皆々様こんにちは。
『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完(以下『完』)担当のgatoです。
前回は着実に対案のプロムの協力者を集めつつも、結衣と雪乃がそれとなく想いを吐露し合うなど、色々重要な場面がありました。
そして今回は再び色んなキャラクターとのやり取りが見られるだけでなく、八幡達の関係にも変化が起こるようです。
これまでこの物語がある種の「終局」に向かっていると書いてきましたが、それは果たして善き終わりに向かっているのか…。
早速振り返ってみましょう。
原作ファンの方は初見勢の考察にニヤニヤしながら読んで頂ければと思います。
※コメント欄でのネタバレも厳禁でお願いします。
意地と友情
今回のエピソードの幕開けは葉山と八幡のやり取りからでした。
これは一波乱あるか…と思いきや、意外とすんなりと終わりましたね。
まぁ二人はとうに対立している次元を過ぎているから無理もないか…。
とはいえ、葉山はあくまで八幡とは対立するスタンスをとる模様。
これはこれで彼…もとい、彼ららしいといえるでしょう。
そもそも葉山は理想主義的な性善説論者であり、リアリストで性悪説論者的な八幡とは対極を成しています。
それでも八幡のことを認めているからこそ、あえて対立するスタンスをとれるわけです。
これを踏まえると、葉山と八幡の関係性はどこか雪乃と八幡の関係性に近しいものを感じさせます。
つまり「対立するからこそわかり合えている、繋がっている」みたいな具合ですね。
実際、葉山は八幡の発言から雪乃を連想していますしね。
葉山と八幡はお互いのスタンスを理解はできるものの、同調することはできません。
でも対立することでお互いに研鑽し合うことができ、ぶつかり合うことでお互いをより理解することができる。
いってしまえば、「喧嘩友達」みたいな関係性が彼らの間で育まれて友情なのでしょう。
また、八幡はこのやり取りの過程で自分が雪乃を助けることに拘る姿勢を「男の意地」と称しています。
うーん…この発言は雪乃の八幡への想いなどを踏まえたものかであるかは少し怪しいところですが…、八幡らしいといえば八幡らしい。
葉山がいう「本当にすべきこと」は恐らく雪ノ下母と真っ向対決したり、雪乃の案を全力でサポートすることでしょうけど、それができないからこそ八幡は遠回りな、屈折したやり方を選んでいるわけです。
そしてそうまでしても雪乃をサポートする姿勢が、まさに男の意地…って感じでしょうかね。
ところで、このやり取りの中では葉山が過去に雪乃を助けられなかったことを懺悔する場面も見られました。
雪乃を助けられなかった経験が葉山のいう「本当にすべきこと」につながっているんでしょうけど、あの懺悔には葉山なりの屈託も垣間見える気がします。
そしてこの懺悔は、後々の葉山と陽乃のやり取りにもつながっていくのでしょう。
海老名のペシミズム
久しぶりに登場した海老名と三浦ですが、中でも海老名と八幡のやり取りは興味深いものがありました。
対案プロモのために写真を撮る中、海老名は八幡と自分を比較して語っていました。
そもそも海老名は『続』での修学旅行のエピソードで見られたように、かなりのリアリストであり、ある種八幡と重なる部分も多くありました。
ただ、海老名が八幡と決定的に違う点は、自分に好意を持つ戸部の想いをあやふやにしてまで、自分を取り巻く人間関係の変容を拒んだ点です。
つまり「本物」を志向し続ける八幡と違い、海老名は「欺瞞(今回の台詞になぞらえるなら「まがい物」)」を選んだことですね。
とはいえ、海老名は「本物」それ自体を否定しておらず、だからこそ八幡の行為に対しても肯定的でした。
そして海老名が肯定的になったのは、八幡の行為の「ペシミズム」な部分に好感を持ったからですが…。
ペシミズム=悲観主義とは、さりげなく使うにしてはなかなかインパクトのある言葉ですね(笑)
まぁ「友情」や「仲間」といったパワーワードを妄信せず、雪乃を理解しているからこそあえて遠回りした八幡のスタンスは海老名好みの感じではありますね。
最低最悪の手段
今回はエピソードの時系列事に書いていますが、ここはちょっと順番を前後させて八幡VS雪乃の母を見ていきましょう。
陽乃曰く「まともじゃない論法」と柔和ながらも超然とした態度で立ちはだかる雪乃の母ですが、今回八幡は「最低最悪の手段」を行使することで状況を変えることに成功します。
それは過去に雪ノ下家が起こした事故を蒸し返すことでした。
いやー、確かにこれは酷い(笑)
本来あの状況においてなすべき理想は「プロムに反対する保護者と折り合いをつけること」ですが、八幡はそれを全てかなぐり捨てて雪乃の母の弱みを突くことを選んだわけですからね。
そもそも雪乃の母は保護者の中でも権力を持っており、だからこそ担ぎ出されたようですが、それは裏を返せば「雪乃の母さえどうにかすれば保護者は従う」ということでもあります。
だからこそ、八幡は雪乃の母をピンポイントで狙える弱みを出したのでしょう。
直接的な加害者ではないとはいえ、自分の関係者が起こした事故の被害者が関わっている企画(正確には当て馬を使う計画)を握りつぶしたとなると心証が最悪ですからね。
それを見越したからこそ、雪乃の母はあっさり八幡の要望を受け入れたのかもしれません。
あなたには言わない
八幡と結衣は対案プロムを保護者側にリークするため、陽乃に対案プロムについて話しますが…。
まぁ彼女相手に何事も起こらないわけはなく(笑)
陽乃は八幡や結衣、そして雪乃の関係を相変わらず共依存だと否定しますが、八幡や結衣は「ちゃんと終わらせなければならない」ために関わり続けると明言します。
さらに八幡は独特のアイロニーではぐらかしつつも、陽乃に面と向かって「あなたにホントのことはいわない」と宣言します。
個人的にこのやり取りの肝は八幡のこの台詞にあると思っています。
この台詞は実質的に陽乃の排除を宣言しているといっても過言ではありません。
正確には八幡・雪乃・結衣の三角関係に、これ以上陽乃を介入させないという感じでしょうか。
陽乃はこれまで様々な形で八幡達をかき回し、時には重要な示唆を与えてきましたが、彼女は協力的である一方、八幡達が目指す未来(あるいは「終わり」)とは違う方向性を見ていることを窺わせます。
もしかしたら陽乃は八幡達を撹乱し、サポートする以上に、自分が望む方向性へ誘導するために介入している節があるかもしれません。
陽乃について後述でも色々掘り下げますが、何はともあれ陽乃にある種の決別を宣言した八幡達は自分達が描く「終わり」を全うする覚悟を決めていることを窺わせます。
そして八幡達が揺るがないとわかったからこそ、陽乃は目線を合わせずに手を振って別れを告げるという態度をとったのでしょう。
本物、そしてまがい物
さきほど八幡が決別された陽乃ですが、葉山とのやり取りで彼女が抱える想いが明らかになりました。
対立するスタンスとはいえ、葉山は八幡達の関係性や彼のやり方には肯定的ですが、陽乃はそれを「共依存」というだけでなく、「まがい物」と切って捨てます。
この陽乃の頑なさの根源は明確に描写されなかったものの、葉山とのやり取りである程度予想ができそうです。
前述した葉山の雪乃に関する失敗談、陽乃があくまで八幡達が失敗すると主張した時の「そうだったでしょ」という台詞から察するに、恐らく陽乃・雪乃・葉山は八幡・雪乃・結衣と似たような関係性を持っていたのではないでしょうか。
そして陽乃達は失敗し、雪乃をさらに孤立させることになり、関係性はある種の破綻を迎えた…この経験があるからこそ、陽乃は頑なになっているのかもしれません。
ただ、陽乃の頑なさにはまた別の感情が入り混じっているような感じがします。
陽乃は八幡達の関係を「まがい物」と切り捨てますが、それを否定する八幡や結衣の言葉を否定していません。
また、八幡達を肯定する葉山が「そこから成長する想いもある」と語った際、それを陽乃は「ありえない」と反論しました。
一見するとただの否定の文句のようですが、「ありえない」は成否それぞれの可能性があることを踏まえたうえで使う表現です。
いうなれば全否定ではなく、逆説的に成功する可能性を踏まえたうえで否定する表現なわけです。
つまり、陽乃は八幡達を客観的に分析したうえで「まがい物」と評しているというよりも、「本物」になり得る要素があるとわかたうえで(実際葉山はわかっている)、それでも「まがい物」と評しているという状態になります。
だとしたら、「まがい物」と断ずる陽乃には特定の感情がバイアスとしてかかっていると見るべきでしょう。
その特定の感情の実在は葉山と陽乃の以下のやり取りで示唆されています。
陽乃「いいえ…大好きよ」
しかし、このやり取りは特定の感情の実在は示唆しているものの、その対象までは明らかになっていません。
このやり取りを見る限り、陽乃の「憎んでいる/大好き」の対象は葉山に見えますが、個人的にこれは別の人物に向けられているような気がします。
この人物が誰なのか、陽乃ついて整理しつつあれこれ推測してみましょう。
陽乃は雪乃に対して屈折した愛情を注いでいますが、雪乃の救済には失敗しています。
もしかしたら、それがきっかけで陽乃は見守ること(「離れること」)を選択するようになったのかもしれません。
ただ、それなのにあれこれ手を尽くして雪乃を助けようとしている者達がいる。
自分達は失敗したのに、また同じことを繰り返そうとしている連中がいる…かと思いきや、彼らの行為は成功の兆しを見せつつある。
そりゃ陽乃からしたら面白くないでしょうけど、それでも陽乃は雪乃を愛する者としての、彼らの雪乃への想いを否定することはできない。
それでもかつての失敗が重くのしかかっているが故に、彼らを否定してしまう。
陽乃が「まがい物」と断じてしまうファクターとなっている感情は、このように愛情と憎しみが表裏一体となった感情…いうなれば「愛憎」ではないでしょうか。
そしてその「愛憎」の矛先は誰か…となると、候補が二人出てきます。
もちろん八幡と結衣です。
問題はこの中のどちらかですが、個人的には八幡だと思っています。
陽乃と八幡は姉/兄という家族の中の立ち位置で重なりますし、雪乃を重視するスタンスも同様です。
何より陽乃もまた「本物」を志向する人間である点も重大でしょう。
過去の失敗談を踏まえるなら、陽乃は「失敗した八幡」と捉えられるかと思います。
かつての自分と重ねられる八幡に愛おしさを覚えつつも、自分にはできなかったことをやろうとしている彼に憎しみも覚えてしまう…。
そんな八幡に向けられた感情が、「愛憎」という形になっているのでしょう。
結衣は結衣で「愛憎」の対象にはなり得そうですが、陽乃は結衣のように板挟みになる印象はあまりありません。
確かに八幡に依存され、また雪乃への友情を捨てられないが故に大人にならざるを得ない結衣は年長者の陽乃に重ならなくもありません。
ただ、全体の関係を俯瞰できるがために板挟みになってしまう結衣の在り方は、どちらかというと葉山に重なる印象です。
何より結衣は「本物」を手にするべきかどうかで悩んでいる立場なので、「本物」を志向する陽乃とはちょっとズレちゃいますしね。
だから陽乃が結衣に「愛憎」を向けるとは考えにくいんですよね。
他方で結衣の「共依存じゃない。だって痛みがあるから」という台詞は、あくまで彼女達の関係を「まがい物」と断じたい陽乃に突き刺さったでしょう。
見守るという形で「離れる」ことを選んだ陽乃は、その実結衣がいう所の「痛み」を耐えられなかったと解釈することもできます。
いずれにせよ、陽乃の屈折や「愛憎」は雪乃の救済の失敗によって起こっており、そして八幡達がその矛先となっているといえそうです。
…でも、過去の記事で僕が書いたように、陽乃を「雪ノ下家の娘」と見た場合、その愛憎の矛先は雪乃にもなり得るんだよなぁ。
一応解釈を誤った際の予防線として、この説も持っておきたい(笑)
正しい終わり
陽乃絡みで色々あったけど、プロムは無事に雪乃案が通ったので大団円…かと思いきや、案の定そうはなりませんでした。
雪乃は八幡にこれまでの勝負も関係も終わらせ、なんと「結衣のお願い」を聞くように八幡にいいます。
それをこともあろうか八幡はあっさり受け入れるわけで…。
前回の記事で八幡は実は恋愛感情に気づいている可能性に触れましたが、これはダメじゃないか(笑)
というか、雪乃が自分と八幡の関係を「まがい物」といっているのをあっさり受け入れていいのか。
ここは足掻くところじゃないのか…と色々思いますが、雪乃の行動は理解できないものではありません。
今回のプロムでも、体裁は勝負でしたが、実際的にはそれ自体が八幡のフォローでした。
何より雪乃にとって重要だった母親との直接対決も、八幡が片付けてしまいましたからね。
八幡に依存している状況は変わらない…だから雪乃はこの関係を「まがい物」と捉え、終わらせる道を選んだのでしょう。
しかし、この決断は八幡だけでなく奉仕部全体に向けられたものでもあります。
雪乃が結衣に八幡を譲る選択をしたのは、自分が依存することで結衣が八幡を諦めることを避けたかったのでしょう。
大切な友人の想いを成就させたい、だからこそ自分の想いが邪魔になってはいけない…そんな感情も多分に含まれていたのでしょうね。
今回のプロムで八幡と雪乃の関係はそれなりに進展するかと思いましたが、実際は後退…それどころか思いのほか早く終局がやってきてしまいましたね。
うーん、個人的にこの状況を打破するのは八幡が恋愛感情を自覚するところにあると思っています。
というか自覚しているなら、雪乃にあんな悲しい決断をさせるはずがないですからね。
それに結衣の振る舞い方もまた大きなファクターになるでしょう。
いずれにせよ、これを「正しい終わり」にしたら陽乃に啖呵を切ったことも、何もかもが無為になります。
雪乃が(恐らく)先走ってしまった終わりをどう覆すか、それが八幡と結衣の今後の課題になりそうですね。
『俺ガイル完』第8話感想
陽乃や雪乃の母相手の八幡の立ち回りがありつつも…ラストで雪乃がまさかの終わりを宣言するという急展開。
プロムのことよりも、奉仕部がどうなるかの方に興味がいっちゃいましたね(笑)
雪乃と八幡のやり取りも、奉仕部の教室が舞台だったり、最初の出会いを彷彿とさせる構図があったりと、最終回の感じがすごかった(笑)
さてはて、雪乃がもたらしてしまった終わりをどうするか…。
次回に期待ですね。
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コメント
8話が急展開過ぎて消化するのに時間かかったわー
gotoさんの記事わかりやすくてすげー助かります
およよさんコメントありがとうございます!
>gotoさんの記事わかりやすくてすげー助かります
ありがたいお言葉…痛み入ります。。
正直僕もおっかなびっくりで、適切に解釈できているか、いつも不安なんですけどね(笑)
今後もお付き合いいただけたら幸いです!
いまさらのコメントでごめんなさい。
原作未読だとこういう解釈になるんだなぁ、とちょっと驚きました。
私は原作13巻まで読んで(最終巻の14巻は読まずに)アニメの俺ガイル完を見たので、かなり異なる解釈をしています。
率直に言えば、俺ガイル完は尺が足りなかったので、この第8話は無理やり詰め込んだ感が強く、結局、原作の良さを上手く表現し切れてません。
雪ノ下の身を切るような想い、由比ヶ浜の悲痛な叫び、比企谷が苦しんで苦しんで煩悶してる姿、、、そして、雪ノ下が仕掛けた罠も上手く表現されてませんでした。
全体的には、俺ガイル完は素晴らしかったですが、この第8話だけは失敗回だったと思います。
とーたさんコメントありがとうございます!
原作未読なのでアニメ化において何が失敗しているのかがわからないというネックが浮き彫りになっちゃいましたね。。
ところで、原作での相当感では陽乃のくだりはどのように描かれていましたでしょうか?
個人的に、第8話を見た際は陽乃の印象が強かったのでそこがどうなっていたかを知りたいところです。