当記事に先の展開のネタバレは含まれていないのでご安心下さい。
皆々様こんにちは。
『グレートプリテンダー(以下『グレプリ』)』担当のgatoです。
前回はアビーの過去とルイスとの因縁が明らかになり、一気にハードな展開となりました。
ラストではアビーがナイフを手にルイスに迫るなど、かなりシビアな結果になりそうな予感…。
過去に囚われるアビーは一体どうなってしまうのか…。
そうこういっている内に気づけば「Singapore Sky」のクライマックス!
欲望と復讐が渦巻くエアレースで、エダマメ達はコンゲームを成功させたのか?
早速振り返っていきましょう。
まだ飛べるというのなら
アビーのルイスへの直接的な復讐はエダマメが駆け付けたことで未遂に終わったものの、それをきっかけにルイスの本心が明らかになりました。
前回の記事でも色々掘り下げましたが、ルイスはやはり過去のために自暴自棄に陥っており、奇しくもそのスタンスはアビーと重なっていました。
彼もまた、自分の命を絶つために生きており、アビーに自ら刺されることでそれを果たそうとしていたわけです。
実はルイスがイラク戦争の帰還兵であることを踏まえると、彼のような状態は珍しくありません。
実際、イラク戦争の帰還兵がPTSDを発症して自ら命を絶つ事件はアメリカで問題になっていたことがあり、クリント・イーストウッドの監督作『アメリカン・スナイパー』でもその様は描かれています。
ルイスが人道支援への寄付をしていたのも、彼なりの罪滅ぼしだったのでしょう。
そして飛行機はもちろん、妻のイザベルへの愛情があったからこそ、ルイスは不安定ながらも辛うじて生きることができたんでしょうね。
実際、アビーの復讐の現場に駆け付けたイザベルを案じるような台詞をルイスは口にしています。
思えば、イザベルをコンゲームに参加させたのも、手がかかる自分から引き離すためのルイスなりの思いやりだったのでしょう。
ぞんざいに扱ってこそいましたが、彼はちゃんとイザベルを愛していたんですね。
そんな彼がラストでイザベルに「ただいま」という場面…目頭が熱くなります(笑)
本当の男の戦い
今回はルイスの事故の真相も明かされました。
それは台本通りのレースにうんざりしていたクラークがルイスを真剣勝負に誘い、ルイスが自らサムにばらしたというものでした。
つまり裏切り者などは初めからいなかったわけです。
うーん、予想外の真相でしたが、ルイスが自暴自棄だったことを踏まえるとあり得る展開ではありますね。
また、ルイスが真剣勝負を受けたのには彼なりのクラークへの思いやりがあったからともいえそうです。
実際、ルイスはサムをどやしつける際にクラークを独り立ちさせるようにいうなど、彼への配慮を垣間見せています。
ルイスからしたら、才能に溢れ、純粋にパイロットを楽しんでいるクラークは憎めない存在だったのでしょうね。
そしてルイスとクラークのエアレースへの、「本当の男の戦い」への想いが今回のコンゲームを大きく左右することになりました。
前に今回のエアレースは男で凝り固まった環境をアビーやシンシアが壊す…みたいな感じで捉えていましたが、実際はもっとシンプルでしたね。
思えば台本や金を使って好き勝手にエアレースを操るサムが「男の戦い」を語る資格はありません。
つまり、「Singapore Sky」はペテンだらけの「男の戦い」を「本当の男の戦い」が壊す物語だったというわけです。
笑って、アビー
「Singapore Sky」では終始過去のトラウマに苦しみ、ルイスに復讐の念を向けていたアビーでしたが、今回で一応の決着はつけられたようです。
まだ完全にトラウマを克服できたかどうか定かではありませんが、アビーがルイスへの復讐をやめたのは彼がまた加害者として苦しんだ姿を目の当たりにしたからでしょう。
何より、自分と同じように命を捨てたがっている…その自暴自棄な様に自分を重ねたのかもしれません。
そもそも自暴自棄な人間に復讐しても本懐は遂げられませんしね。
そして復讐をやめたアビーに残ったのは自暴自棄な自分のみ…。
ただ、そんなアビーが笑顔になったのはエダマメと、意外にも復讐対象だったルイス自身でした。
ルイスはアビーと同様に自暴自棄でしたが、中断されていたクラークとの真剣勝負を通じて、再び生きる活力を取り戻しました。
自暴自棄から脱したからこそ、素直にイザベルに「ただいま」といえたのでしょうし、露悪的にならずにアビーに謝罪できたのでしょう。
人道支援へ寄付していたことからわかるように、ルイスはきちんと贖罪こそしていましたが、事故で何もできなくなってしまい、自暴自棄になったことが窺えます。
それでもイザベルの支えやクラークからの触発もあって、彼は過去を受け入れ、罪を背負いながらも生きることができるようになったわけです。
そしてそんなルイスの半生もまた、アビーと重ねられます。
ルイスは過去の清算をエアレースを通じて果たそうとしますが、事故で失敗し、自暴自棄になりました。
これに対し、アビーは過去の清算を武装行為で果たそうとしますが失敗し、自暴自棄になります。
つまり二人とも過去の清算に失敗して、自暴自棄になるという流れがピタリと一致するわけですね。
ただ、ルイスにはイザベルやクラークという人がいたために、僅かながらも生きる気力を残していました。
だからルイスは陰ながらリハビリに奮闘できたわけです。
しかしアビーにはそんな人がいなかった、だから命を捨てるような行為を繰り返し、本当はルイスを許そうとしていた自分も見失っていたんですね。
そんな中、不在だったアビーを支える人がエダマメになりました。
エダマメは過去をほじくり返すようなことをせず、ただアビーの味方でいることを伝え続けました。
それこそルイスの気持ちを知りながらも彼に選択を委ねたイザベルのような立場ですね。
そして騙されたことに気づいたサムが襲撃してくるという危機的な状況の中で、エダマメは自らアビーと一緒に命を左右する重大な局面を潜り抜けます。
どんな状況になっても味方でいるエダマメの存在があったからこそ、アビーは自暴自棄だった自分を建て直すことができたのでしょう。
つまり、ルイスにもアビーにも必要だったのは「支えてくれる人=味方」だったということですね。
エダマメ奮戦!
「Singapore Sky」において、エダマメはアビーはもちろん、ルイスやイザベル、何ならクラークの本望を遂げさせる八面六臂の活躍ぶりでした。
いやー、アビーは散々フラグが立てられていたから何となくわかるけど、ローランのコンゲームを無視してルイスとクラークの真剣勝負をお膳立てする様はなかなかかっこよかったですね。
「Los Angeles Connection」でもエダマメはカッサーノの懐に巧みに潜り込みましたが、彼の強みは誰かの心の支えになれるという点にあるのでしょう。
人の求めるものや苦悩を見抜き、そこに対して適切にアプローチできる。
ベタベタな優しさや単純なお人好しではなく、ありのままの相手の心を受け入れ、的確に返せることがエダマメの最大の才能かもしれませんね。
また、エダマメの趣味であるカプセルトイがアビーに影響を与える場面があったのには驚きでした。
つくづく古沢良太はカプセルトイを組み込むのが好きだな(笑)
今回は明智光秀のカプセルトイが出てきましたが、「信念を持って裏切る」というその姿は、ルイスに重ねられていたのでしょう。
また、ローランのコンゲームを無視するエダマメやアビーにも同時に重ねられているといえるでしょうね。
いずれにせよ、「信念のためにあえて逸脱する」といったメッセージがある印象です。
前にエダマメとローランを比較する際に「信念」というワードを使いましたが、ここにもつながっていそうな感じがしますね。
どちらにせよ、エダマメのコンフィデンスマンとしての方向性が今回見えてきたのではないでしょうか。
ただ、エダマメが豊臣秀吉に対して、アビーが引いたのは明智光秀…。
最終的に敵対した武将が出てくるとなると、また別の意味合いがあるのではないかと疑ってしまうな…(笑)
ローランは知っている
今回のコンゲームはダニーを騙した時と同様、「相手の賭けを外させること」が核心でしたが、エダマメとアビーがルイスとクラークを勝負させたために大失敗…。
になるかと思いきや、ローランはそれすら見越してクラークが負けたと偽装する準備を済ませていました。
まぁアビーにルイスについて教えるように迫られていましたし、ローランがある程度エダマメやアビーの動きを把握していても不思議ではありませんが…。
それをあっさり利用してしまう、おまけにエダマメやアビーには何も告げずに泳がせるあたり、ローランの非凡さを感じますね。
何より、行き当たりばったりな癖に無軌道なエダマメやアビーの行動はいち早く察知してコンゲームに組み込んでしまうところにローランの怖さを感じます。
なんか、エダマメは相手の心の内側を見ようとするのに対し、ローランは最低限の情報を得たら後は放任してしまうドライさがあるんですよね。
良くも悪くもエダマメとローランは対比的に描かれていると感じました。
『グレプリ』第10話感想
「Los Angeles Connection」と比べると、いささかシンプルな構成だった印象です。
だからこそ変に深読みして外しちゃうんだなぁ…(笑)
まぁサムは大損しましたが、どうやらエアレースはクラークやルイス達が作り直していきそうな予感がある終わり方ですし、何よりエダマメ・アビー・ルイス・イザベルの描き方が良かったので、満足できる出来栄えでした。
さて、次回の舞台はどうやらロンドンのようですけども…。
一体どんなコンゲームが行われるのか、注目です。
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