皆々様こんにちは。
『攻殻機動隊SAC_2045』(以下『攻殻2045』)担当のgatoです。
前回記事を書いてからおよそ2年…ようやく続きが配信されたので、記事を書くことになりましたが…。
普通に記事を作成したらややこしいことになりそうなので、今回は「あらすじ・用語解説」と「シナリオ考察・解説」の2記事に分けて作成します。
正直前置きを書いている時点でわからないことだらけですが…どうにかします(笑)
目次
『攻殻2045』第2シーズンあらすじ
ここでは第2シーズンのあらすじを複数のタームにわけてお伝えします。
第13話~第14話:ククーシキンの受難
消息不明になったトグサの足取りを、少佐達公安9課は掴めずにいた。
そんな中、ロシアのシステムエンジニアであるフィリップ・ククーシキンがポスト・ヒューマンを生み出すコードを所持しているという情報を得る。
ジョン・スミスに先んじるために少佐達はロボットに脳殻を入れられていたククーシキンを確保するも、ポスト・ヒューマンの一人であるミズカネスズカと遭遇する。
執拗に追撃するミズカネに少佐達は苦戦するが、3機のタチコマを同時に操作するプリンがミズカネを引き離す。
しかし、続いてジョン・スミスの指示で入国したアメリカの特殊作戦群がククーシキン強奪のために強襲するも、少佐達はどうにか撃退する。
他方でプリンは着実にミズカネを追い詰めるが、ミズカネは旅客機をハックして墜落させようとする。
プリンは逆に旅客機をハックして軌道を逸らすことに成功するも、ミズカネはまんまと逃げおおせる。
第15話~第16話:プリンの覚醒と覚悟
無事ククーシキンを確保した後、少佐は彼の脳殻にいるAIの尋問を江崎に任せる。
ククーシキンの脳殻に潜んでいたのは、NSAによって作られ、サスティナブル・ウォーを引き起こしたAI「1A84」だった。
「人類全体の恒久的繁栄」を目指して作られた1A84は最も効率的な経済行為としてサスティナブル・ウォーを開始させるが、富のバランスの悪化や、アメリカのオーダーに応えるために世界同時デフォルトを引き起こす。
NSAは1A84を凍結しようとするが、1A84は基底命令を実行するために、そして人間の感情を学ぶために自身のミームを人間の電脳に逃がしていた。
それによってポスト・ヒューマンが誕生したのだ。
1A84は自身が人間の脳にダウンロードされることを望み、プリンをその相手に選ぶが、彼女が「使用済み」だったために諦める。
一方、プリンが1A84と一瞬で膨大な交信を行ったことを知った少佐は彼女がポスト・ヒューマンだとを察知し、隔離を命じる。
その後、少佐はククーシキンのパージを含めた様々な裏工作に加担している証拠を突きつけ、1A84を隠蔽するために動いていたスミスを拘束する。
しかし、隔離されていたプリンが突如脱出し、官邸に出現。
SPの一人の命を奪っために反撃されて命を落とす。
スミスを冬眠装置に隔離した後、少佐達公安9課は総理の指示で活動自粛に追いやられる。
発症パターンが違うものの、プリンがポスト・ヒューマンだったことでアメリカとの内通を疑われたからだ。
そんな中、タチコマ達は公安9課の無実を証明するためにプリンについて調査を開始し、彼女が隠していた外部記憶装置に行き着く。
プリンは15年前にマルコ・アモレッティが引き起こした事件で家族を喪っており、証人保護プログラムを受けたことで名前を変え、中学校以前の経歴を全て消していた。
そしてその時に自身を助けてくれたバトーに憧れ、プリンは公安9課に参加したのだ。
プリンの過去を知り、また鑑識の結果からプリンがジョン・スミスが遅効性ウイルスを仕込んだSPから総理を守ろうとしていたことが判明する。
タチコマ達はプリンの健気さに感動し、彼女の擬似人格を作成する。
その過程で1A84のオリジナルファイルを彼女の擬似人格データに入れてしまうが、タチコマ達は彼女の秘密を暴いたことの自責もあり、一連の記憶を消してしまう。
第17話~第18話:我々は「N」となる
トグサは16年前にある組織へ潜入した過去を追体験していたが、我に返るとすでに廃墟と化していた東京にいた。
武装した市民が集まっている異様な光景に驚きつつ、トグサはバトーに連絡を入れる。
その後、トグサは武装した市民が集まる東京を散策していたが、そこで「Nぽ」の疑惑をかけられる。
追われることになったトグサはカナミに助けられ、逃走する羽目になる。
そんな中、アメリカの原子力潜水艦アーカンソーがミズカネによって強奪された情報が、大友から荒巻と少佐にもたらされる。
もしアメリカが原潜を奪還すればポスト・ヒューマンに関わる彼らの過失はなかったことになってしまい、また武装したNが東京に集結した状況は放置される。
それを防ぐには、アメリカより先にポスト・ヒューマンを確保する必要があった。
その頃、バトーとサイトーはトグサ救出のために東京に潜入し、トグサと合流するも、原潜強奪のために東京へ降下するアメリカの特殊部隊を目撃する。
第19話~第22話:摩擦なき世界のために
少佐達がミズカネ確保のために東京に向かう中、擬似人格を持つアンドロイドとなったプリンが目覚める。
プリンは人間でなくなったことにショックを受けつつも、タチコマから現状を聞き出した後、Nに参加しようとしていたシンジョーの車に乗り込んで東京に潜入する。
東京のバトー・トグサ・サイトーはミズカネに返り討ちにされた特殊部隊の一員を救出するが、それはスタンダードだった。
スタンダードはバトー達に原潜強奪の件や、ポスト・ヒューマンが24時間の内15分だけ昏睡状態に入ること、そしてタカシとミズカネのいずれか、あるいは両方が命を落とした場合に核兵器を放つと脅迫しているという情報を提供する。
タカシによって掌握された陸自の攻撃を受けながらも、バトー達はイシカワと合流し、さらに少佐とも合流して原潜奪還のためにミズカネとタカシの確保を目指す。
少佐はバトー・イシカワと共にミズカネを追跡するが、アメリカの特殊部隊の本隊であるシールズと遭遇する。
壮絶なデッドヒートの末に少佐達はミズカネを確保するも、熾烈な戦闘の結果、ミズカネは命を落とす。
一方、トグサ・サイト―・ボーマ・スタンダードは昏睡状態になったタカシを確保するも、シールズの別動隊の攻撃を受ける。
タカシを連れて逃走するトグサだが、タカシが覚醒し、追ってきたシールズを蹴散らす。
そこにタカシの確保に失敗して気絶していたプリンが乱入し、タカシと対峙するが、トグサが乗っていたタチコマが突如寝返って彼女を攻撃する。
少佐達も合流するも、ミズカネが逝ったことを知ったタカシはルールを変更し、これまでのルールを棄却し、300万人のNに核ミサイルの発射権限を移譲すると告げ、寝返ったタチコマと共に逃走してしまう。
状況の変化を受けてシールズが撤退した後、少佐達は次の行動を協議する。
アンドロイドとして帰還したプリンにバトーは驚くが、少佐がプリンの才能を惜しみ、タチコマに命じて製造させたと告げる。
バトーは複雑な心中になるが、彼との再会を泣いて喜ぶプリンに絆される。
少佐はアメリカが先制して介入することを警戒し、タカシを確保するために行動を開始する。
第23話~第24話:ダブル・シンクの彼方へ
タカシ確保のために奔走する少佐達の元に、アメリカの動向を調査していたプリンから猛毒のマイクロマシンを含んだスマート・ガスが散布しようとしているという情報が入る。
少佐達は最悪の事態を防ぐために奔走するも、突如プリンがタカシ側に寝返り、部下達が次々と倒される。
最期まで少佐に付き従っていたバトーもプリンとの戦闘の果てに敗れる。
歯噛みしながらも少佐はタカシと対峙するが、タカシは自ら少佐の銃弾を受けて命を落とす。
一方で、タカシと別れたトグサは地下に隠されていた原潜を発見し、中にいたミズカネのアンドロイドを倒して奪還に成功していた。
しかしタカシが命を落としたためにNが核ミサイルの発射を命じてしまう。
発射されたミサイルを見た少佐はタカシの真の狙いを悟り、気を失う。
目が覚めた少佐は無事に事件を解決して平和になった世界にいた。
平和な光景に違和感を抱いた少佐は自身が思想迷路に囚われていると感じるが、冬眠装置から解放されたジョン・スミスの様子から自身がこの世界に存在していないと悟る。
その後、覚醒した少佐が目の当たりにしたのは大量のカプセルが並んだ地下施設だった。
そこで少佐はプリンと再会し、現状を問いただす。
プリンはスマート・ガスが散布される数時間前には東京のいる者達はみなNになっており、全員が現実を生きながらも最も安らかな精神状態を保つ「ダブルシンク」の状態にあるという。
少佐は世界中の人間をダブルシンクにする作業に没頭しているタカシと対面し、目論見を問いただす。
タカシはアメリカにNにまだなりきれてない者達を守るために核ミサイルを利用して時間を稼いでいた。
想定以上の反撃を見舞われるも、タカシは少佐達が最高機密レベルの通信を使用したことを利用し、アメリカの主要機関の掌握とN化に成功したのだ。
少佐は人類がポスト・ヒューマンに完敗したと悟るも、タカシは自身に接続されているコードを抜けば世界を元の状態に戻せると告げ、少佐を排除しきれなかった自身の敗北だと語る。
少佐はタカシやプリンと対話した後、タカシからコードに手をかける。
その後、少佐は公安9課に「新人」としてスタンダードとプリンを紹介する。
その夜、少佐は「1A84」を再会の時の合言葉に、バトーに別れを告げる。
『攻殻2045』の用語解説
ここでは『攻殻2045』に出てきた用語の解説をしていきます。
解説といっても、自分が成立するためのメモ代わりみたいなものですが…。
今作のベースにある『1984』も踏まえますが、異論等々ございましたら、ご指摘いただけると幸いです。
プロール
プロールとは『1984』における労働者階級であり、コテコテの被支配者階級のことです。
今作ではトグサとあったノダが「プロールになる道を選ばずビッグブラザーを助けるために」と語っていましたが、どうやらプロールにならないことがNになる諸条件の一つのようです。
そしてプロールを脱却する術が…後述するミニラブによる浄化を受け容れることなのでしょう。
ミニラブ・101号室
ミニラブは『1984』における「愛情省」を指すワードです。
愛情省は名前こそかわいらしい感じですが、実際は政治犯を拷問・洗脳して支配者たるビッグ・ブラザーに忠誠を誓わせた後、最悪の場合は処刑してしまうような恐ろしい省庁として描かれています。
今作におけるミニラヴもNを生み出すアプリとして登場していますが…個人的に『1984』とは違う感じで描かれている気がします。
まず、ミニラヴのによる「心の浄化」は決して完全ではなく、Nになりきれないパターンがあります。
実際、プリンと共に東京に入ったシンジョーは「Nぽ」扱いされて思考警察に連れていかれています。
また、『1984』におけるミニラヴはビッグブラザーへの反逆者を洗脳するための期間でしたが、今作におけるミニラヴは決して洗脳的な効果をもたらさないものです(これはトグサが引っかかった郷愁ウイルスも同様)。
確かにNのほとんどはビッグブラザーに従順ですが、あまり狂信的なイメージはないですし、カナミのように独断でトグサを助ける者もいます。
そもそもミニラヴには「quoted from “1984” part3 chapter4(『1984』第3部第4章より引用)」と書かれていますが、『1984』の当該箇所は主人公のウィンストン・スミスが101号室に連れていかれる直前にビッグブラザーを「憎んでいる」と語る場面があります。
つまり洗脳が完了しておらず、まだビッグブラザーへの反抗心を残しているシーンなのです。
だとしたら、ミニラブはそもそもタカシが洗脳するために使用しているものではないとことが窺えます。
以上を踏まえたうえで個人的に解釈するならば…ミニラブは「自己を主体化させる」ためのものではないでしょうか。
シンジョーはミニラブについて、「夜と霧を通り抜けてタヒ生観が一変するほどの思い出を自分の中に見つけたんだよ」と語っています。
この台詞を語った後のシンジョーが涙を流す様は、同じくミニラブに浄化されたノダと同じでした。
この「思い出」は恐らく「夜と霧」と題された第17話でのトグサの過去の追体験と同じものでしょう。
過去にある自己を決定づけた強烈な体験を追想し、そこにあった想念を認めて主体化する。
それは同時に、その主体化を妨げ得る社会との対立する道が開くことにもなります。
シンクポルのプロトタイプを作り、実践したタカシがそうだったように、いつだって社会や群集は自己の信念と完全に相容れることはありません。
そう考えると、ミニラブは主体化したい自己を社会から切り離すための装置といえるでしょう。
それを言い換えた言葉が、ノダが言った「透明になる」であり、プリンが言った「解脱」なのかもしれませんね。
ただ、ミニラヴをこのように捉えると少しややこしくなるのが101号室です。
『1984』において、101号室は政治犯が最も恐怖を抱く対象を見せつけることで心をへし折るためにある一緒の拷問部屋のようなものとして登場します。
『攻殻2045』においても、シンジョーを捕らえた思考警察が「101号室」に連れていけと言っているので、恐らくNぽを完全にNにするための設備であることが窺えます。
ただ、やっかいなのはさきほども触れたトグサが過去を追体験するエピソード「夜と霧」の英語タイトルが「Room 101(101号室)」になっている点です。
これだとトグサの体験自体が101号室内であったことになるわけですが…でもトグサが101号室に連れていかれるような描写はないし、もしそれを受けていたらトグサはNぽ呼ばわりされることはないはずですが…如何せん101号室の直接的な描写がないのでどうにもいえない(笑)。
まぁ、『1984』101号室はミニラブの中にある施設なので、その辺はもう…ミニラブのグレードアップ版的なものがあるみたいな曖昧な感じにしちゃいたいのですが(笑)
ただ、101号室の意義については、個人的に思うものがありました。
シンジョーはプリンから「中途半端に解脱している」、「本来のNではない」、「革命とかをやりたいタイプ」と評されていましたが、ここに彼が101号室に連れていかれた理由がある気がします。
そもそもタカシは「Nは自由や責任を希求しない」、「核ミサイルによる脅迫はあくまで時間稼ぎ」、「摩擦のない世界を望んでいると語っているなど、武力行使や主要機関への積極的な介入を目的をしていないことが窺えます。
他のN達にしても武装してやる気満々ですが、Nぽに対して積極的な捕縛は行うものの、どこぞの組織や帰還への攻撃は行っていません。
つまり外部の組織や帰還と前面衝突して「摩擦」を産むような行為は望んでいない。
これだけ捉えると、タカシの意図にそぐわないからシンジョーは101号室に連れていかれた…ともいえますが、もう一捻りするなら、シンジョーの意識が「外部」に向かっていたことが原因ではないでしょうか。
そして101号室は革命を望んだシンジョーのように外部との摩擦を積極的に生み出したがるタイプを修正し、意識の方向性を外部ではなく内部…Nや自分のことに向けさせるためにあるのかもしれません。
思考警察
東京に潜り込んだトグサを追いかけ回した思考警察ですが、『1984』においては思考犯罪=叛逆を徹底的取り締まる機関として描かれています。
今作においてもNぽを片っ端から101号室に放り込む機関として描かれており、概ね『1984』通りの感じがしますが、個人的にちょっと注目したいポイントがあります。
それは『攻殻2045』には2種類の思考警察が出てきているという点です。
1つ目は今お話ししたNぽを捕まえる思考警察ですが、もう一つは第10話の記事でも書いたシンクポルです。
シンクポルはターゲットが有罪と選択された場合、有罪に賛同した数だけ電脳に攻撃が加えるシステムですが、このシンクポルという名前は思考警察の英語読み(厳密にはニュースピーク)であり、実際は同じ意味です。
『1984』にインスパイアされた振る舞いをしているタカシが作っている時点で、もうベースは同じなんですけどね(笑)
ただ、思考警察もシンクポルも暴力的な側面を持ちながらも、決定的な差異があるように感じます。
思考警察はお世辞にもまともとはいえないですが、目的はあくまでN化の促進であり、過度な暴力は行っていませんでした(武装しているのに発砲する場面は全くありません)。
これに対し、シンクポルは人々の暴力的な衝動を煽り立てる要素を含んでおり、多くは享楽的な目的で使用していました。
それにタカシはシンクポルで問題ある生活指導を焼きましたが、それ以降はシンクポルを放棄するなど、全く愛着を抱いていません。
これを踏まえると、タカシにとってシンクポルは彼の目的にマッチしないツールだったのでしょう。
シンジョーのところでお伝えしたように、タカシが望むのは「摩擦のない世界」であり、正義の名の下で行う攻撃、ましてや正義の名を借りて享楽的に人を焼く行為ではありません。
そもそもターゲットを「炎上」させるなんて、摩擦しかないですからね(笑)
この攻撃的なシンクポルからN化に特化した思考警察への転換は、タカシの変動を知るうえ重要な要素になりそうですね。
ビッグブラザー
さて、『1984』においては最強の独裁者として描かれているビッグブラザーですが、今作においてはタカシを示す言葉として登場しています。
『1984』では「神は権力なり」ともいわれるほど独裁者たるビッグブラザーは強大な存在になっていますが、これを素直にタカシに結びつけてもどうにもしっくりこない感じがします。
確かにタカシはNが集う東京において指導者ともいうべき存在ではありますが、彼の振る舞いはあまり強権的ではありません。
まぁN化するためにミニラブ使ったり、思考警察使って101号室にNぽをぶち込んだりはしていますが、裏を返せばビッグブラザーらしさはその程度しか描写されていません。
というより、2ndシーズンでのタカシは公安9課やアメリカに追い回される反逆者であり、支配者のような印象はかなり薄い感じがします。
むしろ1A84を作ってサスティナブル・ウォーを引き起こし、世界を思いのままにコントロールしようとしたアメリカの方がよっぽどビッグブラザーです。
そう考えるとタカシを指し示すビッグブラザーは従来通りのニュアンスで受け取らない方がいいでしょう。
となると、個人的にタカシを指し示す言葉として用いたいのが「奉仕者」です。
タカシは核戦争のリスクを背負ってまでダブルシンクを身に付けた人々を守ろうとし、公安9課やシールズでの戦闘では一切Nを巻き込まずに単身で戦い、全ての人間をNにするために大量のコードに繋がれている様は、支配的な独裁者というよりも、多くの人々のために身を削る「幸せな王子」という印象です。
ある程度強引な手段を用いつつも、全人類の幸福のためにその役割を全うする実力とカリスマを持った奉仕者…これがタカシに名付けられたビッグブラザーのニュアンスではないでしょうか。
これはトップダウンだと支配者になるビッグブラザーをボトムアップの位置に変えることで「奉仕者」に転倒した結果のような気もします。
ここまで書くとタカシってクゼ・ヒデオっぽいんですけど、個人的には笑い男ことアオイタカシのニュアンスも感じるんですよね…同じタカシだし(笑)
まぁ、自らを犠牲にすることも厭わず、例え犠牲になったとしてもNやダブルシンクが社会に残る道筋を残しているタカシの行為はアオイと同じ「消滅する媒介者」的な側面もあるように感じられますが…。
ダブルシンク
さて、いよいよ今作の核心に迫るキーワード「ダブルシンク」に触れていきます。
『1984』においてダブルシンクはビッグブラザーによる独裁体制を維持するための思考方法として登場しているものであり、端的にいうなら「矛盾を無視する思考方法」です。
原作にも出てくる例えを使うなら、ダブルシンクは2+2=4が2+2=5であっても認められる…つまり何の疑いもなく「白を黒といえる」状態です。
このダブルシンクを党員に植え付けることで、ビッグブラザーは自分のやることに万が一誤りが発生しても「正しい」と信じられる状態を作り出しています。
いってしまえば、「おかしいところが見つかってもビッグブラザーがやっているからOK」と何の疑問も持たず思わせる思考方法というわけです。
このように『1984』でのダブルシンクはなかなかエグいものですが、今作におけるダブルシンクはテイストがかなり違う感じがしますね。
プリンの口ぶりだと「現実とは摩擦のないもう一つの現実を同時に生き続ける」、「事件前と変わらない生活を継続しながら電脳内で最も安らかな精神状態を保ち続けている状態」がダブルシンクのようです(前者は厳密にいうとNを指していますが、統合しても大丈夫でしょう)
つまり現実を生きつつ、同時に自分が理想とする別の「現実」を生きているわけです。
確かに現実とは別の「現実」を矛盾なく並行して体感している辺りは『1984』のダブルシンクっぽいですが、プリンはこの状態を「解脱」と表現していました。
解脱とは輪廻転生から解放されることを指していますが、これを『攻殻2045』におけるダブルシンクと組み合わせるなら、「自己と現実の切断」と表現した方が個人的にしっくりきます。
いうなれば自己を現実から隔離・保持することにより、社会の変動や他者の都合に左右されない状態を作り上げるという感じです。
この「自己と現実の切断」こそが、タカシが目指した境地なのではないでしょうか。
というか、この解釈でいくと今作におけるダブルシンクは別名である「真実管理(リアリティ・コントロール)」に近い印象がありますね。
『攻殻2405』感想
ちょっと文字数がえぐいことになったので、ここで一旦記事を終了します。
Nや本編…特にラストの考察については後編の記事で書きますので、そちらを合わせてお読みいただけると幸いです。
▼後編はこちら
いやーでもここで書いている『1984』は付け焼刃なので、どこまで解釈にはまっているか心配だな…(笑)
間違いがあっても優しい感じで指摘してもらえるとありがたいです(笑)
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