皆々様明けましておめでとうございます。
『機動戦士ガンダム水星の魔女(以下『水星の魔女』)』担当のgatoです。
年明けをまたぐのは初めてなのでちょっと不思議な気分です(笑)
さて、前回はフォルドの夜明けがついにプラント・クエタを襲撃。
さまざまな思惑が巡る中、スレッタは地球の魔女と邂逅します。
謎と不穏が渦巻くファーストシーズン、一体どんなクライマックスを迎えるのか…。
じっくり振り返りましょう。
目次
戦争が始まる
まずはプラント・クエタでの戦いで気になる場面を掘り下げてみます。
地球のガンダム
前々回より登場したソフィとノレアが駆るルブリスソーンとルブリスウルですが、今回は本格的な戦闘シーンを見せてくれました。
第10話の記事で地球のガンダムがエアリアルと同等ではないかと推察しましたが…見事に外れましたね(笑)
普通に赤い紋様が発生していましたし、しっかりパイロットにも負担がかかっていました。
ファラクトと同程度の技術レベルということですかね。
他方で興味深かったのが、ソフィのセリフからアンチドートでガンダムを無力化できるのはパーメットスコア3までであり、スコアが4を超えると効果がなくなるという点です。
ここからわかることは二つ。
1つ目はドミニコス隊が使用しているアンチドートを無視できるだけ、パーメットスコアを引き上げる技術、あるいはスコアを引き上げることでパイロットにかかる負担を軽減できる技術が進歩していることです。
さらにドミニコス隊が対応できないところを見ると、水面下でGUNDフォーマットはしっかり進化を続けられており、監査組織であるカテドラルやドミニコス隊も把握できていなかったこともわかりますね。
まぁ世間的に禁止されていたはずのGUNDフォーマットが、水星どころかペイル社や地球が所有しているうえに、技術的に発展しているなんて、この段階で結構ザルなんだよな…。
そして二つ目は集団決闘でスレッタのエアリアルがアンチドートを無効化する場面がありましたが、あれはパーメットスコア4に匹敵する機能解放であることがわかります。
ただ、スレッタの場合はデータストームの流入により負担増加はないうえに、むしろエアリアルの方からアンチドートを機能停止に追いやっているような描写でした。
つまり、改めてエアリアルは既存のGUNDフォーマット技術とは一線を画していることになるわけです。
跡を濁す者達
個人的にプラント・クエタの守備隊とノレアが戦っている際のやり取りは印象的でした。
デスルターが条約違反の実弾兵器を使用しているのを見た守備隊は「宇宙を汚すな」と口にしている場面ですね。
また、ニカが実弾が浮いているのを見てアーシアンの部隊=フォルドの夜明けが来たことを薬莢を見てアーシアンだと判断するなど、「宇宙で平然と実弾を使うアーシアン」が強調されていた印象があります。
条約で禁止されるほど、実弾の使用によって宇宙を汚す行為が忌避されているのは、恐らくスペースデブリが絡んでいるのでしょう。
スペースデブリとは宇宙船の破片・宇宙飛行士が落とした工具・宇宙塵(微小な隕石)などの「宇宙ごみ」を指す言葉です。
一見するとただのごみ問題のように聞こえますが、スペースデブリはただ汚染するだけのごみ問題とは一線を画しています。
ネジのような小さい部品でも地球の周回上を秒速数kmという高速スピードで漂っているため、衝突すれば宇宙船やその設備に致命的なダメージを与え、乗組員の生命すらも脅かします(直径10cmのデブリで宇宙船がぶっ壊れるらしいです)。
おまけにデブリ同士が衝突して小さくなって分散するため、完全な回収は困難を極めます。
つまり宇宙船を吹っ飛ばす威力がある障害物が回収不可能なままどんどん増えていくことが、スペースデブリにまつわる問題の本質というわけですね。
恐らく守備隊がいった「宇宙を汚しやがって」は実弾を撃った際に排出される薬莢がデブリになることを危惧したものだったのでしょう。
まぁ破片を算出するミサイル兵器を使っているジェターク社のMSはどうなんだとも思いますが…実際スペーシアンが開発したMSはビーム兵器がメインでしたね。
つまり実弾を使用する・しないで、スペーシアンとアーシアンの宇宙に対する感覚の差異が現れているというわけです。
ちなみに、今作のシリーズ構成を担当している大河内一楼は過去にスペースデブリの回収屋が主人公の漫画が原作になっているアニメ『プラネテス』のシリーズ構成・脚本を担当していたことがあります。
フォルドの夜明けが『プラネテス』でも使われていた「コピー」という返答を使っていましたし、もし「宇宙を汚しやがって」がスペースデブリを絡めている発言なら、ちょっと面白いつながりですよね。
他方でノレアは撃墜した守備隊に対して「地球を汚して逃げたスペーシアン」と揶揄しています。
まだ今作ではスペーシアンとアーシアンの歴史は語られていませんが、作中の描写を見る限り、スペーシアンは反抗するアーシアンを地球で弾圧していました。
また、フォルドの夜明けのアジトが廃墟だったように、地球の都市は多くが廃墟になっているようです。
ここから、スペーシアンはアーシアンを労働力として搾取し、格差社会の底辺に追いやった挙句、地球をメチャクチャに汚して宇宙に住み着いている可能性が窺えますね。
だとしたら、ノレア達からしたら宇宙に実弾をばらまくなんて大したことではないんだろうな…。
ただ、個人的にちょっと面白いのが、今作におけるスペーシアンとアーシアンの関係性ですね。
宇宙世紀シリーズでは地球に住むアースノイドが富裕層の象徴であり、宇宙に住むスペースノイドは棄民政策で主権がないまま放り棄てられた弱者層として扱われていましたが、今作ではスペーシアンが富裕層の象徴であり、アーシアンが貧困層の象徴のように扱われています。
つまり過去のシリーズとは逆の構図で宇宙に住む人間と地球に住む人間を描いているわけですね。
1stシーズンではあまり掘り下げられませんでしたが、2ndシーズン以降でどのように掘り下げるか注目したいところです。
見られてはいけない
第9話でシャディクとの関係が、そして第10話でフォルドの夜明けと関係があることが明らかになったニカですが、今回はその正体が発覚する事態に陥りました。
地球寮の仲間達を守るためにノレアにコールサインを使ったところをマルタンに見られた場面ですね。
ただ、個人的に思ったのが、ニカはフォルドの夜明けの攻撃を知らされておらず、平然と巻き込まれた可能性があった点です。
ここから、フォルドの夜明けが実行する作戦が彼女には共有されていないことが窺えます。
てっきりニカはフォルドの夜明けの諜報員的なポジションかと思っていましたが、あの様子だとあくまでシャディク個人が使うスパイの域は出ていない印象がありますね。
実際ノレアはニカが出したコールサインを見てプリンス=シャディクの部下と判別していましたし、ニカ自身、ノレアやソフィと面識があるような雰囲気もない。
あくまでフォルドの夜明けとシャディクをつなぐ仲介役みたいな感じでしょうかね。
でもナジと話した後のシャディクがニカにナジのメッセージを伝えていたところを見ると、フォルドの夜明けともそれなりのつながりはある様子。
大方、昔はフォルドの夜明けの一員として活動していたけど、何かしらの理由で前線から外れた…って可能性もあるのかな…。
まぁ何はともあれ、これまで一枚岩だった地球寮のアーシアンの間に、えげつない亀裂が入りそうな予感があります。
親子達のこれから
さて、個人的に今作における重要なテーマの一つと考えている「親子」ですが、今回はさりげなく3つの親子関係が同時に描かれていました。
それぞれについて掘り下げてみましょう。
ジェターク家の場合
まずはグエルとヴィムのジェターク家ですが…今回一番最悪な展開になったのは、恐らくこの親子でしょうね。
この手でやるからこそ
シャディクに切り捨てられ、絶体絶命の窮地に追いやられたヴィムですが、なんと自らディランザ・ソルに乗って戦いに出るという気概を見せつけてきました。
いや、あんたそんな熱血漢じゃなかったよね?!(笑)
「自分の手でライバルを叩いてのし上がってきた」と語っていましたけど、ここまでプロスペラやシャディクの陰に隠れてこそこそやっていた印象が強いんだよなぁ…(笑)
まぁヴィムもデリングに負けず劣らずの徹底した結果主義者ですし、御三家の一人でもありますから、自分の力で道を切り開くだけの実力は持っていたのでしょう。
実際、グエルに厳しいだけあって、ヴィムのMSの扱いもそれなりのものでしたからね。
ただ、フォルドの夜明けがデスルターを使用していたことから、後述する凄惨な悲劇が訪れてしまうわけで…。
父を討つ
今回のエピソードの前半で起こった最大のイベントは間違いなくこれでしょう。
スレッタがいると聞いて思わずデスルターに乗って飛び出したグエルですが、ヴィムが乗るディランザ・ソルと遭遇。
敵だと誤認したヴィムに追いつめられたグエルは、思わず反撃してしまい、それが致命傷となってヴィムは命を落とします。
誤解があったとはいえ、子どもが実の父親を手にかけるという衝撃的な展開。
多くのファンと同じように、グエルのメンタルが心配されますね…。
そもそもヴィムの最期…ちょっとずるいですよね(笑)
これまでグエルを心配している素振りなんて全然なかったのに、今わの際で急に「無事だったか…」とか「捜したんだぞ…」とか。
急に父親っぽいこといわれたら…余計に傷になりますわな…。
というか、グエルが今の仕事をしていることをもしかしたらヴィムは知らなかったのですかね?
てっきりグエルはヴィムの指示通りに名前を変えて今の仕事をしていたのかと思ったのですが、だったら「無事だったか」とか「捜したんだぞ」って言わないですよね。
だとしたら、グエルは自分の意志で名前を変えて退学したうえにジェターク家を出ていったことになります。
なるほど、だからラウダ達も行方を知らなかったのか…。
実際、父親の命令で子会社に出向したのなら、さすがにラウダは知っていそうでしたしね。
そうなると、グエルの行動からは非常に強い自責の念を感じますね。
もしかしたら、グエルはこれ以上ヴィムに迷惑をかけないために、名前を捨ててまでジェターク家から出たのかもしれません。
反目することはありましたが、グエルにとってヴィムは大切な父親であり、同時にジェターク家にも誇りを持っていました。
これ以上家名を傷つけないために、これ以上父親の負担にならないために、彼は独りで生きる決意をしたのでしょう。
そして人知れずヴィムは行方不明になったグエルを心配し、密かに捜していたのでしょうね。
…しかし、この解釈をすると、もう一つ悲劇的な要素が出てくることになります。
これまで、グエルが没落するきっかけは全てスレッタ絡みでした。
スレッタに敗れてホルダーの地位を喪い、スレッタを泣かせたエランへの怒りから禁じられた決闘をし、そして敗れて完全に面目を喪った。
そして今回、グエルはスレッタを助けに行こうとして父親を手にかける結果を招いてしまった。
もちろんスレッタに何の責任もありませんが、グエルがスレッタのために思って取った行動は全て裏目に出ています。
それも、家族に塁が及ぶ形で。
スレッタへの一途な想いのために失敗を繰り返し、挙句ヴィムをその手にかけてしまったグエル…。
2ndシーズンで闇落ちしていないといいですがね…。
マーキュリー家の場合
ここでは作中で一番謎が多い親子であるスレッタとプロスペラを掘り下げてみましょう。
進むか、逃げるか
いやー、個人的に今回一番怖かったのはプロスペラでしたね。
フォルドの夜明けに襲われそうになっていたスレッタを助けたところまではかっこいいお母さん感がありますが、その後のやり取りが…。
プロスペラは初めて人が命を奪われる場面を見て怯えるスレッタに対し、いつものように「逃げれば一つ、進めば二つ」を引き合いに出しながら、この状況でみんなを救えるのはスレッタとエアリアルだと説きます。
その言葉を受けたスレッタは後述するように勇気(?)を取り戻し、エアリアル改修型に乗って戦場に繰り出すわけですが…。
よくよく考えてください。
敵意ある相手が銃を向けてくる状況で進むことが、本当に正解なのでしょうか?
確かにスレッタはエアリアルに乗れますし、戦闘力は群を抜いています。
でもいくら状況を打開でき得るかといって、実の娘を戦場に送り出せる親がいるでしょうか?
あれだけ人が命を奪われた場面に怯える娘に、いくらミオリネ達のためとはいえ、戦うように笑顔で促せるでしょうか?
これに対して、前半デリングはミオリネにこう告げていました。
「逃げろ」と。
人の命を奪わざるを得ない状況で「進め」と告げるプロスペラと、生存確率が高い選択として「逃げろ」と告げるデリング。
実は、デリングとミオリネのやり取りと、プロスペラとスレッタのやり取りは対になっているのではないでしょうか。
同時にこの対比は、非常時において、逃げることと進むことのどちらが正しいかを迫るものになっているように感じます。
結果として、スレッタはプロスペラの言葉に従って進み、ミオリネはかつてデリングができなかった一緒に逃げる道を選びます。
スレッタの選択は確かに勇気あるものかもしれません。
実際、彼女の活躍でフォルドの夜明けの作戦は失敗に終わり、恐らくミオリネやデリング達の命は守られたでしょう。
ただ、スレッタの選択の背後にはどうしようもなくプロスペラの作為を感じざるを得ません。
対して、ミオリネの選択は反目していたデリングを見捨てられない彼女の情と、かつてデリングができなかった「ノートレットと一緒に逃げる」を再現するかのような、一種の代償行為的な側面がありました。
つまりミオリネの選択はデリングを守るだけでなく、レンブラン家にあったわだかまりを解消し得るものであり、逃げると見せかけた、本当の意味での「進む」行為としても捉えられるでしょう。
というか、ここまで来るともうプロスペラが何を考えているかよりも、彼女の変貌ぶりにゾッとしますね。
かつてエルノラ・サマヤだったころ、『PROLOGUE』でエリクトがルブリスに認証されたときにショックを受けていた彼女はもういません。
そこにいるのは、笑顔と甘い言葉で娘を戦場に誘う魔女なのです。
初陣
よくも悪くもプロスペラの言葉を受けて奮起したスレッタは、エアリアル改修型に乗ってフォルドの夜明けを撃退しました。
このときのスレッタですが…大出力の兵器を使用したり、挙句の果てにミオリネを狙ったテロリストをエアリアルで叩き潰し、平然と降りてくるなど、一切の躊躇がなくなっているようでした。
『PROLOGUE』で無自覚にMSを落としまくっていたエリクトを彷彿とさせますね…。
まぁ、スレッタについては前回の記事などで、その未熟性について色々触れてきましたが…正直ここまでスピーディーに場に適応するとは思わなかった(笑)
そもそもスレッタは誰かの役に立ち続けることで依存関係を作ってしまう傾向はありましたが、今回は状況があまりにもでき過ぎていました。
ミオリネ達の命が危ない中で、状況を打開する力を自分が持っている。
自分が進めば、戦えば状況を変えられる。
そして魔法のおまじない「逃げれば一つ、進めば二つ」。
もし今回の状況にプロスペラの作為があるなら、この状況を作り出すことだったのでしょう。
全ての条件が揃えば、スレッタはミオリネ達を守るために躊躇を捨てる。
かつてのエリクトとは違い、自発的に人の命を奪える。
プロスペラとの対話の後、スレッタが血しぶきのついた廊下に進み出た場面が非常に示唆的でしたね。
確かにスレッタは進んだことで二つのものを手に入れました。
ミオリネ達を守るという結果と、人の命を奪うことも躊躇わない冷徹さです。
そう考えると、先ほども触れたように「逃げれば一つ、進めば二つ」が果たして正しいものなのか、首を傾げたくなりますね。
確かにこの言葉は魔法のおまじないのように、スレッタ達に大きな影響を与えてきました。
同時にスレッタ達は復讐やガンダムなど、さまざまな呪いを背負っている…あるいは背負わされています。
そして今回、「逃げれば一つ、進めば二つ」というおまじないも、新たな呪いとしてスレッタに宿ってしまったのではないでしょうか。
戦わなくてもいい、逃げてもいい場面でも積極的に進むことで、かえってスレッタは大切なものを失う。
その片鱗が、今回のスレッタの変貌に表れているのではないでしょうか。
それに…おまじないは漢字で書くと「呪い」になりますから。
レンブラン家の場合
ここでは最後にミオリネとデリングについて振り返りましょう。
そう言ってくれたなら
作中の親子関係でもトップクラスでギクシャクしているミオリネとデリングですが、今回の非常時においてはちょっとずつ和解に近づいているような印象がありました。
象徴的な場面が、ソフィとラジャンの配下の戦闘による爆発に巻き込まれた際、デリングがミオリネを庇って負傷した場面です。
この段階でこれまで冷徹に接していたデリングがミオリネを大切なものとして扱っていることが窺えます。
というか、ミオリネと対面した際の「なぜノーマルスーツを着ていない?」も、よくよく考えると「なんで危ない恰好をしているんだ」と心配しているからこその注意と捉えられますし、負傷した際にミオリネに「逃げろ」と言ったりと、今回のデリングはただただ娘を心配して守ろうとするお父さんなんだよな(笑)
まぁノーマルスーツのくだりがミオリネに伝わっていなかったのは相変わらずですけど(笑)
そして重傷したデリングの口からノートレット…ミオリネの母親についても触れられていました。
作中のやり取りからすると、デリングとノートレットは何かしらの事件に巻き込まれた際、二人で決めた「生存確率が高い選択」をした結果、デリングはノートレットを見捨てざるを得ず、それによってノートレットは命を落とした…そんなエピソードが隠れている感じがします。
すでに故人であり、描写もそれほどされていないノートレットですが、どうやらデリングがノートレットと一緒に逃げなかったことがミオリネとの確執の原因になっていたようですね。
ただ、「生存確率が高い選択をしろ」という信念がデリングがあると踏まえると、これまでの彼の振る舞いや言動に違った見方が出てくる気がします。
ミオリネを冷たく突き放していたのは、何かと命を狙われる自分から遠ざけて巻き込まれないようにするため。
彼女を守る花婿を決闘で選ぶのも、戦闘力や組織力に長けた者にミオリネを預けられるようにするため。
株式会社ガンダムを認めたのも、自分がいなくなっても彼女が自立できる道を確保するため。
まぁクワイエット・ゼロをはじめ、デリングはまだ隠している事柄があるので、まだ邪推の域は出ませんが…。
ただ、第7話の記事でも書いたように、デリングは彼なりにミオリネを守り、そして彼女に期待を寄せている描写はそこかしこに示唆されています。
まぁいずれにせよ、僕にとってのデリングは今のところただのツンデレクソオヤジですね(笑)
なんで笑うの?
さて、1stシーズン最終話の締めに入りましょう。
今回のエピソードはさまざまな謎の答えを出すよりも、作中の人間関係を展開させることを優先していた印象でした。
やはり個人的に重視したいのが、前半で「逃げろ」と声をかけていたデリング+そのデリングを守って一緒に逃げる道を選んだミオリネと、後半で「進め」と促していたプロスペラ+進んだことで何かがおかしくなったスレッタです。
そもそも1stシーズンは第1話からデリングとミオリネ、プロスペラとスレッタの関係がことあるごとに描写されていました。
そして当初破綻していたデリングとミオリネの関係が徐々に修復している兆しを見せているのに対し、プロスペラとスレッタの関係が健全そうに見えて、実は破綻していることが描写されていた印象です。
反目しながらも歩み寄る親子と、強い絆で結ばれているようで実際は歪んでいる親子。
なんとも対比的で面白いですよね。
他方で、ラストシーンではミオリネは躊躇なく人の命を奪い、あまつさえ笑っているスレッタに恐怖を抱く場面が描かれました。
まぁいくら命を助けてくれたとはいえ、ああも平然にしていたらさすがにドン引きですよね…。
せっかく前回和解したのに、また新しいすれ違いが発生する予感…。
それに、あのシーンは別の意味でも重要な気がしました。
第8話の記事でも書きましたが、株式会社ガンダムの設立以降、ミオリネ達はGUND技術を本来の目的であった医療技術として普及させる道を選んでいます。
これは志半ばで命を落としたカルドやベルメリア達の夢であり…兵器と結びつけられたことで歪んでしまったGUND技術を正常化する希望でもありました。
しかし、今回の事件はGUND技術を利用したガンダムによって引き起こされ、ガンダムによって事件は終息しました。
結局兵器としてのGUND技術の有用性を、よりにもよって株式会社ガンダムに属するスレッタが証明してしまったわけです。
そしてそれに適応するかのように、スレッタは兵器で躊躇なく人の命を奪えるようになってしまいました。
つまり、改めてGUND技術、ひいてはガンダムは命を奪う呪われた存在になったわけです。
もちろんこの状況はスレッタの本意ではありませんが…2ndシーズンはこれが原因で色々波乱が起こりそうな気がします。
最悪、スレッタがミオリネを守るという大義名分でガンガン戦争に加担する可能性もありそうですし。
下手したらスレッタとミオリネが敵対する展開もあるのかな…。
未回収の伏線と気になるポイント
今作はすでに2ndシーズンの放送が決まっていますが、一応今回が1stシーズン最終回なので、未回収の伏線や気になるポイントを一通りさらってみましょう。
スレッタの正体
まぁ未回収の伏線の中でも一番気になるのはこれですよね(笑)
個人的に今回でスレッタの正体に触れられるかと思いましたが、全然なかったので2ndシーズンまで持ち越しに…。
ただ、ヴァナディース機関壊滅が21年前だったり、スレッタのさまざまな言動から踏まえるに、彼女がエリクト・サマヤである可能性はもうないでしょう。
細かい話は第4話以降の記事を見ていただくとして…。
2ndシーズンでも僕は引き続きスレッタ=エリクトのクローン説を念頭に置いておきたいと思います。
ガンダムの秘密
厳密にいうと、「エアリアルに使われているGUNDフォーマットの秘密」でしょうか。
第6話以降、作中で度々見せているエアリアルの不思議な描写の原理ですね。
これも諸説ありますが、個人的には「エアリアルに組み込まれている何かにエリクトが加わっている」説を念頭に置きたいと思います。
これも詳細は第6話以降の記事をご覧になっていただければ…。
まぁエリクトが単体で組み込まれている可能性もありますが、個人的には複数人組み込まれている、あるいは何かがエリクトを取り込んでいる方が好みなので、この路線でいきます(笑)
デリングとプロスペラの目的
前回も触れた「クワイエット・ゼロ」にまつわるデリングとプロスペラの目的も重要な伏線ですね。
正直クワイエット・ゼロに関する情報はほぼゼロに近いので、現段階では何ともいえませんが…。
ひとまずデリングはこれまでの言動から、世界やミオリネのためにクワイエット・ゼロやGUND技術に関わっている印象があります。
対して、プロスペラは露骨に怪しいし、『ゆりかごの星』でも復讐を目論んでいると示唆されていますが…今回のエピソードではびっくりするくらいデリングに興味を示していませんでしたね。
復讐だけを考えるなら絶好の機会ではあったのですが…そもそもフォルドの夜明けにも関わっていないようですし、今回の状況は彼女にとっても想定外の可能性が高そうです。
それにプロスペラにとってはあくまでスレッタやエアリアルの覚醒が優先事項なのでしょう。
ただ、エアリアルの情報をわざわざデリングに渡すほど、プロスペラはクワイエット・ゼロにがっつり関わっています。
クワイエット・ゼロにエアリアルが絡んでいる以上、プロスペラにとってデリングと進めているこの計画も重要な意味を持っているのでしょう。
2ndシーズンでは重傷したデリングとエアリアル改修型の実戦に成功したプロスペラがどのように立ち回るかに注目ですね。
第三勢力の狙い
1stシーズンでもあまり出番が多くなかったですが、今作はベネリットグループの内紛だけでなく、アーシアンの勢力であるフォルドの夜明けや、統治機関と思しき宇宙議会連合も暗躍しています。
これらが2ndシーズン以降どのように物語に突っ込んでくるか興味深いですね。
とりわけフォルドの夜明けはガンダムを所有しているうえに、ベネリットグループ解体を目論むシャディクと結託しているわけですし。
この辺は、スペーシアンとアーシアンの対立の解決を大きく左右する要素だと思っています。
シャディクの計画
デリングの命を奪い、ベネリットグループを解体するために決起したシャディクでしたが、結果は失敗。
彼は変わらず笑顔でしたが、忌避されているガンダムを利用したことから、サリウスとの対立は免れないでしょうね。
それすら見越してシャディクが何か準備している可能性は高そうですが…。
それにヴィムが命を落としたため、御三家の一角が崩れましたし、今後ベネリットグループの内部で大きな変化が起こる可能性は高そうです。
エラン・ケレスの陰謀
ここ最近出番が少なめのエラン・ケレスこと強化人士5号ですが、今回のラストシーンがきっかけでスレッタとミオリネの仲に亀裂が入ったら、確実にスレッタをものにしようとするでしょうね。
過去にスレッタは追いつめられたときにエランに助けられてるし、何より5号が「堕とす」っていってたし(笑)
それに秘密裏にファラクトを開発していたペイル社にとって、エアリアル改修型の活躍はいい機会でしょう。
ジェターク社の没落は避けられないでしょうし、グラスレー社はシャディクが好き勝手にやっちゃっているので、2ndシーズンはペイル社が躍進してくるかもしれませんね。
というか、スレッタは現時点で仲が良かった4号がすでに故人となっていることを知りません。
追いつめられた時に手を差し伸べ、わかりあえた4号が理不尽に命を落とした事実を知ったら…スレッタがさらにヤバい状況になりそうですね。
『水星の魔女』第12話感想
いやー長くなっちゃったなぁ…でも仕方ない、1stシーズン最終話なんだもの(笑)
個人的には結構楽しめました。
というか、さりげないセリフでも深読みできる要素があって、作劇的にとてもよかった…。
さすが大河内一楼といったところでしょうか。
いろんな謎も不穏な伏線も2ndシーズンに持ち越しになってしまいましたが、逆に4月が待ち遠しくてしょうがないですね。
いずれにせよ、『水星の魔女』1stシーズンはこれにておしまい。
続編の記事でお会いしましょう。
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