こんにちは、ウロコです。
「賭ケグルイ」最終回12話。今回のゲームに使われたのは何とタロットカードでした。
現在は専ら占い用に使われているタロットカードですが、元々は賭け事のために作られたとも言われていますね。
タロットカードのフルデッキ78枚のうち、56枚の小アルカナが変化してトランプが生まれたのは、両者を比べてみるとなんとなく分かると思います。
そして大アルカナ22枚の中で唯一、トランプに取り入れられたのが0の「愚者(フール)」。
そう、ジョーカーは元々、タロットカードの「愚者」のカードだったのですね。
今回の勝負では大アルカナの22枚が使われますが、「愚者」をジョーカーとして扱うのは、そういった意味では由緒正しいルール設定と言えるかも知れません。
また、トランプと違ってカードに上下があるのもタロットの特徴です。
占いでも「正位置」と「逆位置」では意味が反転しますので、そこをゲームの要素に加えるのもカードの特性を生かした遊び方かも知れませんね。
今回、タロットカードが占いによく使われる定番商品ではなくオリジナルの絵柄でしたが、何となく牙狼っぽいな…と思ってたらやはり雨宮慶太氏のデザインでしたね。
主人公・蛇喰夢子(じゃばみ・ゆめこ)と生徒会長・桃喰綺羅莉(ももばみ・きらり)の、文字通り、学園の未来を占う大勝負。
カードはどんな運命を示したのでしょうか?
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「敗けたら学園を去る」ことの意味
ゲームのポイントと経過を見て行く前に、この勝負で二人が「賭けた」ものについて考えてみましょう。
前回のラストで「全てを賭けた」勝負を望んだ二人。
その具体的な内容が、「敗けた方は2度と学園の土を踏まない」となるのは何故なのか?
答えはこの場面の前、きらりが夢子に「この学園の生活はどう?」と訪ねた場面の会話にあります。
「学園モノ」のキモは、「学校」という外部から隔絶された独自の世界を舞台としているという点。
きらりはそれを「私のアクアリウム」と呼びました。
OPに出てくる魚、そして生徒会室に据え付けられた巨大な水槽はそれを象徴しているのですね。
勝てば大きな利益を手にできるが、負ければ人権すら剥奪される弱肉強食の世界。
勝負には時の運も作用するため、昨日の勝者が今日には転落するかも知れない。
誰も安泰ではなく、薄氷を踏むように生きている場所。
それこそが、きらりが作った理想郷で、夢子にとっても楽園なのです。
そこから追放されるのはどちらなのでしょうか?
早乙女芽亜里(さおとめ・めあり)が異を唱えたように、この勝負、敗けて失うものは大きいのに、勝って得られるのは現状維持だけです。
なのになぜ、勝負するのか?
めありは強いから、「勝って利益を得ること」を明確な目的にすることができる。
しかしそうではなく、どちらかというと負ける方が多い者たちがこぞって賭け事にハマっているのは何故なのか。
その疑問にきらりは答えます。
リスクを背負うことこそが賭け事の目的であり、本質なのだと。
この点で、夢子ときらりは完全に一致しています。
負ければ失う。失うものが大きいほど、賭けはスリリングなものとなる。
そのスリルにこそ生の実感があり、それが快楽となる。
夢子もきらりもその快楽を追い求め、それが得られる楽園として百華王学園があるのです。
この学園が楽園だというなら、それを作り上げたきらりは神にも等しい存在。
そしてその神に逆らってアダムとイブを誘惑し、楽園追放へ追いやったのが蛇ではなかったでしょうか。
その蛇を名前の一部に持つ蛇喰夢子。
そして勝負の舞台となった部屋に飾られている額には、アダムとイブを誘惑する蛇の姿が描かれています。果たして。
スポンサーリンク「運命のタロットカード」ゲームのルールと勝負の結果
賭けるもの
学園生活「敗けた方は2度と学園の土を踏まない」
ルール
- タロットカードの大アルカナ22枚を円形に並べる
- 3名がそれぞれ一枚ずつカードを引く(「過去」「現在」「未来」)
- カードの番号を点数とし、3枚のカードの点数を合計する
- その際、カードが正位置ならプラス、逆位置ならマイナスとして数える
- 3枚のカードの合計がプラスなら夢子の勝ち。マイナスならきらりの勝ち
- 0のカード(愚者)が出た場合は、他のカードの数字の結果とは関係なく、愚者の正位置なら夢子の勝ち、逆位置ならきらりの勝ちとなる
- カードを引くのは夢子(現在)・きらり(過去)・鈴井(未来)
結果
夢子(現在):魔術師(正位置) プラス 1
きらり(過去):世界(逆位置) マイナス 21
鈴井(未来):審判(正位置) プラス 20
1-21+20=0 なので、合計はプラスマイナス0となり勝負は引き分けとなりました。
勝負のポイント
きらりの罠
夢子が最初に引いたカードは1の「魔術師」。これだけでは、勝負の流れはわかりません。
しかし次にカードを選んだきらりは、21の「世界」を逆位置で引き当てます。
これで合計はマイナス20。
残るカードは、0の「愚者」と、2〜20の19枚のカード。
マイナス20をプラスにするには21以上の数字が必要ですが、それがない以上、他のカードの数字を無効化する0の「愚者」を引くしかない、という場面で、勝負は最後の鈴井に託されます。
机の上に残った20枚のカード。手がかりは全く無いように見えますが、実は一枚だけ印をつけられたカードがありました。
立会人(審判役)である黄泉月るな(よもつき・るな)と一緒に見ていためありと皇伊月(すめらぎ・いつき)は鈴井より先に気づきます。
タロットカード自体はいつきが持っていたもので、細工がされたものでないことはいつきのモノローグから明らかです。
細工できるとしたら、きらりが最初にルールの説明をした場面。
「愚者」をジョーカーとして扱うという説明の際に、きらりはカードを手にしています。
この時、指先に付着したリップグロスをカードに付けたのだとしたら、印の付いたカードは「愚者」。一発逆転の可能な唯一のカードです。
鈴井の選択
めありといつきの様子を見て、鈴井くんもカードの印に気づきました。
それを選べば、現状マイナス20点の劣勢を跳ね返し、正位置か逆位置か、五分五分の所まで持ち込むことは可能です。
しかし。
もしそうならば、何故きらりは自分の順番の時、自分が印を付けたカードを選ばなかったのでしょうか。
正位置か逆位置かは、鈴井にとっては五分五分ですが、印を付けた本人であるきらりなら、印の位置から正逆を当てることもできたはずです。
自分の順番の前、鈴井はこの勝負に、自分もリスクを背負うと宣言しています。
「自分は夢子を失いたくない」
夢子が学園を去るということは、自分が夢子を失うということ、つまり失敗すれば自分も失うというリスクがある。
だからこそ、まるできらりに誘導されるように、きらりが印を付けたカードを選ぶことを良しとしませんでした。
自分の運命は自分で掴む。
それを示すかのように、鈴井は印のついていない19枚のカードの内から最後の1枚を選びます。
自分自身でカードを選んだ結果が「審判」。
マイナス20のビハインドを埋め、プラスマイナス0に持ち込むことができる唯一のカードでした。
タロットが示す運命は?
せっかくなので、今回引いたタロットカードの占いの結果も見ておきましょう。
過去ー世界(逆)不完全・遅すぎた・少ない成果
現在ー魔術師(正)解決方法・知力の向上
未来ー審判(正)信じる者は救われる。再出発。蘇る
過去に一定の成功を収めていたが、結果は満足できるものではなかった。
しかし現在、問題を解決する手段が見えている。
その結果、未来では気持ちも新たに再出発できる。
一人の人の運命として考えればこんな感じでしょうか。
次に、カードを引いたキャラクターとの関連性で見て行きましょう。
きらりー世界(逆):勝利を表す月桂樹で周囲を囲まれ、土・水・火・風の四大元素を揃えた「完璧」な世界。
正位置で出るとすごく良いカードですが、しかし逆位置で出ているということは、彼女がこの「世界」に満足できていないことの表れかも知れません。
夢子ー魔術師(正):「魔術師」は元々、人間の階級のうち、市井の人々を示すカードだったとも言われています。
それが後に、世界の秘密や知識を探求する魔術師に転じました。
また、いかさまトリックで人々を騙す「手品師」の意味もあるそうです。
ある意味、夢子らしいカードかも知れません。
鈴井ー審判(正):キリスト教の「最後の審判」を表す宗教的なカードです。
大天使ミカエルがラッパを鳴らし、善良な人々は復活します。
正位置で出たらラッキーなカード。
正に「信じるものは救われる」カードですが、信じる対象が夢子というのは、果たしていいのか悪いのか。
もう一人のきらり
こうして勝負は引き分けに終わりました。
しかしまだ、謎は残っています。
生徒会副会長の仮面を被って学園に残っていたきらり。
では、ヘリコプターで学園を去り、謎の会合に出席していたのは何者なのでしょうか。
るなはどうやら、その答えを知っているようです。
全てが終わった後、事の顛末を語るるなからの電話を受けているのは、もう一人のきらり…いえ、るなは彼女を「桃喰りりか」と呼んでいました。
きらりと瓜二つの彼女は一体何者なのか。
着物を脱ぎ捨て、再び百華王学園の制服を纏った時、彼女はどうするのでしょう。
副会長の仮面をかぶるのか、それとも髪を結い上げて、青いエナメルを爪に塗るのか。
スポンサーリンク第12話(最終話)「賭ケグルイの女」感想
最終回、ラスボス戦で華々しく終えるというよりは、散りばめられたネタを細かく拾ってきれいにまとめたな、という印象を受けました。
めありが鈴井くんに向ける気持ちに関しては、以前からちらほら匂わせてはいましたが、鈴井くんが夢子に賭ける覚悟を語った時のめありの反応で決定的なものになりました。
好きな相手はいじめちゃう系ツンデレ女子・めありの恋が叶う日は来るのでしょうか。
一方夢子は、きらりから鈴井のことを「良い従者ね」と言われて「お友達です」と否定しています。弱肉強食のこの学校で、「お友達」に信頼を寄せることはそれだけでリスク。
自分の人生をチップとして賭けて勝負をし、その勝負の行方を「お友達」に託すというなら、それはもう相手に命を賭けているのと同じことです。
夢子が語る「お友達」という言葉には、ただの仲良しでは終わらない重さが感じられますね。
恋といえばいつきの方ですが、前回白髪と化して倒れた豆生田くんのお見舞いに訪れているのがエンディングで描かれました(倒れてなお、ベッドに「ポチ」の札がかけられているのがこの学園の恐ろしい所ですが)。
新しい爪が生えてきても、ネイルアートはやらない所に、いつきの想いが見えますね。
きらりの真意は?
ところで今回の勝負、最後まで結局分からなかった所があります。
きらりが印を付けたのは、本当に「愚者」のカードだったのか。
だとしたら、何故きらりは自分でそのカードを選ばなかったのか。
これについて、いつきとめありの意見が別れていました。
いつき説
「印を付けたのは愚者のカードだが、きらりは敢えて愚者を選ばなかった」
→鈴井が印に気づいてそのカードを引いでも、正位置となるか逆位置となるかは分からない。
きらりがどんな数字のカードを引いても、結局は鈴井の「正位置か、逆位置か」の五分の勝負となる。
その五分の勝負を楽しむために、敢えて自分は別のカードを引いた(きらりはそういう性格だといつきは思っている)。
めあり説
「愚者のカードと見せかけて、印を付けたのは別のカード」
→「愚者」のカードを持ってジョーカーの説明をしているときに、こっそり2枚重ねていれば別のカードに印を付けることは可能。
「愚者」のカードに印が付いていると見せかけて、別のカードに誘導するきらりの罠。
きらりがどんな狙いで印を付けたのか、印を付けたカードは「愚者」なのか否か。
るなが開示を拒否したため、真相は闇の中です。
ただひとつ言えるのは、きらりが「愚者」に印を付け、尚且つそのカードを自分で取るような何のひねりもないイカサマをやるようなら、夢子もここまで満足しなかっただろうし、きらりもここまでの権力で学園に君臨することはできなかっただろうな、という事です。
そしてまた、ここで鈴井くんが素直に印のついたカードを選んでいたら、夢子もきらりもここまでこの勝負に満足しなかったでしょうね。
思えばすごい事です。凡人・鈴井くんが最後の勝負の最後のカードをひいて、あの夢子とあのきらりを満足させたんですから。
成長したというべきか、夢子に感化されたというべきか、良いことか悪いことかはわかりませんが、鈴井くんもまた、第1話の彼とは違うということで、お話がきれいにまとまりました。
ラストシーン、鈴井くんのナレーションで登場人物のその後に触れられていました。
皆夢子に関わって変わっていった中、当の夢子だけは変わらない。
実は、一番大きく変わったのは鈴井くん自身かも知れません。
「賭けの本質はリスクを負うこと」
第1話で提示されていた内容が回を追うごとに明確になり、最終的にテーマとして綺麗に着地したな、という印象です。
しかし、これで終わりというのも物足りないと思うのは、原作がまだ完結していないせいでしょうか。
もう一人のきらり=りりかについてもまだ何も明かされていないし、夢子のお姉さんも謎のまま。
そして何より気になるのが、「生徒会を解散する」という最後のきらりの宣言です。
生徒会が解散され、きらりが生徒会長の座を退く。
空いたその席に次に座るのは一体誰なのか。
時期生徒会長を狙っている、と噂されながら、実は本人全くその気のない夢子なのか。
その夢子を生徒会長に押し上げ、さらにその後釜に自分が座りたいいつきなのか。
豆生田くんが脱落したとは言え、まだまだ展望はカオスです。
面白かったけど、だからこそこの続きをいつか見てみたいですね。
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コメント
今晩は。
ついに終わりましたね。二期を期待できる綺麗な最終回でした。
実を言うと、最初これをギャンブルアニメとして見ていいか判りませんでした。
でも、見てるうち引き込まれて夢中になって妄想を働かせながら最後まで楽しみました。ええ、本当に楽しみでした。
また、視聴後にこちらの記事を読み、私の粗末なコメントを投稿するのも、ささやかな楽しみで、それに丁寧に答えていただいた、ウロコ様には本当に感謝しています。
ありがとうございました。
それでは、お体にお気を付けて、これからも楽しい記事を書いてください。
……と、ここでコメント終われば綺麗ななんだが……。
>指先に付着したリップグロスをカードに付けたのだとしたら
だけど、あれ、おそらく、口をカードで隠した時、目頭にシワを寄せ、口を3の字にしてキスマークを着けた。と思いますよ。
ただ、カードのキスマークの位置と、口をカードを隠した位置が違いましたので、絶対そうだ、とは言えないんですけどね。
次に最後の妄想。マークの着いたカードは愚者かどうか、ですが、ルール説明で会長が愚者を引く時、迷いもせず一発で愚者のカードを引いていた。とするとあのカードの山札はシャッフル前の山札の可能性が高い。新品のカードはきちんと順番通りの並びなので、フェイス面(図柄の面)を上にして、上から、
0愚者、1魔術師、2女司祭長、3女帝……、21世界
もしくは、
0愚者、21世界、20審判、19太陽……、1魔術師
の並びの、どちらかだと思う。(特殊な場合を除けばだが。)
とすると、芽亜里の言う二枚重ねでカードにマークを着けたら、1魔術師、21世界、のどちらかにキスマークが着いているはず。でも、実際は、どちらにもマークは着いていなかった。
つまり、キスマークは愚者で、芽亜里が間違っている。皇伊月ちゃんが、絶対に正しかった!。(爪、治ってよかったね。)
……、でもなー、私のカンでは、あのキスマークのカードは愚者では無い。と言っているんだよね。本当の所、さっぱり判りませんでした。
ところでルナ、お前の持ってるキスマークのカード、清華が狙っているぞ。逃げた方が良いんじゃない?。
と、妄想垂れ流しで失礼します。
(最後の最後まで、汚いコメントでご免なさいm(__)m。)
白昼夢さんこんにちは。いつもコメントありがとうございます。
単純に賭け事をテーマにするなら舞台はカジノやバーでも良い訳で、そこを敢えて「学園」にしているのがこの作品のキモなんじゃないかなと思います。
きらり生徒会長が印を付けたカードですが、ご指摘のシーンを見ると確かにカードにキスしているようにも見えますね。
流石にそこまでやるとバレそうな気もしますが、真相は如何に。本当に会長の生(?)キスマーク付きなら確かにすごいレアカードですね。
そして夢子はいつ会長の印に気づいていたのか。気づいていたら何故、印のないカードを引いたのか(鈴井くんと同じ理由でしょうか)。
本来占いでは「過去」「現在」「未来」の順なのに、敢えて夢子に先に引かせた会長の意図は?
会長が、夢子が印に気づいていることも計算に入れた上で夢子に先に引かせたのでしょうか?
「愚者」のカードに印を付けたのか、それとも他のカードに印を付けたのかは、二人の駆け引きと読み合いの中身によるでしょうね。
彼女たち二人の考えは、私たちのような凡人にはなかなか読めません…。
こちらこそ、最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。
最終回をようやく視聴しました。
「きらりの真意は?」の部分ですが、エピローグのシーンで
答えが描かれているように思います。
るなが寝そべって印の付いたカードを手にしているところを
上から見下ろすアングルがあるのですが、るなの周囲には
他のカードが絵柄が見える状態で散らばっています。
私自身はタロットカードに全然詳しくないので確認できませんでしたが、
タロットカードの絵柄を1つずつ照合していけば、最後に残った1枚が
印の付いたカードの絵柄、ということになりそうです。
如何でしょうか。
散らばったカードが、照合可能な精度で描かれているかが
課題になりそうですね。
それにしても格好良い鈴井くんが見られて満足でした。
アニメの最後で生徒会の解散を宣言してて、原作最新刊のCMでは
生徒会選挙に触れているところを見ると、原作のストックは
1巻分程度しか無いということでしょうか。
続きも是非アニメで見たいです。
るなが寝そべって印の付いたカードを手にしているシーンを
もう一度見てみたら、絵柄の見えないカードもかなりあるみたいですね。
確認不足のままコメントしてしまいすみませんでした。m(_ _)m
>凡人さん
るなが手にしているカード、やっぱりわからないようになっていましたね。
せっかくの雨宮慶太デザインなので、ゲームに出て来ない他の絵柄も見てみたかったのですが。
こちらこそ、ご返信が遅くなってすみません。コメントありがとうございました。