皆々様こんにちは。
『平家物語』担当のgatoです。
前回は徳子といい感じに打ち解けはじめた高倉上皇が、そして平家の繁栄の立役者である清盛がそれぞれ病没しました。
頼朝を筆頭とする反平家勢力が拡大する中、ついに平家滅亡のカウントダウンが始まります。
時代が動く中、資盛(すけもり)の気づかい(?)で平家を追い出されたびわはどこに行くのか…。
悲劇の足音を感じながら、今回もじっくり振り返っていきます。
目次
びわの旅
前回資盛の計らい(?)で追い出されたびわは、母親を探す旅に出ていました。
母を訪ねて
兼ねてから謎に包まれていたびわの母親ですが、彼女が「浅黄の方(あさぎのかた)」と呼ばれる人物であることが今回わかりました。
越後にいたものの、びわとすれ違いで京都に戻ってしまったらしく、会えずじまいでしたが…。
というか、この浅黄の方、どうやらオリジナルっぽいんですよね…調べても出てこないし…。
でも「城資永(じょうすけなが)の側室」というなかなか突っ込んだ設定が出てきているので、史実の人物をモデルにしてそうな予感もしますが…今の段階ではなんともいえませんね。
というか歴史に詳しい人教えて欲しい(笑)
それにしても、越後平氏の資永の側室なんて、びわといい彼女の父といい、びわの一家はつくづく平家と縁がありますね。
元白拍子で武士の側室になるあたり、清盛の愛人になった祇王(ぎおう)とも重なる感じもします。
第2話の記事でびわが祇王と母親を重ねた点について触れましたが、どうやらその路線で描かれる感じがしそうですね。
まあでも浅黄の方が一体誰なのか、モデルがいるのかは登場するまで何とも言えません。
勉強が足りなくて申し訳ない…。
びわの「今」
今回はあまり出番がなかったびわですが、個人的に彼女の描写で気になるところがありました。
旅の道中、びわが笑顔を浮かべている場面が心なしか多いんですよね。
もちろん浅黄の方とすれ違いになった際は凹んでいたし、終盤で義仲の横暴を見た際は怒っていましたが、冒頭のびわは琵琶を楽しげに引いていたり、祇王の妹の妓女(ぎじょ)と話していた際も笑顔を浮かべていました。
何より印象的だったのが、祇王や仏御前(ほとけごぜん)が故人となっていたことに対して、笑顔で「知っている」と言った場面です。
あの口ぶりからして、恐らくびわは未来視なり過去視(霊視)なりをして祇王や仏御前が故人であることをすでに把握していたのでしょう。
そして高倉上皇の霊を視た時と同じように、祇王や仏御前が穏やかな余生を送ったことを知っていたからこそ、笑顔を浮かべられたのでしょう。
辛い目に遭った分、せめて安らかに逝けてよかった…みたいな感じで。
それに、もしかしたらびわは自分の能力を受け容れつつあるのかな…とも感じました。
清盛の病没の際、びわは動揺した様子で霊となった重盛に問いかけていましたが、今回のびわは落ち着いた様子を見せていました。
追い出すという形だったにせよ、資盛の思いやりを感じたびわの中で何か心境の変化があったのかもしれませんね。
うーん、正直それが具体的に何なのか、今の時点では上手く言語化できないんですよねぇ…。
ただ以前重盛が問いかけた「赦す」に関する事柄のような気はします。
自分を想って平家から引き離す資盛と見て、びわの中で何かが赦されたのではないでしょうか。
…すごい曖昧で申し訳ないですが、今回はこんな感じで(笑)
その内ちゃんと言語化します(笑)
平家の奮闘
ここでは今回起こった2つの戦について簡単に掘り下げていきます。
墨俣川の戦い
冒頭で触れられた墨俣川(すのまたがわ)の戦いですが、作中では頼朝が負けたように描写されていましたが、実際に敗れたのは彼の叔父の源行家です。
今作では相手をわかりやすくするために源氏=頼朝と統一している感じでしたが、この時の行家は頼朝から独立して動いていたらしく、厳密にいうと頼朝の勢力とは別の勢力を築いていたようです。
ところで、作中では平家が配送する源氏を深追いしなかったと語られていましたが、ここには色々事情があったようです。
行家のバックにいる頼朝の増援を恐れたこともありますが、当時は飢饉(ききん)が発生しており、平家は兵糧不足に悩まされていました。
そのため、長期間戦える状態ではなかったそうです。
第6話の富士川の戦いでは「平家の兵士が軟弱になった」という話が出ていましたが、この段階では兵糧の確保すら難しくなるなど、軍の維持も困難になりつつあったことがわかります。
倶利伽羅峠の戦い
木曽義仲を有名にした戦といっても過言ではない戦が「倶利伽羅峠(くりからとうげ)の戦い」です。
平家の大群相手に夜襲をかけ、松明をつけた牛をけしかけながら攻め立てて断崖に追いやるという義仲の奇策により、平家の大群はほとんどが壊滅。
戦力の大半を失った平家は京都を放棄する羽目になります(牛を使ったというくだりは創作ともいわれていますが…)。
ある意味この戦いは平家の命運を決めた戦いであり、これ以降平家は京都に戻ることなく、西国で滅びの道を歩んでいきます。
木曽義仲大暴れ
前回は顔見せ程度の登場だったが木曽義仲ですが、今回は大活躍でしたね。
それにしても「山猿」といわれるだけあって、今作の義仲は野生児感がすごい(笑)
ただ、優れた軍人として遺憾なく才能を発揮させていましたね。
維盛がかわいそうだけど…。
ちなみに作中で触れられたように、義仲は頼朝の従兄弟ですが、父の義賢(よしかた)が頼朝の父である美朝と対立したために討たれており、2歳の頃に信濃に逃れてます。
つまり義仲にとって頼朝は憎んでいてもおかしくない相手ですが、彼の口ぶりを見るとそこまで憎しみは持っておらず、むしろ「源氏に二人の将軍あり」と同族として仲間意識を持っていた感じがしますね。
幼い義仲を信濃に匿った中原兼遠も頼朝と共に戦うことに乗り気だったようですし、ちょっと意外な印象があります。
第6話の記事で今作における源氏のスタンスが「一門以外の力を結集させて戦う」という点だと考察しましたが、義仲は一門にこだわる一面を持っているキャラクターのようですね。
ただ、義仲の末路を考えると…。
やはり今作において滅びる側は「一門=家族への愛情が強い者(あるいは一家)」という共通項があるのかもしれません。
他方で、京都に乗り込んだ義仲の兵士が略奪をする様が、過去にびわの父の命を奪うきっかけになった禿(かむろ)と重ねられる場面がありました。
人生の大半を信濃の山中で過ごした義仲は朝廷との接し方や京都の扱い方がイマイチわかっていない人物だったらしく、実際に兵士の略奪などを野放しにしていたそうです。
そう考えると、今作では平家や源氏に関わらず、権力を得た勢力の横暴が批判的に描かれる傾向が強いように感じます。
徳子の本懐
義仲の侵攻により、都落ちを余儀なくされた平家の中でも、徳子は毅然と振る舞っていましたね。
「帝がいらっしゃるところが都」と、徳子は国母として天皇を守り抜く覚悟を決めていることが窺えます。
前回の記事で高倉上皇が息を引き取ってから、徳子は清盛に逆らうなど、己を貫く強さをみせていました。
自分の息子を、何よりも愛する夫との間にもうけた息子を守り抜く。
徳子にとって、安徳天皇を守ることは自分が信じた愛そのものを守ることに等しいのでしょう。
他方で、劇中での台詞から、彼女の望みは源氏打倒でもなければ、平家の再興でもなく、「敵が追って来れない場所で安徳天皇と静かに穏やかに暮らすこと」でした。
悲しいかな、徳子が平家の一員である限り、安徳天皇が平家の血を継ぐ天皇である限り、そして平家打倒を目指す源氏が相手である限り、それは決して叶わない夢です。
辛辣に言ってしまうなら、徳子のこの台詞は自分の立場や戦を甘く考えていると言わざるを得ません。
ただ、例えどんなに甘い夢だとしても、誰もが抱く当たり前の「祈り」が…ここには確かにあるのです。
兄弟達の奔走
今回は都落ちに際して維盛をはじめとする平家の若者達の葛藤が描かれました。
維盛の戦い
ここ最近散々な目に遭っている維盛ですが、今回はより酷い目に遭っていましたね…。
富士川の戦いから、より武士らしくなる決意した維盛は墨俣川の戦いなどで活躍しますが、倶利伽羅峠の戦いで大敗し、軍の大半を失うだけでなく都落ちのきっかけすら作ってしまいます。
そんな維盛が自責の念に駆られるのも無理はありません。
しかも都落ちに際して妻子と別れるという展開…。
維盛が不憫過ぎて色々辛いですね…。
今作における維盛は気弱な自分を変えるために努力し続けた人物だといえます。
戦の度に化粧をするのも、気弱な自分からの決別を象徴しているのでしょう。
しかし、だからこそ維盛は自分を追い詰めてしまったのでしょう。
自分を追い詰め、誰の励ましの言葉も届かずに疲弊していく様は、どことなく父親の重盛を彷彿とさせます。
ただ、重盛は自分と似た能力を持つびわがいたことで幾分孤独を緩和できている感じがしました。
対して維盛にはそのような人物はいません。
重盛の嫡男であり、小松家(重盛の系統)のトップであることの自負が、周囲と孤独を分け合えなくしたのかもしれませんね。
資盛の板挟み
前回はリアリストらしく、ズケズケとものを言うことが多く、冷徹なフリをしてびわを滅びゆく平家から放した資盛ですが、今回は違う印象ありましたね。
「戦より曲水の宴の方が楽しい」と言ったり、清経と違い維盛に何も言葉をかけられずにいるなど、全体的に「口ごもっている」ような印象です。
個人的に資盛はリアリストで、どちらかというとネガティブ思考な人物だと思っていますが、もしかしたら今回の資盛は都落ちに際して本格的に滅亡の道を突き進む状況を目の当たりにし、何も言えずにいるのかもしれません。
もう滅亡の道は避けられない、だけど維盛が一生懸命戦い、清経が精一杯フォローしている。
だからこそ、資盛は何も言えずにいるのでしょう。
散々減らず口を叩いても、維盛も清経も大切な家族ですからね。
個人的に、いつもの資盛なら諦めを口にしていたと思います。
しかし、懸命に足掻く維盛や清経、そして徳子の姿を見て、資盛なりにどのように現状と向き合えばよいのか考えているのではないでしょうか。
ところで、久しぶり維盛と想いを交わす伊子(いこ)が出てきましたが、この段階ではすでに恋仲になっているようです。
ただ、今回描写されたように、都落ちの際に彼女とは生き別れになり、その後二度と会うことはありません。
文のやり取りこそ続けていたそうですが…それがかえって物悲しいですね。
本当にさりげないですが、資盛もまた、悲しい別れを経験していたわけです。
清経の涙と敦盛の熱意
これまで天真爛漫過ぎて個人的に何を考えているわからない奴(笑)だった清経ですが、今回は何かと泣いている場面が多かったですね。
正直、清経は維盛や資盛と比べると一番楽観的で、悪くいうと現実が見えていないところがあると思います。
平家の状況が着実に悪くなっているのに、まだ「どうにかなる」と思っている節がありますよね。
また、福原の浜辺でありし日々を想って涙を零すなど、「戦って現状を変える」という武士らしい意気も乏しい印象があります(このあたりは清盛や敦盛と真逆ですね)。
ただ、自責する維盛に涙ながらにフォローしたりと、清経は兄弟の中でも最も家族思いです。
清経は武士としては決してよい振る舞いをしていたとはいえませんが、真っ直ぐに家族を想える人物だったからこそ、維盛や資盛との兄弟の絆が残っていたのではないでしょうか。
楽観的な一面と悲観的な一面が強調された清経に対し、敦盛はどこまでも意気盛んに現状を変えたいと口にしていました。
良くも悪くも今作における敦盛は戦らしい戦を経験しておらず、武士らしく戦いといっても子供じみた感じがしてしまいますが、個人的に彼の真っ直ぐさは清盛に通ずるものがあると思っています。
「息苦しい世界に風穴を空けた」と豪語する清盛は、自分の力で生きにくい世界を変えた武士らしい強さを持っていました。
まだまだ清盛の域には達していない敦盛ですが、その想いは清盛の強さに重ねられるところがあります。
ある意味、敦盛は落ちぶれる平家に残された武士らしさと清らかさの象徴かもしれませんね。
ただ、そろそろ一ノ谷の戦いが起こるんだよなぁ…。
だとしたら敦盛は…。
いやぁ~考えたくねぇ(笑)
優しい家族
さて、今回は都落ちをする平家一族の描かれ方についてまとめてみましょう。
維盛や重衡(しげひら)が懸命に戦う一方で、宗盛は宴三昧をするなど、平家の中でも現状に対する危機感に温度差が見られました。
維盛が疑問に思うのも無理はないですし、ある意味負けて当然の有様です。
実際、今作における宗盛は愚鈍ですし、宴中に寝ちゃう知盛も、維盛が戦っている裏で曲水の宴に興じる清経も、緊張感が欠けている印象は拭えません。
ただ、個人的に興味深かったのが、一門が都落ちする中で誰も対立しないんですよね。
京都を焼き払った宗盛に重盛が困惑する程度で、倶利伽羅峠の戦いで惨敗した維盛を責めたり、情勢の悪化に錯乱する様子はありません。
むしろ安徳天皇を元気づける知盛や、孫を連れ出すために上手く言いくるめる時子の言動には優しさすら感じさせます。
ここまでくると何の保証もなく前向きな宗盛ですら好感をもってしまう(笑)
そんな描写を見ているとなんていうか…この時の平家はすごく「家族らしい」ですよね。
恐らく宗盛をはじめとする平家は、今回の段階でいよいよ滅亡が近いことをどこかで悟っていたのかもしれません。
しかしそれでもみんなで手を取り合い、励まし合いながらどうにか頑張っていこうとしています。
正直、彼らの明るさは空元気ですが、健気でもあります。
そして何よりも家族らしい。
恐らくまだ幼少の安徳天皇を不安がらせないようにするためでもあるでしょうけど、良くも悪くも絶対的な支配者として君臨していた清盛に畏怖していた頃と比べると、一番家族らしくまとまっている印象がありました。
例えそれが空元気でも、ただの虚勢に過ぎなくても、支え合う彼らの健気さは決して否定できるものではないでしょう。
でも、これも一時的なものでしょうね…。
この先もっとえぐいことが起こるわけですからね…。
tips:一門都落ち
平家落日の象徴もいえる一門都落ちですが、これは平家にとって致命的な出来事でした。
当時の政治の中枢だった都を放棄する段階でヤバいですが、何より当時の政治体制から弾かれたことが致命的でした。
「帝がいるところが都」と徳子が語ったように、安徳天皇や皇位継承に必要な三種の神器を持ちだせてはいましたが、院政を担い得る立場の後白河法皇が逃亡しているために、この時期の平家の政治的な実権はかなり弱まっています。
当然まだ子供の安徳天皇に政治はできませんし、当時の平家には摂政・関白に匹敵する実権を持つ人物もいない。
おまけに京都から離れているために政治へのアクセスすら難しい。
正直、都落ちしている段階でわりと平家は詰んでいるのですが、逃げた大宰府(だざいふ)でさらに危機的状況に陥るわけで…。
ただ、決して平家は負けっぱなしというわけではありません。
恐らく次回語られますが、この後の水島の戦いで義仲を打倒し、一時期は福原を取り戻すまでに勢力を回復させます。
しかし、この後出てくる義経というとんでもないバケモノによって、都への帰還という平家の望みは完全に絶たれることになるわけです。
『平家物語』第8話感想
義仲登場からいささか駆け足で展開した印象がありますが、個人的に都落ちに際する平家が興味深かったですね。
まぁ維盛や清経はネガティブですが…まだ平家に前向きさが残されている印象がありました。
というか、安徳天皇をかわいく描写するのやめてくれ…。
結末を知っている分、マジで辛いから…。
そして第9話…公式サイトのあらすじ見たら、これもう一ノ谷の戦いまでやるのかな…。
だとしたら次回は…。
わかってはいましたけど、いよいよ来てしまいそうですね…。
何はともあれ、次回を楽しみに…しにくいけどがんばります…(笑)
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