復帰し、株式会社ガンダムと掛け持ちしながら通っていることが窺えます。
スレッタやミオリネはもちろん、株式会社ガンダムの面々とは変わらず交流しているようですね。
そんな中でも個人的に意外だったのが、ロウジがチュチュと働いていたという点です。
正直ロウジはセセリアについていくものとばかり思っていたのですが、恐らくGUND技術への興味を優先したといったところでしょうか。
それにあれだけコミュ障だったのにチュチュに皮肉を返せるくらいになっているところを見ると、人見知りも幾分改善されているようですね。
というか、22話の記事でも触れたように、やっぱりセセリアはこれを狙ってロウジを株式会社ガンダムに参加させたのでしょうかね。
いずれにせよ、地球寮のみんなが変わらず前向きに生きている様は、ちょっとほっこりしました(笑)
踏み出す者達

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ここでは5号とラウダを見ていきましょう。
5号はノレアが絵に残した場所を探す旅に出ていたようです。
場所が記されてなかったために3年経ってもなかなか見つけられていないようですが、悪態を吐きながらも懸命に捜す5号はなんやかんやで一途にノレアを想っていることがわかりますね。
他方でラウダは無事に復帰したペトラと共に生きる道を進んでいるようです。
両足こそ失ったものの、ペトラと共に生きる道を選んだラウダは「兄さんに頼ってられない」と独り立ちをすることを宣言しています。
第21話の記事などで書きましたが、ラウダはよくもわるくもグエルを大切にしているあまり暴走するところがありましたが…。
グエルと分かり合ってからは、出撃するスレッタを見送るなど、グエルの大切な人を尊重するようになっていました。
また、ペトラと生きる道を選んだところを見ると、無理にジェターク社のことを抱え込なくなったようですね。
5号もラウダも、いろいろ大変な道を選びましたが、それぞれ大切な人のために生きる道を選べてよかったです。
終わらない償い

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個人的に一番エピローグで印象的だったのはシャディクでした。
反乱を起こしたために収監され、公判を受けているシャディクですが、なんと嘘を吐いてクワイエット・ゼロの罪を背負ったとのこと。
それも「自分で決めた」と語っているシャディクですが…ここには彼らしさを感じますね。
第9話の記事で書いたように、シャディクは相手を想っていながらも、距離を縮めることを避けるヤマアラシでした。
しかしグエルとの戦いで怒りをぶつけるなど、シャディクは敵対しても変わらずミオリネを想っていました。
今回のシャディクの行動は、その想いの表れかもしれません。
これからもクイン・ハーバーでの償いのために世界と向き合い続けるミオリネが少しでも前に進みやすくなるように、彼女の大切な人であるスレッタと幸せに生きられるように。
シャディクが全ての罪を背負ったのは、彼なりの愛の証であり、別れていくミオリネへのはなむけかもしれません。
だからこそ、シャディクは別れ際に「さようなら」といったのでしょうね。
そして大人になっていく

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改めてジェターク社のCEOとして頑張っているグエルですが…なんとちゃっかりペイル社を辞めていたオリジナルと、彼の秘書的なポジションに収まっていたセセリアと商談をしていました。
さりげなく「ケレスさん」と呼んでいるところを見ると、グエルは彼が4号でもなければ5号でもないことを理解したうえで接しているようですね。
とはいえオリジナルの奴ちゃっかりしてるなぁ…。
ベネリットグループが崩壊したと見るやすぐに辞表をニューゲン達に叩きつけてヘッドハンティングに乗るなど、すぐにペイル社から離れた彼ですが、去り際にペイルグレードの下での飼いゴロしにうんざりしていたことを示唆していました。
オリジナルは第7話で株式会社ガンダムの設立を宣言したミオリネに感心していた素振りを見せていましたが、内心ミオリネのように独立することに憧れがあったのかもしれません。
オリジナルからしたら、ベネリットグループの解散はやっと自分の好きな道へ進むきっかけだったのでしょうね。
これはセセリアにも同じことがいえるかもしれません。
しかし性格の悪さに定評があるオリジナルとドSなセセリアがビジネスの相手とは…グエルの今後が思いやられますね(笑)
そんなセセリアですが、御三家がいなくなってからも最後まで決闘委員会の仕事を全うし、クワイエット・ゼロが起動した際は事態の打開のために積極的に協力するなど、意外と責任感が強い一面が窺えます。
というか、自責の念に苦しむマルタンの背中を押したり、そもそもコミュ障でにきょどりやすいロウジをいじめずに傍に置いていたところを見ると、面倒見のいい一面があるのでしょう。
実際オリジナルの代わりに書類を作ったりと、意外と真面目に仕事していましたしね(笑)
オリジナルもセセリアもあまり出番はありませんでしたが、彼らの個性がちゃんと活きる道を選べているようです。
それでも変わらぬ世界で

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基本的に大団円で終わっている本作ですが、不穏な気配は変わらず残されていました。
ミオリネの英断で地球の経済は幾分回復したものの、作中の世界を支配している経済構造は完全に変わったわけではありません。
依然としてスペーシアンによるアーシアンの搾取は続いており、GUND技術への反感の声も残っていました。
ミオリネは愚直に対話を通じて解決を図っているようですが…今後も何か起こる気配はありそうです。
ただし、全く希望がないわけでもありません。
作中でさりげなく地球に新設の軌道エレベーターが作られたことが描写されていましたが、この時点で地球への往来が増えたことが示唆されています。
宇宙と地球の交流が以前より盛んになっているといえそうですね。
それに、フォルドの夜明けが囲っていた孤児が学校に通っているところを見ると、以前より復興が進んでいることがわかります。
小さいことですが、それでもアーシアンを巡る環境は少しずつよくなっていると思いたいですね。
また、デリングやサリウスが再び表舞台に立っているところも描かれていました。
GUND技術を巡る考えこそ一致していなかった2人ですが、再び手を取り合っていることが窺えます。
元々ヴィムやニューゲン達と違い、世界の行く末を考えて行動していた2人がどのように世界を動かしていくかにも、個人的には注目したいですね。
姑と小姑

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ここではエリクトとプロスペラのその後を見ていきましょう。
さきほども述べたようにエリクトは人形に生体コードを移し替えたことによって無事に生存。
ミオリネに小言を振りまく小姑の役目をしっかり全うしていました(笑)
エリクトって意外と口数が多いうえに口が悪いんですね(笑)
ただ、小言をいいながらも、ミオリネやスレッタの選択を尊重し、しっかり見守っているようです。
というか、エリクトが「僕たち」といっていたところを見ると、もしかしたら4号とかもあの人形の中に入っているのかもしれません。
まぁパーメットスコアを極限まで引き上げたスレッタですから、それくらいのチートはやってのけてもね(笑)
一方で、エピローグのプロスペラはセリフこそなかったですが、白髪増え、穏やかな表情を浮かべ、車いすに終始座っているなど、かなり様変わりしていました。
シャディクがクワイエット・ゼロの罪を全て引き受けたおかげで、無罪放免とはいかなくても、穏やかな余生を過ごせるようになったようですね。
まぁエリクトのためとはいえ、一見何の罰も受けていない様子に疑問符を浮かべる方も多いと思いますが…個人的にプロスペラはもう罰を受けているような気もします。
車いすに乗っていたところを見ると、データストーム汚染により、3年間でもう立って歩くことはできなくなっているのでしょう。
夕方にも関わらず眠っているような様子があったことを踏まえると、体力もかなり落ちているのかもしれません。
穏やかでこそありますが、もう人間らしい生活はできない体になっていると見るべきでしょうね。
それはそれで『V』のカテジナのような感じもしますが…愛する娘と静かに生きられる分、彼女よりマシでしょう。
いささか甘いですけど、奪われてばかりの人生を送ってきたプロスペラ…いえ、エレノア・サマヤが、やっと幸福を手に入れたと…今は思いたいですね。
目一杯の祝福を君に

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それでは最後にスレッタとミオリネについて総括しましょう。
数ある正しさの中で

© 創通・サンライズ・MBS
戦いが終わった後も、ミオリネは先頭に立って地球の復興を進めていました。
クイン・ハーバーでのトラウマを払拭できたようですが、何よりもミオリネの成長を感じたのが、彼女が「さまざまな正しさを肯定している」という点です。
第8話の記事でも指摘しましたが、そもそもミオリネは共感性に欠けるところがありました。
ミオリネは勝ち気で自己中心的な一面こそありますが、機転も知恵もあり、基本的には正しい判断ができる人間です。
一方で正しい判断ができるからこそ、周囲の人間を遠ざけたり、誤解させてしまうところがありました。
また、自分に課せられた責任や使命をちゃんと理解しているが故に、その重さや失敗に苦しむところも。
この辺りは父親のデリングとそっくりなんですが(笑)、それがスレッタを傷つけてしまうこともありましたね。
しかし今のミオリネは、対立するアーシアンと率先して対話するなど、誰かの正しさを認め、向き合う度量を手に入れています。
そして何よりも、依然変わらず火種を抱え続ける世界と向き合う重圧を背負い続けられるのは、共に歩いてくれる大切な人を見つけたからでしょう。
ミオリネとスレッタの左手の薬指に輝く指輪は…まさにその証です。
ところで、余談ですが、ミオリネが盆の窪の辺りにエリクトと会話するために使うと思しきデバイスが装着されていました。
恐らくプロスペラのヘルメットに近いもの(データストームの存在に接続するもの?)と思われますが、似たようなものをオルコットがつけていましたね。
もしかしたら3年の間にGUND技術でちょっと体を改造したのかな…?
さりげなく描写されていましたが、地味に気になる(笑)
それはとてもささやかな

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さて、やはり主人公なので最後はスレッタで締めましょう。
激戦を乗り越え、データストーム汚染の後遺症が残ったスレッタですが、徐々に回復しつつありようです。
またミオリネのセリフ(「こっちにも学校を作るの?」)を踏まえると、夢の1つだった「水星に学校を作る」はもう達成したようですね。
そして次は地球に学校を作るという夢に向かっているようです。
思えば、スレッタはプロスペラやミオリネに依存するあまり、自分の意思で進めない人間になっていました。
そんなスレッタが自分の意思で道を選び、たとえ何も手に入らないリスクがあっても、一番いいやり方を諦めずに考え続ける「進む人」になれたことは…感慨深いものがあります。
ただ、今回のエピソードを見ていると、スレッタはまた別の特性があるようにも感じます。
終盤のスレッタがやったことは、罪悪感に打ちひしがれたミオリネを励まし、自分を突き放し続けるプロスペラやエリクトとめげずに向き合い、その在り方を肯定することでした。
そんなスレッタの行為を僕なりの言葉でまとめるなら、「好きだという想いを届けて閉鎖的になった相手を肯定し、心を解放する」といった具合でしょうか。
そうです、スレッタは自分の考えや主張を押し通すのではなく、かといって間違いを正すために戦うのではなく、最後まで「大切な人が生きられるようにするため」に戦っていたわけです。
過去や罪悪感に苦しむ大切な人が、生きることを諦めないように手を伸ばし、背中を押す…。
これこそが、スレッタが持つもう一つの特性だと思います。
そんなスレッタの特性をそれっぽく一言で表すなら…「祝福する人」がベストではないでしょうか。
未回収の伏線・続編の可能性

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さて、こんなに長く書いてあれですが、お約束なので未回収の伏線や続編の可能性は触れておきましょう(笑)
未回収の伏線

© 創通・サンライズ・MBS
未回収の伏線は…ほぼないですね(笑)
しいていうなら最後まで水星の描写が全く出ていないというところでしょうか。
デリングとプロスペラがどのように接触してクワイエット・ゼロ実現に協力する過程も描かれていないですし、まだまだ掘り下げられるところはある印象です。
まぁこの辺りは外伝やスピンオフ、小説版で回収される気がします。
続編の可能性

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続編の可能性ですが…ちょっと迷いますね。
確かにスレッタとミオリネの物語は大団円を迎えましたが、肝心の世界情勢はさほど変わっていません。
もちろん『ガンダム』シリーズにおいて、きれいな終わり方はお約束じゃないですが、結局ベネリットグループの内紛で終わった感じがあるので、あの世界観でまだまだやれる気がします。
まぁ確かにガンダムが全機消滅しちゃったので続編が作りづらい感じはありますが…。
でも、最終回をよく見ると、プロスペラの後ろにルブリスと思しきがガンダムがいるんですよね。
まぁクワイエット・ゼロと一緒に消滅した可能性は高いですが…それだけでなく鹵獲されたと思しきウルとソーンもいます。
そして消滅したのは(明確に描写されたのは)キャリバーン、エアリアル、ファラクト、シュヴァルゼッテの4機だけ。
つまりガンダムはまだいるっぽいから、続編をやる余地はあるかと(笑)
何よりも、「株式会社ガンダム」という「ガンダム」も残っていますからね(笑)
前作の『鉄血のオルフェンズ』もスマホゲームとはいえ、スピンオフが出ていますし、何らかの形で続編が制作される可能性はゼロではないと思います。
個人的にはせっかくガンダムが兵器ではない可能性を示したわけですし、今度はガンダムの可能性を開拓する物語を描いてほしいですね。
『水星の魔女』最終回感想

© 創通・サンライズ・MBS
多分このサイトで記事を書いてきた最長じゃないかな…。
触れたいところが多すぎて、とりとめのない文章に…。
お目汚しをお許しいただければ幸いです。
いやーでも、何はともあれ令和初のガンダム、約半年間堪能させていただきました。
賛否両論はあると思いますし、『ガンダム』シリーズファンには物足りなさを感じる人もいるかもしれませんが、及第点は取れているのではないでしょうか。
それでは、長々とお付き合いいただいた『水星の魔女』の記事もここまで。
またどこか、別の作品でお会いしましょう。
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コメント
アニメを見て、gatoさんの考察を読むまでがワンセットで毎週楽しみでした!!!
更新が遅い日はまだかまだかと何度リロードしたことか!!!
最終話で4号くんが再登場した時はこちらの記事が頭によぎりゾワッとしました!!!
お疲れ様でした!!!
別作の考察とても楽しみにしています!!!
うしやまさんコメントありがとうございます!
>アニメを見て、gatoさんの考察を読むまでがワンセットで毎週楽しみでした!!!
もったいないお言葉…ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。。
>更新が遅い日はまだかまだかと何度リロードしたことか!!!
それは本当に申し訳ございませんでした…。
ただ…文字数でお察しいただければ…(笑)
>最終話で4号くんが再登場した時はこちらの記事が頭によぎりゾワッとしました!!!
生体コード=魂の概念が出たくらいで可能性は感じていましたが、正直あきらめていたんですけどね(笑)
まぁ4号の復活は大勢の方が望んでいたことだと思いますし、実現して本当にうれしかったです。
>別作の考察とても楽しみにしています!!!
次は何をするかまだ未定ですが、またお付き合いいただければ幸いです!
先ほどプライムビデオで一気見して、こちらにお邪魔しました。
作品愛をとても感じられる素晴らしい考察でした!
本編で一度、こちらでもう一度感動いたしました。
ありがとうございました。
やんもさんコメントありがとうございます!
>作品愛をとても感じられる素晴らしい考察でした!
恐れ多いコメントをいただき、大変恐縮です…。
>本編で一度、こちらでもう一度感動いたしました。
大変もったいないお言葉です…ありがとうございます。
少しでも響く内容であれば幸いです。