皆々様こんにちは。
『機動戦士ガンダム 水星の魔女(以下『水星の魔女』)』担当のgatoです。
前回はミオリネが総裁選を勝ち抜くために地球へ向かう決断をした一方、エリクトやプロスペラによってスレッタの正体を明かされました。
覚悟を決めてトラブルだらけの地球へ向かうミオリネ、愛していた母やプロスペラに捨てられたスレッタ…。
それぞれのその後がどうなったのか、じっくり振り返ってみましょう。
目次
どん底の彼女達
ここではスレッタや地球寮の面々が立ち上がる場面をチェックしていきましょう。
いらない意地
前回、ニカを通報したことを知られたマルタンは早速セセリアにこき使われていましたが…ちょっと意外な展開になっていましたね。
セセリアに散々煽られた挙句、本心を突かれたマルタンはニカとの対話を諦めたことを自白。
そんなマルタンにセセリアは持っていた飴を咥えさせ、「弱者の癖にいっちょ前に意地を張るな」と諭していました。
相変わらず嗜虐的ではあるものの、一見するとセセリアなりにマルタンをフォローしているようにも見えましたね。
そして、恐らくこのやり取りがきっかけで、マルタンは自ら地球寮の面々に自分の行いを告白することになっていました。
見方を変えれば、セセリアはマルタンの背中を押したといえるでしょう。
そもそもセセリアは口が悪いうえに、何かにつけて相手を挑発する悪癖がありますが、思えば作中では相手が御三家だろうが誰だろうが区別なく口撃しています。
いささか歪ですが、ある意味セセリアが誰が相手でも分け隔てなく接しているといえるかもしれません。
それにアーシアンを弱者と嗤ってはいるものの、セセリアのセリフからはマルタンの行為に一定の正しさがあること自体は認めている雰囲気があります。
少なくともマルタンの行いを頭ごなしに否定はしていないところを見ると、セセリアなりにマルタンの立場や心中を理解しているともいえます。
アーシアンへの差別意識や敵対意識が激化する中で、セセリアは比較的ニュートラルなスタンスを保っているのかもしれません。
それにてっきりセセリアがマルタンを利用して色々悪事をしそうな予感もありましたが、後半では普通にマルタンを地球寮に返していました。
となると、もしかしたらセセリアが地球寮の面々とスペーシアンをつなぐきっかけになる展開もありそうですね。
…ところで、マルタンに持っていた飴を咥えさせる場面、ちょっと色っぽかったな(笑)
いくらサディストでも、普通あんなことはしませんよね(笑)
意外とセセリア×マルタンってのもあったりするのかな…。
ほら…SとMだし(笑)
君にはわからない
ここ最近毎回のように部屋の中で喧嘩を繰り返しているノレアと5号ですが、今回はちょっとした進展がありました。
5号に本音を暴かれてお怒りになったノレアはスケッチブックを見られたことで5号に攻撃するも、その過程でソフィを喪った悲しみやタヒにたくない気持ちを吐露します。
本当はガンダムに乗って命を落としたくない、だけどやらなきゃいけない。
5号が指摘したように、そんな状況を生き抜くためにノレアはスペーシアンへの憎悪を振りかざしていました。
そんな彼女を覆っていた憎悪のメッキが剥がれた瞬間でしたね。
そして5号は、ノレアの本音を聞いて切なそうな表情を浮かべながら、自分の手と彼女の手を重ねていました。
…おいおいおいおいおい、確かに第13話の記事からノレアと5号の絡みは逐一触れてきましたが…。
ここに来て明確に5号×ノレアのフラグが立ちましたね。
確かに世界に対する感情も、境遇も似ている2人ですが…何よりも「タヒが怖い。それでも生き抜かなければならない」という想いにシンパシーを感じたのでしょう。
かつて4号が自分の運命を儚んで自暴自棄になったように、5号もまた同じ感情を抱いていても不思議ではありません。
失敗すれば容赦なく処分される状況において、5号は飄々とした態度を崩しませんが、本当はノレアのようにやけになって叫びたい感情を秘めているのかもしれませんね。
それに、今回の5号はさりげなく意外な一面を見せていました。
ノレアのスケッチブックを見た際、動物の骸など「タヒ」を連想させる絵には引いていた彼ですが、ノレアが描いていた風景画には感心したような態度を見せていました。
その絵は雲間から光が差している海岸を描いたものでしたが、ノレアの失った故郷か何かでしょう。
何より唯一「タヒ」を連想させないその絵は、ノレアがまだ希望を失っていないことを示しているような気もします。
そして意外にも5号が的確にそれを拾い上げた。
風景画で心が動くというだけでも、欺瞞と不条理ばかり見てきた5号が、まだ世界には美しいものがあり、それを描けることをよいことだと思っている証拠です。
そしてノレアも気づいていない希望を、同じような境遇の5号が示してあげることができるならば…きっと2人はいいカップルになれると思うのです(笑)
一番いいやり方じゃなくても
後半ではスレッタと地球寮の面々がニカについて語り合う場面がありました。
前回はまだ気丈に振舞っていたスレッタですが、さすがに自分の出生を明かされ、プロスペラからもエアリアルからも突き放されたことでどん底まで落ち込んでいました。
正直、ミオリネを失った時点でこうなると思っていましたが…やっぱりプロスペラから突き放されたことの方が彼女にとってはきつかったようです。(暗に前回までプロスペラ>ミオリネだったわけですが)
そしてスレッタがチュチュに連れられて朝食を共にした際、そこに現れたマルタンが自分の行いを正直に語ります。
意外にも、そこで地球寮の面々が激しく対立したり分裂したり…するような場面はありませんでしたね。
むしろマルタンの行いへの理解を示しています(ヌーノにいたっては「同じことをしただろう」と明言していました)。
個人的にここでのリリッケのセリフが印象的でしたね。
「一番いいやり方じゃないってわかっていても、そうするしかないときあるんじゃないでしょうか」
マルタンの立場を考えると、まさにこのセリフの通りです。
たとえ間違っているとわかっていても、それを行うことが正しい時もある。
間違いの対義語は必ずしも正解ではないし、最善と最適が必ずしも合致するわけではありません。
他方で、一番いいやり方じゃないとわかっているからこそ、それを実行してしまうと、人は罪悪感を抱いたり、後悔したりします。
そしてその罪悪感や後悔を払拭するために、自分を正当化しようとする。
意地を張って自分の正しさを主張したマルタン然り。
スペーシアンへの憎しみで本音を覆い隠したノレア然り。
そして、「お母さんがいっていたから」で自分の行いを正当化しようとしたスレッタ然り。
もしかしたら、デリングやプロスペラでさえも、同じような行為をしていたのかもしれません。
しかし、大事なのは一番いいやり方じゃないからこそ、次にいいやり方ができるように考えること。
自分を正当化しながら闇雲に「進む」ことではなく、時々立ち止まって過去を振り返り、仲間達を向き合い、次にいいやり方ができるように考えることでしょう。
事実、マルタンはセセリアに諭されて正直に自分の行いを仲間達に白状し、ノレアと5号は心を通わせるきっかけを作り、スレッタはエアリアルの言葉の真意を理解しました。
今回のエピソードは「進む」ばかりでなく、「立ち止まる」ことの重要性を示唆するものといえるのではないでしょうか。
…余談ですが、マルタンが地球寮の面々に告白するシーンでスレッタ達一部メンバーが普段と違う髪型や格好をしていたのは個人的に好きな演出でしたね。
全員寝起きだった感じでしたが、だからこそ素の自分を晒して語り合っている感じがしました。
それにラストでは戻っていましたが、髪をほどいていたスレッタの姿もよかったですね。
エリクトのリプリチャイルドではない、本物のスレッタ・マーキュリーがいたような気がします。
そして、進め
マルタンの告白を聞き、クイン・ハーバーが火の海になっている光景を見たスレッタですが、そこで彼女はエアリアルの言葉の意味を悟りました。
「君はこれ以上すがっちゃいけない」
これは誰かを使って自身を正当化するのではなく、自分で考え、自分で決めて進むことを促す言葉だったのでしょう。
同時に、エアリアル=エリクトが「一番いいやり方じゃない」方法でスレッタを守ろうとしたことも。
『ゆりかごの星』でもエアリアルはスレッタを巻き込みたくない想いを綴っていましたが、やっぱり変わらないでいたのですね。
そしてその想いを知ったスレッタは覚悟を決めた眼差しをしていました。
これまで第11話の記事などで散々スレッタを否定的に書いてきましたが…。
やっとその足で進む展開が見えてきましたね。
皮肉にもプロスペラの別れ際の言葉は正解でした。
「学園に戻りなさい」
「あそこならあなたの胸を埋めてくれる」
確かに仲間達との触れ合いで彼女の胸の大きな空っぽは埋まりました。
そしてスレッタ・マーキュリーの本当の人生が、これから始まっていくわけです。
重力の井戸の底
ここでは地球で起こった出来事や、ベネリットグループでの動きを振り返ってみましょう。
いつかの地球へ
冒頭では地球へ向かうミオリネ、グエル、ケナンジが描かれていました。
現場の凄惨な状況を知っているグエルはもちろん、かつて地球への逃走を試みていたミオリネも浮かない顔をしていましたね。
まぁ一触即発の鉄火場に向かっているわけだから無理はありませんが…。
他方で、個人的にちょっと引っ掛かったのがケナンジの発言でした。
本人は体型の問題で「重力がある地球は好きじゃない」と冗談めかしていっていましたが、『PROLOGUE』でアーシアンが大勢いるヴァナディース機関を攻撃した彼がいうと…ちょっとゾッとしますね。
地球に降り立ってからも、アーシアンのデモ隊をあくまで危険因子としてみなす態度を崩していませんでしたし(軍属だからやむを得ないとはいえ)。
あと、個人的にケナンジの内面やプロスペラとの絡みを見たかったですが…今回はお預けのようですね。
コメディリリーフ的な雰囲気があるケナンジですが、『PROLOGUE』での彼の立ち回りを考えると、この先エグい展開もありそうなんだけどなぁ…。
地球人は許さない
いよいよ始まったクイン・ハーバーでのミオリネとアーシアンの交渉ですが…。
冒頭では握手を拒否られ、さらに雇用促進を実現する提案もスルーされるなど、厳しいスタートをきりました。
まぁ、この時点でのミオリネは第8話の記事で書いたのと同じようなミスをしていますからね。
確かにアーシアンとスペーシアンの対立は格差やパーメットの独占など、経済的要因によるものもありますが、交渉人達の怒りはプラント・クエタ以降の行き過ぎた弾圧やベネリットグループの非人道的行為にも向けられていました。
その結果、彼らは「同じことをやるしかない」とスペーシアンを地球から追放するためなら武力行使も辞さない態度を取っています。
まぁ、倫理的な怒りに対して経済的な解決策は役に立たないわけですよ。
端的にいうなら理不尽な理由で散々殴られて怒り心頭な人間に「金をやるから仲直りしよう」といっても無駄ってことですね。
スタートダッシュこそ失敗したミオリネですが、かつて作成した株式会社ガンダムのPVを見て再度交渉に臨みます。
そこでミオリネは自分達が作成した義肢を始めとする医療技術を見せると同時に、「宇宙からアーシアンは戻るべき」と考える交渉人達の考えを否定し、大切な仲間を分断で失わせたくないという想いを告げ、どこまでも対話を望む姿勢を見せます。
そして仲間を守るために総裁になると表明したミオリネを交渉人達は信じ、10日後に総裁選の結果が出るまで抗議活動を休止にすることを約束しました。
いささかあっさりとまとまりましたが、ミオリネのアプローチは2つの点において、有効だったといえるでしょう。
まず、ミオリネが医療技術の提供を提案したこと。
交渉人が医者だったことも影響していますが、負傷者が続出する地球において、優れた医療技術はそれだけでも価値があります。
また、医療技術の提供には戦いを望まないという明確な意思表示です。
「地球が求めているもの」を提供する点において、抑止力をもたらそうとしているシャディクとは対照的ですね。
そしてミオリネが「地球からスペーシアンを追い出す」という交渉人達の意志に対して、「宇宙からアーシアンを追い出さない」というアンサーを出した点も面白いですね。
これは株式会社ガンダムに所属する仲間達を守るだけでなく、宇宙で懸命に頑張っているアーシアンの居場所を失くさないでほしいという意思表示のようにも感じます。
そしてこれは同時にスペーシアンとアーシアンが手を取り合っていける場所が間違いなくあることも示唆しています。
それを察したからこそ、交渉人達はミオリネを信じる気になったのではないでしょうか。
また、第16話の記事でも触れましたが、普段はツンツンしているミオリネも聴取を終えて株式会社ガンダムに戻ったときには、安堵した表情を見せていました。
間違いなく株式会社ガンダムでの体験が、交渉に役立っていることを感じさせる場面でしたね。
…しかし、そんな一歩もこの後無残に破壊されるわけで…。
その名はプリンス
グエルが地球にいた時に面識を持った戦災孤児のセドの証言により、ついにフォルドの夜明けに関わっていたプリンスがシャディクということが判明しました。
これにより、グエルは血相変えて宇宙へ引き返すことになります。
ふむ、こうなるとグエルVSシャディクの展開になりそうですね。
そんなシャディクですが、ミオリネの動きこそ静観していたものの、プロスペラの策謀によって事態が変わったときはまずグエルへの苛立ちを露わにしていました。
第9話の記事でも触れましたが、シャディクはミオリネの手腕を評価しつつも、あえて彼女の傍にいないことを選ぶなど、ひたむきながらも屈折した想いを抱いていました。
思えば、自分の野望の実現のために手を汚す覚悟を決めていたシャディクにとって、いくら大切でもミオリネを傍に置くことはできなかったのでしょう。
一度ミオリネの邪魔をしたのも、彼女が前線に出る事態を避けたかったのでしょう。
そもそも、ミオリネを巻き込みたくないと思っていたからこそ、シャディクはグエルにミオリネを託す選択を取っていたともいえます。
しかし、今回のシャディクはミオリネの邪魔を一切しませんでした。
これは、ミオリネの取った選択にシャディクが一定の期待を寄せているからだと感じました。
やり方が真逆とはいえ、シャディクも地球を想って行動していることに変わりありません。
しかし彼のやり方は冷戦状態という危ういバランスで成り立つ仮初の平和を作るだけで、本当の平和にはつながらない。
対してミオリネのやり方は青くさいとはいえ、本当の平和を実現し得る可能性があった。
アーシアンと手を取り合い、総裁になる覚悟を決め、現実を見据えて立ち上がったミオリネなら、猶更実現できる可能性があった。
そしてミオリネと同じようにひたむきなグエルなら、彼女を守ってくれる。
だからこそ、シャディクは一切邪魔をせず、ミオリネのやることを見届けようとしたのでしょう。
オリジナルの「アーシアンを潰せば支持率が上がる」というスペーシアン寄りの発言を否定したのも、その想いがあったからかもしれません。
しかし、実際はプロスペラの手によってミオリネの交渉は失敗。
彼女はアーシアン弾圧の急先鋒にされてしまいます。
ミオリネが示した希望が第三者の手によって潰され、彼女自身も最悪な状況に陥り、危険に晒されている。
彼女を守るに足ると信じたグエルがいたにも関わらず。
シャディクのグエルへの苛立ちは、ミオリネやグエルを信じていたからこそ生じたものなのでしょうね。
ちなみにシャディクの通称である「プリンス」は彼の旧名イエル・オグルから取ったものとのこと。
調べてみるとオグルはテュルク語の「Āghūl(王子の意味)」のようですね。
てっきりオーガ(人食い鬼)のフランス語読みであるOgleだと思ったのですが…。
あと、アゼルバイジャン語では「息子」という意味もあるそうです。
…でも、シャディクの場合はどの意味にも当てはまるんだよなぁ。
夜明けを阻むもの
これまで目的がよく見えなかった宇宙議会連合のフェンとグストンですが、今回は彼女達の目的とフォルドの夜明けに関する真相が明らかになりました。
なんとフォルドの夜明けはオックス・アースの残党であり、バックにいるのは宇宙議会連合の理事会だということ。
第10話の記事でなんとくオックス・アースの名を出していましたが…やっぱそこにつながったか…。
…と「予想が当たった」なんて感じを出していますが、この記事でオックス・アースの名前を出したことを忘れていたうえに、宇宙議会連合とつながっていることまではわからなかったからなんてことはないのですが(笑)
とはいえ、これで宇宙議会連合は傍観者ではなく、フォルドの夜明けを通じてかなり事態に介入していることがわかりました。
まぁ『PROLOGUE』の時点でオックス・アースとガンダムの関わりが地球の軍拡と結びつけられていたので、キナ臭いとは思っていましたが…。
そして宇宙議会連合の理事会の目的は第16話の記事で推察したように実権の奪取でした。
いくら影響力が強いとはいえ、一企業グループに政治的機関が武装組織を支援して攻撃させるってなかなかですね…。
というか、シャディクがプロスペラが攻撃をした隠し倉庫について知っていたような素振りを見せていたところを見ると、彼も実は宇宙議会連合とつながっていた可能性もありそうですね…。
そしてフェンとグストンの目的は宇宙議会連合とベネリットグループの全面衝突を回避すること。
いつもこそこそ動き回っていた2人ですが、実は平和を実現するために頑張っていたのですね。
そんな彼女達の正体がわかった矢先、ベルメリアを奪還するために現れたゴドイの手によって、フェンは命を落とします(直接描かれてはいないけど…あれはもう駄目でしょう)。
いやーもうちょっと彼女について知りたかったな(笑)
しかしベルメリアとグストンは健在。
この流れだと、株式会社ガンダムに合流する展開になるのかな…。
10日後を待たずして
ミオリネの懸命な交渉によってやっと希望が見えてきた矢先…最悪な事態が起こりました。
プロスペラがオーバーライドを使ってデモ隊の兵器を操って攻撃を仕掛けさせ、それを理由に現場を離れてはオックス・アースの隠し倉庫を攻撃。
加えてスペーシアンの襲撃だと誤認したデモ隊が攻撃を開始したため、駐留部隊が反撃。
クイン・ハーバーは戦火に包まれてしまいます。
ラストの絶望したミオリネの顔…痛ましいものがありましたね…。
まぁ確かにミオリネがプロスペラと行動を共にし、彼女をエアリアルに乗せて連れてきたからこの事態が起こったとはいえるでしょう。
しかし、クワイエット・ゼロの実行を目的とするプロスペラが、戦いの火蓋を切って落とすようなことをするとは予想できないですからね…。
いずれにせよ、これでミオリネは反アーシアンの急先鋒として祭り上げられるリスクが高まりましたね。
下手したらオリジナルがいっていたように、支持率が引き上がるかもしれません。
実際、アーシアン寄りのシャディクは事業譲渡の時点でグループの人間から怪訝な目で見られていましたし、アーシアンを弾圧したことがミオリネの追い風になってしまう可能性は高いでしょうね。
そして皮肉にも、誰かから敵意を向けられる形で世界の矢面に立つ姿は…かつて彼女が憎んだデリングを彷彿とさせます。
尤も、これもプロスペラの復讐の一環なのかもしれませんが…。
母は業火の中で
さて、最後に一気に事態を変えてみせたプロスペラについて掘り下げてみましょう。
前回の記事などで、実は復讐をやめているのではないかと思っていたプロスペラですが…。
そんなことはなかったですね。
復讐する気満々でしたね。
あくまでスレッタの前ではエルノラ・サマヤとして素顔を見せていただけで、復讐心自体はしっかり持っていましたね。
というか、今回でやっとプロスペラの復讐の矛先や計画の輪郭が見えてきたような気がします。
プロスペラはクイン・ハーバーにあったオックス・アースの隠し倉庫を攻撃していましたが、その際に「GUNDの理念を踏みにじった大罪人」という言葉を発しています。
どうやらこの「大罪人」がプロスペラにとって最も許せない存在のようですが…この表現、どうにもベネリットグループには当てはまりそうにないんですよね。
そしてGUND技術を兵器として運用しようとしていたのは…『PROLOGUE』で軍拡に加担していたと指摘されていたオックス・アースと、フォルドの夜明けにウルやソーンを提供した宇宙議会連合(強硬派の理事会)。
となると…プロスペラの復讐の対象にはヴァナディース機関を潰したベネリットグループだけでなく、オックス・アースや宇宙議会連合も入っているのではないでしょうか。
もう少し大仰な言い方をするなら…プロスペラは「GUND技術の理念を汚し、兵器転用を進める勢力全て」に復讐しようとしているともいえそうですね。
まぁプロスペラはプロスペラでGUND技術の提供をしようとしているし、何よりエアリアルを兵器として使っている…と指摘されそうなところですが…。
ただ、個人的に今回のプロスペラを見て、ある意味彼女こそがGUND技術の理念を体現しているのではないかとも感じました。
かつてプロスペラの師であったカルドは「GUND技術は人類が過酷な宇宙に進出するために必要」と説いていました。
そしてプロスペラは過酷な宇宙環境に耐えられないエリクトを救うためにエアリアルにその魂を移植した。
つまり、過酷な宇宙環境に耐えられる肉体を実現することがGUND技術であるならば、エリクトは最たる成功例と解釈できるわけです。
しかしエリクトがエリクトとして生きるためには、GUND技術を禁止した挙句に平然と兵器転用するなど、本来の理念を忘却した世界が邪魔になる。
だからこそプロスペラはクワイエット・ゼロで世界から戦争をなくそうとしている…。
これがプロスペラの復讐の大筋ではないでしょうかね。
『水星の魔女』第19話感想
いやー相変わらず後味の悪い終わり方が続いていますが、今回は色々面白いエピソードでした。
シュヴァルゼッテの存在を知ったラウダや、現在状況を静観しているニューゲンなど、今後の展開を左右しそうな人物の不穏な描写もしっかりありましたが…。
個人的にはノレアと5号、ミオリネと交渉人が「手をつなぐ」場面が印象的でした。
『水星の魔女』にしては珍しく希望がしっかり示唆されていますからね(笑)
何はともあれ、次回はようやっとスレッタが活躍しそうな予感がしますね。
そしてサリウス救出のために学園に戻ったグエルとシャディクがぶつかる予感も…。
次回も見逃せませんね。
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コメント
Twitterではミオリネは血染めのユフィをしちゃったと放送当時は盛り上がってましたが、私的にはあちらはギアスの能力とはいえ自ら引き金を引いて最後は死を持って償い?をしみしたが、水星はプロスペラが実質戦争を起こしかねん引き金を引いてミオリネはただ傍観していだだけなのにこれで言われるのはなんか違うと思いました。
ジョセフさんコメントありがとうございます!
>Twitterではミオリネは血染めのユフィをしちゃったと放送当時は盛り上がってましたが
それは知りませんでした!
確かに結び付けて捉えている方が一定数いるようですね。
まぁ『コードギアス』と『水星の魔女』は脚本家が同じなので、理解できる解釈だとは思います。
>私的にはあちらはギアスの能力とはいえ自ら引き金を引いて最後は死を持って償い?をしみしたが、水星はプロスペラが実質戦争を起こしかねん引き金を引いてミオリネはただ傍観していだだけなのにこれで言われるのはなんか違うと思いました。
なるほど、ルルーシュの視点で否定されているわけですね。
確かにプロスペラはルルーシュと違って故意に事態を引き起こしている雰囲気があるので、ルルーシュと同一視するのは難しいですね。
個人的にミオリネが事態を収めるためにクワイエット・ゼロを実行しなければならなくなるという事態を作ることも、プロスペラの狙いのような気がします。
それに事故とはいえ惨劇の主犯にされたユフィとミオリネは境遇こそ似ていますが、ミオリネはおっしゃるように巻き込まれただけですからね。
ただ、それでも責任を背負わされてしまうミオリネが今後どう立ち回るかは、ちょっと興味がありますね。
そもそも「大惨事の濡れ衣を着せられてしまう」、ひいては「世界から罪を背負わされる」という構図はゼロ年代のアニメに結構あった印象の構図なので、個人的にはちょっと懐かしさを覚えたりします(笑)