皆々様こんにちは。
『イド:インヴェイデッド』(以下『ID』)担当のgatoです。
さて、前回までは壮絶な死闘(?)の果てに酒井戸(さかいど)や本堂町(ほんどうまち)の活躍で「アナアキ」こと富久田(ふくだ)が逮捕されました。
独特な世界観と台詞回しが印象的な本作ですが、いきなり重要人物と思しき富久田が逮捕されてビックリ…。
酒井戸やかえるちゃんの謎も解けていませんし、一体どんな展開が待っているのか…。
今回は新たな犯人が新たな事件を起こすようですが、何が起こったのか早速振り返ってみましょう。
スポンサーリンク「花火師」の末路
今回登場したのは連続爆破事件を起こしている「花火師」こと冬川浩二でした。
戦場帰りの報道カメラマンでテ口を経験したという彼は、惨劇を前にして空っぽな野次馬と化した人々の存在を思い知らせるために事件を起こした…と見せかけて、実際は自分が体験した地獄を再現しようとしていました。
野次馬への怒りをぶつけていると見せかけて、本当はあの地獄を前に何の価値も持ち得ない人間を暴露し、美しい地獄の只中でも生きている自分に酔いしれていただけだったわけです。
まぁサディスティックというかなんというか…。
野次馬への正義感で動いているような姿は見せかけで、本当は憧れた地獄を再現して野次馬に対する優越感に浸りたかったというなかなかチンケな欲望を満たしていただけだったんですね。
そんな冬川ですが、最期は秋人に問い詰められて自分の掲げる正義と欲望のギャップを思い知ることになり、そのギャップを解消させられるかのように自ら命を絶つことになりました。
『羊たちの沈黙』でハンニバル・レクターが対話で囚人に命を絶たせたのにちょっと似ていますね。
また、あのやり取りを見ている限り、冬川は自分の掲げる正義と欲望のギャップに無自覚だったように見えます。
作中では意識の思考と無意識の思考(内容?)が異なっているように描写されていますが、冬川もまたそのような一面があったことが窺えます。
スポンサーリンク酒井戸=秋人の過去と危うさ
今回は酒井戸のパイロットである秋人の過去が語られました。
秋人は以前サツ人課の刑事を務めており、松岡と同僚だったとのこと。
そして妻と娘がいて、彼女達が何者かによって命を奪われたということ。
何故彼が捕まっているのかまでは語られませんでしたが、妻と娘の命を奪われたこと、それまで仕事にかまけて家族の側にいてやれなかったことへの後悔は残っているらしく、それらが酒井戸の振る舞いやかえるちゃんの在り方に影響していると窺えます。
ラストで「かえるちゃんは椋(むく)じゃない」と呟いていましたが、かえるちゃんに娘の椋を投影していたことの証左ですね。
他方で、過去の事件があったとはいえ冬川のように犯人に自ら命を絶たせるように追い込むなんて、なかなかやろうと思うことではないですが…。
それこそ後述するように「怒りと楽しみ」が、その行為の中で同居しているのかもしれません。
スポンサーリンクかえるちゃんと椋と綾子
前回の記事でかえるちゃんと秋人の家族、とりわけ娘に関連性があるのではないかと指摘しましたが、どうやらその線が濃厚のようですね。
作中でかえるちゃんが椋になって話しかける場面が最も顕著ですが、あの外見はどちらかというと妻の綾子を連想させる姿です。
となると、かえるちゃんは恐らく秋人が喪った綾子と椋の合成のような存在なのでしょう(トラウマの総合的象徴…みたいな)。
もしかしたら酒井戸を通じて生み出された秋人の無意識の産物かもしれませんね。
ただ、椋と綾子に関しては謎なポイントが色々。
まず秋人との関係性。
椋に「警官に向いてるか?」と聴かれた際に秋人が「こんな会話はなかった」と独白しているところを見ると、秋人と椋の関係は必ずしも良好ではなかったようです。
綾子といちゃついている場面では特に何もいっていなかったので、綾子との関係性はそこまで悪くなかったようですが、彼女の最期が描写されていない点も気になりますね。
これだけ見ると秋人は単純に愛する家族を奪われた…というわけではない予感がします。
もしかしたら家族との間にタダならない摩擦があったのかもしれませんね。
後、椋の命を奪った犯人。
聞き間違いでなければ連続サツ人鬼「タイマン」がやったようですが、連続サツ人鬼という段階でジョンウォーカーの存在がちらつきますね。
ただ、今回は秋人はジョンウォーカーそれ自体に対してこだわりを持っている描写が少なかった気が…。
冬川にジョンウォーカーについて尋ねることもなかったですし、意外とそこまで憎しみを向けていないのだろうか…。
本堂町の危うさ
前回大活躍だった本堂町ですが、個人的にちょっと危うい子だなーって思っちゃいました(笑)
偶然とはいえ発生した自分のイドに興味を持つのはわかりますが、それを他人に見られていることに対して「楽しい」といったのはちょっとびっくり。
イドが自分も把握していない無意識とはいえ、実質的に心を他人に覗かれているわけですからね。
「楽しい」と思えるほど普通前向きに捉えられないだろうに(笑)
それに関われなかった花火師の捜査に対しても「いいなぁ」といったり…。
あれだと外務分析官の仕事を正義感や使命感でやっているというより、純粋に「楽しんでいる」感じがしますね。
富久田に対して毅然と立ち向かっていた姿とちょっとギャップを感じるなぁ…。
後、母親との折り合いは良くないようですね。
まぁ頭に穴を空けられた娘の見舞いにも来ていないところを見ると、かなり疎遠になっている感じが…。
一見すると健気で正義感が強い女の子に見える本堂町ですが、意外と闇というか…業が深い感じがします。
怒りと楽しみ
今回印象的だったのが、松岡が秋人と本堂町を重ねて語った「怒りと楽しみ」の話でした。
松岡曰く、秋人と本堂町は怒りと楽しみが共存している…とのことですが、二人の人間性を見ているとそれとなくわかります。
秋人は犯人への怒りを向ける一方、彼らが自ら命を絶つよう仕向けることを楽しんでいるかのような描写があります。
一方の本堂町は富久田に対して毅然と立ち向かい、怒りを向ける一方で犯人の捜査を楽しんでいる節があります。
確かにそれぞれ「怒りと楽しみ」が共存しているといえますね。
この二人を見ていると、今作は悪事や犯人に対して怒りを向けつつ、その解決や制裁を楽しめる者が名探偵…という定義づけをしているような予感がします。
「ドグマに落ちた」
今回はイドについても色々語られていましたね。
松岡が本堂町に語ったところによると、イドに潜入することは無意識を意識するような行為であるということ。
いうなれば観察され得ないダークマター的な存在を観察、それも他者の目で観察する行為だということですね。
そのためイドは入り込んだ意識を回避するために不可視化し、膨張していくそうです。
なるほど、それとなく理に適っている感じはしますね。
他方でイドの中にそのイドの持ち主が入り込むことは禁忌とされているとのことですが…これを実際にやったら「ドグマに落ちた」という状態になるそうです。
これは不可視化、膨張を続けるイドに囚われ、記憶を失くして出られなくなってしまう状態を指すとか。
そして酒井戸が毎回記憶を失っている理由はその「ドグマに落ちた」状態にならたないためだそうです。
松岡は「ドグマに落ちた」状態にならないようにするための安全確保、という風に表現していましたが、個人的には記憶を失くすことで「意識であること」を希釈している印象でした。
つまりイドの中の住人のように、無意識が用いる記号的な存在に限りなく近づくことでイドに警戒されないようにしているという具合です。
もし「ドグマに落ちた」状態になると精神と肉体が分離し、最悪命を落とす結果になるそうですが…なかなか怖いシチュエーションですね。
それにしても実質的に魂と肉体を分離できるミヅハノメの性能ぶりといったら…。
蔵の面々でさえも原理を理解しきれていないとのことですが、そんな不気味なものよく運用できるな…。
スポンサーリンク『イド:インヴェイデッド』第3話感想
全体的にトーンが淡々としている印象でしたが、本堂町や秋人の危うさがしっかり描かれており、どこか得体の知れなさを感じさせるエピソードでしたね。
秋人が暴走する展開はそれとなくわかりますが、本堂町がどんな展開を見せるのか興味が出てきましたね。
後、気になったのがエンドロール。
CVの紹介で富久田の名前の上に「名探偵穴井戸」という名前がありましたね。
…えっ、富久田もイドに潜るの?!
それも名探偵として?!
これは…続きが気になる(笑)
▼前回までの記事はこちらから
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コメント
なんでも受け入れそうな本堂街と開放的な富久田はいいカップルになりそう
名無しさんコメントありがとうございます!
>なんでも受け入れそうな本堂街と開放的な富久田はいいカップルになりそう
初対面こそ敵同士でしたが、富久田の心中の語られ方によっては本堂町と彼は確かにいいカップルになるかもしれません。
富久田の「穴」に関する哲学は依然として不明ですが、穴のおかげで「世界がキレイに見える」という富久田の感覚は確かにある種の開放性に心酔しているといえます。
それに対し、自分のイドに他人が踏み込むことに対して「嬉しい」といえる本堂町は富久田と共通項を持っていると解釈することは可能でしょう。
二人の絡みには個人的にも注目していきたいですね。
私のイドについての勝手な考察なのですが、イド=あの世の可能性が有るのではないのかなと思っております。井戸は黄泉の国、あの世の入り口と言う考えもありますし、今の所酒井戸、犯人、ジョンウォーカー意外でイドに現れているのは死者だけです(本堂町は死にかけですが)。
死に触れた者のみイド、あの世に入ることができるのではないでしょうか。(本堂町も死に触れて、イドも生成されたのでこの先”名探偵”になる可能性があるかもしれませんね)
名無しさんコメントありがとうございます!
>イド=あの世の可能性が有るのではないのかなと思っております。
確かに古典落語に出てくるお菊のように(皿を数えるアイツです)井戸はあの世の入り口として捉える表現は多いですし、名無しさんの考察はかなり的を得ていると思います。
というか、仰るようにイドに登場しているのがタヒ者のみである点や、タヒに触れている者がイドに関わっている点を踏まえると結構そこは重要なファクターなのかもしれませんね…。
名無しさんも触れていますが、個人的にこのファクターは名探偵にも関連するかと思います。
名探偵は事件…ひいては人のタヒ(被害者)がなければ成立しない立ち回りですし、ある意味最もタヒに対峙している存在なのかもしれません。
酒井戸、富久田をはじめとする犯人、そして本堂町がイドに関われるのもその点が影響しているのでしょう。
ちょっと次の記事からもその点を踏まえてみてみますね。
今更な気がしますが、今まで見て何となく気になったことについて書きます。5話までみました。
3話の冒頭秋人と娘の椋がゲームをするシーンで2人が持っていたゲームのコントローラーと後ろの果物の大きさがコントローラーは秋人の方が大きく、果物は椋に近い方が大きくなっています。これは単に体の大きさに合わせて秋人のコントローラーを大きく書いただけかもしれません。ですが個人的には論理的な考えと直感的な考えなどを暗示していたら面白いかなと思いました。
また4話で出てきた穴井戸という名前から、秋人のイドの中での名前酒井戸は酒が頭につく事件の名残だと思います。酒を使った事件だとしたら何となくヤマタノオロチを倒したときの手段で酒の入った壺を飲ませ、酔い潰れたところを襲うというのが浮かびました。ただ読みがさかいどなのでこれが正解ではないと思います。
あまり纏まってませんがこんな感じです。
名無しさんコメントありがとうございます!
>3話の冒頭秋人と娘の椋がゲームをするシーンで2人が持っていたゲームのコントローラーと後ろの果物の大きさがコントローラーは秋人の方が大きく、果物は椋に近い方が大きくなっています。
こ、細かいな…(笑)
確認してみましたた、確かにそうなっていますね。
同じゲーム機のコントローラーの大きさがああも違うのは確かに違和感がありますし、大きさと言う観点でみるなら果物が示唆に富んでいそうな感じもありそうです。
ただ、具体的に何のメタとして機能しているかは…ちょっとわかんない(笑)
秋人があの光景に対して「こんな会話はなかった」といっていたように、あの場面はいってしまえば秋人の妄想の可能性が高く、どんな感情をもって構築されているかがまだよくわかっていません。
だからコントローラーや果物がメタだとしても、どこに結びついているかはまだ判断できない…。
すいません、もう少し話を追って考えてみますね。。。
>また4話で出てきた穴井戸という名前から、秋人のイドの中での名前酒井戸は酒が頭につく事件の名残だと思います。
なるほど、それは面白い解釈ですね。
以前別の方が登場人物の名前が福井の地酒から取られているといいましたが、ミヅハノメなどの名前の元ネタになっている日本神話と絡めると、なるほどヤマタノオロチが出てきても不自然ではありません。
それに酔わせてから命を奪うというやり口が、「弱みを握ってから自ら命を絶つよう追い込む」という秋人の手段とそれとなく重なる感じもありますしね。
また、酒井戸の読み方に関しても「さか」になっていても、酒それ自体のニュアンスは含まれていると思います。
個人的には「酒」と「逆」がかかっている印象があります(まだ確証はないですけど笑)