皆々様こんにちは。
『機動戦士ガンダム 水星の魔女(以下『水星の魔女』)』担当のgatoです。
前回はクワイエット・ゼロを止めるためにスレッタやミオリネが仲間が集めて出撃する様が描かれました。
そしてスレッタはデータストームの負荷に耐えつつ、新たなガンダムであるキャリバーンでプロスペラとエリクトと対峙します。
最終決戦が繰り広げられる中、スレッタはどんな想いをぶつけたのか…じっくり振り返ってみましょう。
目次
クワイエット・ゼロ攻略戦
ここではクワイエット・ゼロでスレッタ、グエル、ラウダ、プロスペラ、ミオリネ以外のキャラクターを見ていきましょう。
データストームの海を抜け
ラウダの襲撃より、慌ててクワイエット・ゼロへの突入を強行したミオリネ達。
作中ではチュチュがパーメットリンクを解除した状態で突入する姿が描かれました。
突然発生した干渉に助けられたものの、難易度が格段に跳ね上がった状況ながら、無事にクワイエット・ゼロに到達したチュチュの技量はなかなかのものですね。
あまり戦闘シーンがないチュチュですが、パイロット候補生だけあって、それなりの腕前を持っているようです。
ほかの面々についても、苛烈化するMS戦やビームを乱射するハロ軍団(笑)を前に物怖じしなかったりと、みんな肝っ玉が据わっていましたね…マルタンを除いて(笑)。
今回の面々でもとりわけ活躍したのは5号でした。
こっそり持ちこんだ拳銃でハロ軍団相手に大立ち回りを演じましたが、命をかけて戦う姿はかつて生き残りを優先し、オープンキャンパスでの戦闘に極力関わらなかった姿とは大違いです。
第21話の記事で5号が改めて「生きる」覚悟を決めたと書きましたが、しっかり変化は現れているようですね。
ノレアとの出会いをきっかけに、行きたい場所、生きる理由を見つけた5号。
あの戦いぶりは、そんな彼の覚悟があるからこそなんでしょうね。
父の再帰
前回意識が戻ったデリングでしたが、完全に回復していないにも関わらず、ミオリネ達のために宇宙議会連合に接触する姿が描かれました。
宇宙議会連合に緊急総会を開催させてどうにか戦闘をやめさせようとしますが…初めからベネリットグループの弱体化を狙っていた議長によってILTSが放たれることに。
残念ながらデリングの懸命なサポートは実りませんでしたが…個人的にはなかなか印象的な活躍でした。
今回のデリング、よくよく考えると徹底的にサポートに回っているんですよね。
ベネリットグループの戦力をかき集めて増援を送るわけでもなければ(まぁ間に合わないか…)、ミオリネ達の作戦に口をはさむわけでもない。
つまり戦場で起こる一切をミオリネ達に任せているわけです。
元々デリングはミオリネを子ども扱い(愛しているからこそ)しているために、さまざまな問題に介入させない方針を取っていました。
第7話の記事で指摘した時期くらいから、徐々にミオリネに任せるようになってくるわけですが…。
それからもミオリネに小言をいいつつも、世界で最も疎まれるGUND技術を扱う株式会社ガンダムの経営をミオリネに一任していました。
思えばシーズン1の時点から、デリングは世界を左右する局面をミオリネに託すつもりだったのかもしれません。
大人の戦い方
個人的にスレッタやミオリネ以外で最も印象的だったのが、ベルメリアの立ち回りでした。
怯えながらもプロスペラに抵抗し、弾切れになったら身を呈してミオリネを守ろうとしています。
これまでのベルメリアと比べると想像できない姿でしたね。
第16話の記事などで指摘したように、ベルメリアはGUND技術を継承したために、強化人士を次々と犠牲にする自分の罪に苛んでいました。
ひたすら問題から目を背けている一方、赦されないと知りながらも赦しを求めてしまう弱さを持つベルメリアは、辛辣に表現するなら「責任から逃げている大人」といえるでしょう。
しかし、スレッタの告白や5号の変化、そしてプロスペラが起こしている惨事を目の当たりにして、ベルメリアも覚悟が決まったんでしょうね。
そんなベルメリアの頑張りに、当初は彼女を軽蔑していた5号も感心していたようでした。
あと、個人的には拳銃を渡した際のケナンジのセリフも有効だったのかなって思っています。
ケナンジは拳銃を渡す際、「学生に渡すわけにはいかない」と口にしていました。
第10話の記事でベルメリアが株式会社ガンダムの仕事を楽しんでいたことを指摘しました。
ヴァナディース事変の数少ない生き残りである彼女にとって、世界から拒絶されたヴァナディース機関の理念がスレッタ達次世代に引き継がれている姿には、胸を打つものがあったはずです。
そんな学生達が罪を背負う覚悟を決め、命を賭けて戦っているのに、自分が逃げるわけにはいかない…。
株式会社ガンダムでの経験も、ベルメリアが覚悟を決めるきっかけになったのかもしれません。
ILTS起動
スレッタやミオリネ達が懸命に戦い、クワイエット・ゼロの停止に成功したにも関わらず、宇宙議会連合はベネリットグループを弱体化させるためにILTSを起動させました。
これが後にとんでもない事態を引き起こすわけです。
いやー巨大兵器は『ガンダム』シリーズならではですが、今回もお約束を守ってしっかり出てきましたね(笑)
表向きはレーザー送電システムとして偽装されているILTZSですが、雰囲気としてはソーラ・レイやコロニーレーザーに近い感じですね。
何よりエグいのは、送電システムに偽装した惑星間兵器をこっそり作っている抜け目なさす。
国1つを容易に破壊できる大量破壊兵器をいつでも撃てる状態にしているわけですからね。
それだけベネリットグループをいつでも排除できる状態を整えていたということです。
あの議長、穏やかな口調でしたが考えていることはマジでえげつない…。
おまけにILTSで壊滅状態に陥ったラグランジュ4全域の復興をラグランジュ1の自治政府とペイル社が主導することも目論んでいるとのこと。
自分で破壊しておいて、その復興特需すらものにしようとしているとんでもマッチポンプをやろうとしているわけですね。
今作はさまざまな大人が出てきますが、今回の議長とペイル社のCEO達は…とびっきりひどかったなぁ…。
そんな大人達に囲まれていたオリジナルのエラン・ケレスですが、どこかつまらなさそうな表情をしていましたね。
ここにきてオリジナルが彼女達を裏切るような展開もあるのかな…?
かつての5号と並ぶほど性格が悪いと評されるオリジナルですが、元々ミオリネ達の株式会社ガンダムにはそこまで否定的ではなかったし…。
意外とおいしいところを持っていったりして…。
兄弟の果て
ここではグエルとラウダの戦いをピックアップしてみましょう。
罪を分けてくれないなら
ラウダの突然の襲撃について、これまで理由を色々考えてきましたが…。
予想は半分当たり、半分外れってところかなぁ(笑)
まぁ、肝はラウダが「置いてかれた」という感覚から暴走したというところでしょうね。
ラウダの怒りの根源にあるのは、グエルが自分の過ちも立場の責任も全部自分が背負い、ミオリネと共に先端に立ってしまうところにあるのでしょう。
当然、グエルからしたら自分が背負うべき罪を背負い、果たすべき責任を果たしているだけですから、何の間違いもありません。
そう考えると、ヴィムのタヒやペトラの負傷をミオリネのせいにするラウダの行為は八つ当たりに近しいものだといわざるを得ません。
しかし、それはあくまで当事者目線の話であり…傍観者に追いやられた側に立つと、見方が変わります。
「罪を誰が背負うか」というロジックは、第20話で最も顕著に取り扱われていました。
グエルがラウダに塁が及ばないように自分で罪を背負っているのは、ヴィムの一件だけでなく、シャディクの生き様を見せつけられた影響もあるのかもしれません。
たとえその身が滅びても、背負うべき罪を背負い、取るべき責任を取るというスタンスは、ヴィムをその手にかけたグエルにとって重要なものでした。
確かにこの生き方は正しいものですが、必ずしも善いものというわけではありません。
その最たる例がデリングとミオリネではないでしょうか。
デリングはノートレットの一件から、ミオリネを守るためにあえて彼女を突き放し、全ての責任を背負ってプロスペラと共にクワイエット・ゼロを完成させることで、戦争のない世界を実現しようとしていました。
しかしそれがミオリネとの軋轢を生んでしまいます。
こう考えると、ラウダの置かれた状況はミオリネのそれに近いものではないでしょうか。
ラウダ自身はたとえヴィムをその手にかけたとしても、グエルと共に歩む気持ちでいたのでしょう。
だから攻撃の矛先を父を奪ったグエルではなく、ミオリネに向けていた。
しかしグエルはそうはしなかった。
大切な人が背負った罪に苦しんでいるのに、その罪を分けてくれなかった。
兄を心底愛しているラウダにとって、これほど辛いことはないのではないでしょうか。
だからラウダはグエルを罪から解放するために、ミオリネを攻撃し、全ての罪を背負おうとした。
なぜならグエルを愛しているから、グエルだけに背負ってほしくないから。
このラウダの気持ちは、デリングに突き放されたミオリネや、プロスペラとエリクトに突き放されたスレッタに近しいものを感じます。
愛しているが故に突き放される者の怒りと悲しみを、ラウダは体現しているといえるでしょう。
いつかの家族
グエルとラウダが戦う中で、一瞬ですが2人の出会いの回想がはさまれていましたね。
ラウダはグエルの異母弟ですが、どうやら出会ったのはお互いそれなりに大きくなってからのようです。
始めはぶっきらぼうな表情をしていたグエルですが、初対面のラウダを抱きしめ、温かく迎えていました。
なんつーか…ただのブラコンじゃねぇか(笑)
普通金持ちの異母弟なんて酷い関係になるのが相場ですが…グエルはむしろ喜んでラウダを受け入れていたようです。
まぁこの体験があるなら、そりゃあラウダもブラコンになりますわな…(笑)
他方で、ラウダをグエルに対面させているときのヴィムも気になりますね。
あの穏やかな顔つきといったら…グエルが温かく受け入れてくれると知ったうえで引き合わせているんでしょうね。
むしろ、子どもをちゃんと信頼しているからこそできる行為といえます。
それにしても、本当にヴィムっていなくなってから株を上げている感じがするな(笑)
正直第12話で命を落とす前の彼からは全然想像つかない(笑)
まぁヴィムが子ども想いの人間だからこそ、グエルやラウダも慕っていたのでしょう。
そんなヴィムがあんな風になったのも、ジェターク社を背負うという責任や激しい企業間の競争に振り回されていたからかもしれません。
赦されないと思ったから
暴走するラウダを止めるために、グエルが取った行動は自らラウダの攻撃を受けるというものでした。
ニュアンスこそ違えど、かつて自分がヴィムを刺してしまった時の構図ですね。
やむを得ない状況だったとはいえ、グエルにとってこれがヴィムの命を奪った罪に対する償いだったのでしょう。
また、フェルシーに助けられる直前に、自身の罪がラウダ達に赦されないことへの怯えを語っていました。
ややいじわるな言い方をするなら、グエルにとって自身の罪を肯定することは、周囲の人間からの「逃げ」だったわけですね。
思えば、第3話の記事でグエルは窮地に立つとラウダを拒絶するところがあるのではないかと指摘していましたが…。
グエルにとって大切な人間を突き放す行為は、単純な拒絶というよりも、周囲から赦されないと思ったがための逃避と捉えるべきでしょうね。
もちろん、この逃避はベルメリアのそれと違って、自分の責任や罪をちゃんと全うすることを前提にしたものです。
しかしそれは周囲の想いを無碍にする行為であり、それこそラウダのいうような「高潔で傲慢な」行為と批判されてもしかたないでしょう。
だって自分を愛してくれる人の気持ちをスルーしているわけですから…悪くいえば独善的なんですよね。
まぁグエルの場合、不器用だからこんなやり方しかできないところもあるのでしょうけど。
ところで、個人的に印象的だったのが「もう逃げない」と命を落とす覚悟をしたグエルが、土壇場でフェルシーに助けられた場面でした。
フェルシーに「兄弟げんかでタヒぬなんて笑えない」といわれて笑顔で同意したグエルですが、これはヴィムやラウダから「もう逃げない」と決めて命を張ったグエルの決断を覆しているかのような構図です。
個人的に、この構図は第12話の記事でも書いた「逃げる」に近しいものを感じました。
罪を償うためにラウダに自らを差し出すグエルの行為は、自分の責任から逃げず、前に進む行いだといえるでしょう。
しかし、よくよく考えるとこれは何の解決にもなりません。
命を落とすグエルは満足できても、恐らく残されたラウダやフェルシーは最悪な状態に陥ります。
それにラウダの想いに何も応えられていません。
だってラウダが望んだのはグエルの償いではなく、「グエルの罪を分けてほしい」なんですから。
実のところ、命を差し出すというグエルのあの行為自体がグエルにとって逃げではないでしょうか。
グエルにとって本当にすべきことは、罪の背負い方や償い方についてラウダと真剣に向き合うことです。
「タヒ」という名の、自己満足的な、安易な償いに進むことではありません。
そう考えると、グエルの結末はこう捉えるべきでしょう。
グエルは「タヒ」に逃げたのではなく、「生」に進んだのだと。
罪を背負うあまり周りが見えなくなっていたグエルが、大切な人と向き合い、共に歩む人生をやっと選び取ったわけです。
悪い魔法使い
ここではミオリネとプロスペラについて掘り下げてみましょう。
母を知るからこそ
今回のミオリネはクワイエット・ゼロ停止に貢献しましたが、その際の立ち回りが印象でしたね。
パスワードを見抜く際、ミオリネはノートレットのメッセージを思い出していました。
思えば、第1話の記事から指摘しているように、ミオリネもまた母親の愛の影響を多大に受けている人物でした。
プロスペラと対峙している際、ミオリネはスレッタの覚悟を伝え、母親の在り方を説き、そして最終的には「自分達は家族になる」と告げていました。
ミオリネとプロスペラの関係性は嫁姑関係ともいえますが、今回ばかりはちょっと違う印象でしたね。
これまでプロスペラに対して一歩出遅れている印象のあったミオリネですが、今回の彼女は堂々と対峙し、プロスペラに「いってくれるわね」とまでいわせています。
デリングとの対立を乗り越え、和解したからこそ、ミオリネはプロスペラを刺さる言葉をいえたのでしょう。
つまり、今回のミオリネは、迷いなくスレッタを愛する者として、ようやくプロスペラと対等な立場に立てたというわけです。
ちなみに、緊急停止コードを入力する際、最初に入力されていた「quod erat demonstrandum」は、「証明終了」を意味します。
一般的には「Q.E.D」といった方がなじみがありますかね。
わりとシンプルな言葉ですが、個人的にこの停止コードを考えたのはデリングのような気がします。
「平和な世界ができると証明した」…みたいなニュアンスでつけたのではないでしょうか。
I LOVE YOU FROM MOM
さて、ラスボスとして遺憾なく狂気を発揮しているプロスペラですが、個人的に今回は彼女がいささかブレていたようにも感じられました。
本性を表してからプロスペラは徹頭徹尾「エリィのために」をモットーに行動していますが、そのエリクトのことを「ヴァナディースの理念に祝福された子」と評していました。
しかしクワイエット・ゼロを起動してから、プロスペラは実質的にエリクトを宇宙議会連合の艦隊を追い払う兵器として扱っています。
確かに身体拡張の極北に立ったエリクトはGUND技術の最終形といえますが、ヴァナディース機関の代表だったカルドは兵器としての運用を望んでいませんでした。
度々指摘しているように、この時点でプロスペラはヴァナディース機関の理念の継承に失敗していることに気づけていない、あるいは無視しているわけです。
また、個人的に印象的だったのがエリクトのプロスペラへの評価でした。
エリクトはスレッタを諦めさせるためにプロスペラの決意の固さを語っていましたが、その際に「1つを手に入れるためならお母さんは…」と口にしています。
ここでプロスペラが度々発していた言葉を思い出してみると、面白いことがわかります。
「逃げれば1つ、進めば2つ手に入る」。
つまり、この言葉だけを参照するなら、手に入るものの数だけ見た場合、プロスペラの行為は進むことに該当しないというわけです。
それどころ、逃げていることになるんですね。
もしプロスペラの行為が逃げることと同一だとしたら、何から逃げているのか。
プロスペラはミオリネと対峙した際、スレッタを愛しているといっていました。
あれが欺瞞ではなく、第18話の記事で書いたように本心からいっているとしたら…。
プロスペラが逃げているのは、他ならぬスレッタからではないでしょうか。
そもそも、第18話時点でもプロスペラはスレッタを連れていく可能性を示唆していました。
しかしスレッタは自由に生きるべきと考えて突き放した(彼女を復讐に巻き込まないためもあるのかもしれません)。
愛しているために向き合えず、遠ざけた…この行為はグエルのラウダに対するそれに近いものといえますね。
そう考えると、ミオリネが入力した停止コード「I will always be attached to you, Miorine」からの「I love you from mom」はなんとも皮肉ですね。
前回の記事でも触れたこの言葉は、ノートレットがミオリネに残したメッセージであると同時にクワイエット・ゼロの停止コードも兼ねていました。
ノートレットが故人となっても、なおもミオリネを想っていることがわかる言葉です。
そして同時に、ノートレットがどこまでもミオリネを見守るという覚悟の表れともいえます。
他方で、プロスペラは愛しているといいながらもスレッタから目を背けていた。
あるいは、理念の祝福を受けたと嘯きながら兵器としていたエリクトのことも、実際は彼女の本心から目を背けていたのかもしれません。
だからこそ、ノートレットの愛に阻まれるという皮肉な結果を招いてしまったのでしょう。
ただ、そんなプロスペラに救いがないわけではありません。
今回、エリクトと戦うスレッタの懸命な声にプロスペラは何も返しませんでしたが、切ればいい通信を流し続けているなど、なんだかんだでスレッタへの未練を残している印象があります。
プロスペラがスレッタに向けた母親として想いは、まだ失われていないのではないでしょうか。
エリクトとスレッタ
それでは最後に、エリクトとスレッタについて振り返ってみましょう。
悪い魔法使いにならないで
今回の戦いにおいて、スレッタは終始プロスペラやエリクトに計画を止めるように説得を続けていました。
また、いくら愛するプロスペラとはいえ、彼女の計画が大勢の他人を巻き込むことを看過できないとも口にしていましたね。
元々スレッタが大切な人に依存するあまり、周囲の人間が見えなくなってしまうところは第11話の記事から指摘していました。
そんなスレッタがより多くの人間の命を背負って戦えるようになったことは…第1話から見てきた人間からすると感無量ですね(笑)
他方で、ここまで懸命に頑張るスレッタですが、プロスペラは終始黙したままでした。(多少は想うものはあるでしょうけど)
まぁ無理もありません。
プロスペラやエリクトを愛する一方で、スレッタは学園生活を通じてより多くの人間を、そして世界を愛するようになりました。
しかしプロスペラはエリクトやスレッタ(一応入れときましょう)を愛する一方で、世界への憎しみをそのままにしています。
世界への愛情の差異がある以上、現段階で2人が分かり合うのはまだ難しいのかもしれません(ラストでどうするかだなぁ…)。
干渉する者
今回のエピソードで最も謎めいた場面といえば、やはりデータストームへの謎の干渉でしょう。
プロスペラはもちろん、エリクトですら予想外だったところを見ると、あの場面ではデータストームに干渉できる第三者が出現していたことを示唆しています。
ただ、この第三者が何者なのか…。
一見するとエアリアルが干渉してきたようにも見えますね。
実際、僕も第6話の記事からエアリアルにはエリクトとは別に自我があるのではないかと予想していたこともありましたが…。
しかし、干渉が発生した際、エリクトはまず後ろの上方に反応しており、そこに向けて呼びかけています。
そのため、エアリアルが干渉したという可能性は低いでしょう。
また、エリクトと共に出現していたカヴンの子でもない模様。
彼女達は終始エリクトやプロスペラの行為を擁護していましたしね。
となると、一体誰なのか…。
じっくり掘り下げてみましょう。
まず、エリクトはクワイエット・ゼロに関する問題は「データストームでしか生きられない『僕ら』」の問題」といっています。
また、干渉してきた者に対して「データストームのおかげで願いが叶うのに」ともいっています。
ここから、エリクトは自身だけでなく別の誰かのためにも行動していることがわかります。
こうなるとカヴンの子達が該当しそうな予感がしますが…先述したようにカヴンの子達は終始エリクトのために行動していると明言しているため、干渉してきたとは考えづらい。
では誰が干渉してきたのか…。
ここで個人的にぶち上げたいのが、一度諦めた(笑)4号の復活説です。
そもそも4号は一度エアリアルに搭乗しており、その際にエリクトに接触している可能性が非常に高い。
何より5号と違って拒絶されていませんでした。
そしてガンダムに使われるGUNDフォーマットの本質が生体コード=魂の定着であり、同時に生体コードに満たされたデータストームへの干渉であるなら、スレッタと心を通わせている4号が復活する構図は十分できているわけなんですね。
何より干渉が発生した際に意味深に5号の顔がアップになっているカットが挿入されているところを見ると、もうそうだとしか思えない(笑)
…ただ、これだけだとあまりにスレッタ×4号みが強いので、もう少し『ガンダム』らしくなるように予想をひねるとしたら…。
あの時干渉したの4号だけでなく、ガンダムに関わって命を落とした者達ではないでしょうか?
つまりソフィやノレアもあのデータストームの中に存在しているのではないかというわけです。
こうなるとプロスペラはあくまでエリクトのためですが、エリクト自身は自分が加担している「呪い」によって命を散らした多くの者達のために戦っているという構図ができます。
こうすると結構『ガンダム』っぽくなるんですよね。
俺の体をみんなに貸すぞ!みたいな(笑)
何より、プロスペラと違って復讐の念が強くないエリクトが、あそこまで目的達成にこだわる理由が明確になる気がするんだよなぁ…。
いずれにせよ、一度4号の復活を諦めた手前、この予想は当たってほしいです(笑)
最後の微笑み
スレッタとエリクトが激しく戦う中、ミオリネ達の活躍でクワイエット・ゼロは停止。
やっと戦いも終わり…かと思いきや、宇宙議会連合が停戦を承知のうえでILTSを発射するという暴挙に出ました。
巨大なレーザーが接近する中、危機を察知したエリクトは『UC』のバナージやリディの如く、ガンドノードを総動員してレーザーを防いで見せました。
しかしエアリアルは大破。
レーザーを防ぎきる前にスレッタへ笑顔を向けたエリクトはそこにはなく…。
うーん、普通に考えるとエアリアルが破壊された影響でエリクトが消滅したと捉えるべきなんでしょうけど、そもそもエリクトは実体のない存在ですからね。
単純にクワイエット・ゼロが停止したために実体を保てなくなったとも捉えられます。
というか生体コード=魂なら、エアリアルが壊れても実体化しないだけで存在はできますからね。
ただ、個人的に悩んだのがエリクトがスレッタに笑顔を向けた理由です。
今回のエピソードにおいて、エリクトはほとんどスレッタに感化されることはないように感じました。
むしろ干渉を受ける直前では、スレッタの覚悟を認めて本気を出そうとしたくらいです。
正直、スレッタの想いを受けてエリクトが折れたようには見えなかったんですよね。
まぁシンプルに考えて、あの笑顔は自らの最期を悟ったからこそ生まれたものなのでしょう。
自分がいなくなったあとのプロスペラを託す意味合いもありそうですが…個人的には素直にスレッタの成長を祝福する笑顔のように感じました。
そもそも第19話の記事で指摘したように、エリクトはスレッタを大切に想っていたからこそ突き放していました。
『ゆりかごの星』においても(僕=エリクトの場合)、エリクトは最後まで復讐にスレッタを巻き込むことを躊躇っていましたしね。
一方で、同時にスレッタを「自分で僕の中から出ていける」とも評していました。
この言葉を踏まえると、エリクトがスレッタを突き放したのは、スレッタを愛していただけでなく、彼女がエアリアル抜きでもやっていけるという信頼があったことが窺えます。
そしてスレッタがキャリバーンに乗って再び会いに来たことも、裏を返せば「自分でエアリアルから出ていけた証拠」です。
愛するプロスペラやエリクトに依存することなく、同じくらい大切に想う人々のために自分の足で進む。
終始目的のために冷徹でいたエリクトですが、そんなスレッタを見られただけでも、本当は喜びを感じていたのかもしれませんね。
『水星の魔女』第23話感想
いやークライマックスでも視聴者を振り回してきますね(笑)
スレッタとエリクト、グエルとラウダの戦いもすごかったですが、個人的にはこれまでと打って変わって積極的に戦いに参加する5号が新鮮で印象的でした。
ただ、意外にも23話で戦いのほとんどを終わらせてきましたね。
となると次回は戦後をじっくり描いていくことになるのだろうか…。
何はともあれ、次回でいよいよ最終回!
どうなるか心待ちですね。
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コメント
キャリバーンとエアリアルの戦闘、見応えがありましたね!
今までスレッタと共闘していたエアリアルと交戦する展開は、悲しくもあり熱くもありました。
そしてエリクトが動かすエリクトの戦闘がなかなかにワイルド。ドロップキックって……中に人がいないからこそ出来る攻撃。そういえばこのお姉ちゃん、決闘で相手のMSの四肢を破壊してダルマにするという、意外とエゲツない戦い方をする子だった……(笑)
可能性はかなり低いでしょうけど、4号には何かしらの形で復活してほしいですよね。
6話後からあれだけ引っ張り続けて、しかもハニトラ担当していた5号の行動によってスレッタからの好感度はガンガン減っていき、やっとスレッタに真実が明かされると思ったら「アイツはまだマシだったよ」「エランさん……(ぐすん)」という数分で終わってしまったので「いや、ここまで伸ばした意味!!」となってしまいました。
5号もだんだん好きになってきましたが、やっぱり4号にも救いが欲しいです。何も悪いことしてないよ、彼……ただ必死に生きていただけだよ……。
プロスペラのやったことは許されることではありませんが、この人もなかなかに可哀想な人ですよね……。
夫も恩師も仲間も全員虐殺され、何とか逃げたものの娘は死亡してしまい、娘の為の世界を作ろうとしたら仇の娘に止められ、最後にはオックスアースを吸収した議会連合によって娘が目の前でやられるという……報われない。
ミオリネに「家族になるんだから!」とプロスペラが言われているシーンは、ミオリネは逃げずに全てを背負う覚悟をしたんだな……と思うのと同時に、「それ、君の父親に家族も恩師も仲間も虐殺された人に言う!?ミオリネと家族になる=仇のデリングとも家族になるってことやが!?」と思ってしまいました。
だからプロスペラは何も言わず、「は?嫌だが?」みたいな感じでミオリネを睨みつけていたのでしょうね。
しかしこれ、計画を止めたところで多分プロスペラは改心(改心という言い方も違うかもしれないですが)出来ませんよね。彼女の生きる目的は、ずっとエリクトでしたから。
なんかまた暴走しそうで心配ですわ。EDでミオリネの片目に何か起きているような演出がありますが、キレたプロスペラがミオリネの片目に怪我をさせるみたいな展開にはならないことを祈る……。
長々と語ってしまい、失礼致しました。
次回が最終回……どのような展開になるのか全く予想がつきませんが、今生きている登場人物たちにはこれまで苦労した分幸せになってほしいですね。
ロイヤルミルクティーさんコメントありがとうございます!
>今までスレッタと共闘していたエアリアルと交戦する展開は、悲しくもあり熱くもありました。
記事でも書きましたが、主人公機がラスボスになるという構図はシリーズでも初めてなので、新鮮でしたね。
まぁあれだけ大切にしていた機体と戦わざるを得ないスレッタの心中を考えると切なくもありますが…。
>そしてエリクトが動かすエリクトの戦闘がなかなかにワイルド。
MSによるドロップキックはシリーズでもちょこちょこありましたが、あの年端もいかない少女がやるって考えると確かにえぐいですね。
それにご指摘の通り、スレッタと戦っている時もエリクトって結構えぐめな攻撃を平然とするんですよね(無力化するだけとはいえ)。
もしかしたらエリクトは『PROLOGUE』で自分が人の命を奪ったことや、ヴァナディース機関に何が起こったかを理解しているのかもしれません。
だからこそ容赦なく戦えるのでしょうね。
>可能性はかなり低いでしょうけど、4号には何かしらの形で復活してほしいですよね。
いやー本当それですよね!(笑)
個人的に4号は結構好きだったので、何かしらの形で復活してほしいとは常々思っていました。
仰る通り、作劇上の都合もあって4号の真相があっさり片付いちゃったから不完全燃焼なんですよね…。
もちろんスレッタが成長していたから受け止められたというのもありますけど、もう少し扱ってほしかった…。
>何も悪いことしてないよ、彼……ただ必死に生きていただけだよ……。
まっっっったくの同感です(笑)
>プロスペラのやったことは許されることではありませんが、この人もなかなかに可哀想な人ですよね……。
プロスペラの歪みはやむにやまれないところがありますからね。
GUND技術のおかげで命を長らえ、カルドの愛情を知っているからこそ、ガンダムやその関係者に対してどこまでも残酷な仕打ちをした世界が許せないのでしょう。
>「それ、君の父親に家族も恩師も仲間も虐殺された人に言う!?ミオリネと家族になる=仇のデリングとも家族になるってことやが!?」と思ってしまいました。
まぁミオリネはプロスペラに真正面から「復讐は大人同士で勝手にやってろ!」っていっちゃってますからね(笑)
この辺りは彼女の共感性の低さが出ちゃっている感じもしますが、アプローチとしては必ずしも間違っていない印象です。
むしろ「家族になる」という言葉には、プロスペラが抱える復讐の念すらも受け止める覚悟があるような気がします。
思えば、ミオリネの父であるデリングも「人はちゃんと罪を背負うべき」みたいなことをいっていましたね。
そう考えると、ミオリネもまたデリングと同じ度量を持っている…といえなくはないかもしれません。
>だからプロスペラは何も言わず、「は?嫌だが?」みたいな感じでミオリネを睨みつけていたのでしょうね。
そのシーン、記事では触れませんでしたが、僕はちょっと違う解釈ですかね。
単純に考えて、あの時点でのプロスペラは仇の娘に敗れた不快感をあらわにしている感じでしょうか。
他方でミオリネの言葉を真剣に受け止めている感じがしなくもありません。
よくよく考えるとエリクトとの関係性を前提に置くことでしか生きられなかったプロスペラって、大切な人との関係に依存してしまうスレッタとちょっと似ているんですよね。
恐らくプロスペラにとって「家族」とはエリクトや故人である夫との関係が第一なのでしょう。
しかしそこに初めて関係ない第三者が彼女の家族観を揺るがすような介入をしてきた。
プロスペラのリアクションは自分に対して優位に立ったミオリネへの不快感を滲ませつつも、彼女の言葉を真剣に受け止めている証左のような気もします。
>しかしこれ、計画を止めたところで多分プロスペラは改心(改心という言い方も違うかもしれないですが)出来ませんよね。彼女の生きる目的は、ずっとエリクトでしたから。
これは本当におっしゃる通りだと思います。
どれだけ絶望的な状況においてもプロスペラが人間らしさを多少なりとも残せているのは、間違いなくエリクトのおかげですしね。
>EDでミオリネの片目に何か起きているような演出がありますが、キレたプロスペラがミオリネの片目に怪我をさせるみたいな展開にはならないことを祈る……。
うーん、『水星の魔女』のベースといわれている『テンペスト』はプロスペラに相当するプロスペローが復讐を諦めることで物語の幕を閉じるわけですし、もう暴走はしてほしくないですが…。
まぁでもエリクトが消滅したとしたら、その直後のプロスペラはちょっと見ていられない状態にはなりそうですね。
>長々と語ってしまい、失礼致しました。
いえいえ、久々に読み応えのあるコメントで楽しかったです!
>次回が最終回……どのような展開になるのか全く予想がつきませんが、今生きている登場人物たちにはこれまで苦労した分幸せになってほしいですね。
全くの同意見です。
今作はティーンにスポットライトを向けて作っている点が特徴的ですが、彼女達が思い思いの未来にいけるような結末であってほしいですね。