皆々様こんにちは。
『イド:インヴェイデッド』(以下『ID』)担当のgatoです。
さて、前回はかつて刑事であり、妻や娘を喪ったという酒井戸(さかいど)こと秋人の過去のみならず、花火師に自ら命を絶つよう仕向けるなど、彼のヤバい一面が垣間見えました。
ついでに本堂町(ほんどうまち)もちょっと危なそうな一面が出てきたりと、今後の展開に影響しそうな描写が多々ありましたね。
そんな中、今回はアイツが新たな名探偵に!
おまけに再びえげつない事件が起こってしまいます。
新たな名探偵も登場したことでどんな展開になっていったのか、早速振り返っていきましょう。
スポンサーリンク模倣された墓堀
今回の事件はさらった人を生き埋めにし、生き残れるかどうかをライブ中継するという悪趣味極まりない「墓堀」…を模倣した大野源平が犯人でした。
生き埋めにされた菊池桂子(きくちけいこ)は残念ながら既に息を引き取っており、大野は自分の犯罪を墓堀に見せかけえ隠蔽するために彼女が息を引き取る様を録画して流していた…という結末。
後味悪かったなぁ…。。。
それにしても大野があっさり捕まって終わってしまったので、彼の動機は不明なままでしたね。
ただ、イドでの菊池の証言である程度推察はできそうです。
大野のイドの中で菊池は彼を「ダメな人」と評しており、実際家族がいるにも関わらず「全部やり直す」ために家に火を点けたといいます。
そして菊池は彼が自分を「目撃者だと思っている」ということも語っていました。
つまり自分の犯罪を隠蔽するための口封じ…というのが今回の事件の動機でしょうか。
一方で、拘束された大野が高笑いをしていたところを見ると、彼は菊池に対して別の思い入れを持っていた可能性もあるでしょう。
実際、何年も経ってから口封じをするというのも不自然ですしね。
もしかしたら彼が何もかもを完全にやり直すうえで、菊池の存在は非常に邪魔だった…あるいは自分を「ダメな人」と見る彼女の存在を消せなければ「ダメな人」から脱却できなかった…みたいな動機も潜在的にあったのかもしれません。
ところで、大野が墓堀を模してライブ中継をやっていた画面で「穴を埋めた」なんて文言があるのがちょっと気になっちゃうな(笑)
まぁ墓堀ですから、単純な言葉の綾でしょうけど、富久田絡みで散々穴が重要なキーワードになっているのでつい関連付けたくなってしまう(笑)
スポンサーリンクあの世としてのイド
前回の記事のコメントで「イドとはあの世ではないか?(要約)」という解釈を頂きましたが、今回はそこから少々(という名のかなり)引き合いに出させて頂こうかと…(笑)
実際、今回を含め登場してきたイドは事件の被害者ばかりが住人として登場しており、ある種のあの世として解釈が可能なものでありました。
イドが重ねられている井戸はあの世への入り口として解釈するケースはありますし、異土=あの世と捉えればなかなか納得できる解釈であるかと思います。
他方で、登場しているイドは基本的にサツ人鬼のものであり、彼らの行動や思考が犯罪と密接に関連している以上、被害者が住人として登場するの当然と反証できる余地があります。
実際、本堂町のイドにはかえるちゃん以外でタヒ者の住人はいませんでしたしね(命が尽きかけていた状況が影響した可能性は高いですが)。
ただ、そもそもイドが「サツ意の世界」といわれている以上、生者だけでなくタヒ者が住人となるのは必然といえます。
そのため、単純にあの世とはいえなくても、生者とタヒ者が混在する「この世とあの世の狭間」と解釈できる余地はあるでしょう。
それこそ、この世=意識とあの世=無意識と捉えることもできそうです。
…うーん、でもこの解釈を提示したところでまだ何とも言えないのが現状(笑)
この辺は続きを見ながら、考察を深めていきたいと思います。
スポンサーリンク秋人のサツ意―—サツ人鬼と名探偵―—
ラスト付近で秋人が百貴に自分のサツ意について語っていましたが、これは第2話で本堂町が語っていたものに近しいものがありました。
冬川をはじめ、秋人がサツ人鬼が自ら命を絶つよう仕向けてきたのは、彼が抑えきれないサツ意を持っていたからでした。
そのサツ意は要約すると「怨みや理由もなく、ただ『コロせる』と思ったからやった」という抽象的なもの。
ただ、それが決して衝動的なものではなく、同時に理性的なものではないややこしいものであると窺えます。
うーん…結局何なのかはまだ判然としないところですが、精神分析ネタが多い本作の傾向を踏まえると、ある種のデストルドー(タナトス、タヒの欲動)に近いものなのかなぁと思いました。
でもデストルドーはどちらかというと内向的なものなので、外向的な攻撃性みたいなものと捉えるのがちょうどいいのかもしれませんが…。
辞書通りの意味合いでしか知らない僕が語るのもちょっと怖いのでこれくらいにしますけど(笑)
また、そんな秋人を見ていると今作における探偵とサツ人鬼はちょっと面白い解釈ができそうです。
基本的に『ID』に登場する探偵はサツ人鬼とセットになっているといっても過言ではありません。
すでに5人も命を絶たせている秋人はもちろん、今回新たに名探偵となった富久田もれっきとしたサツ人鬼です。
これらの点を踏まえると、今作は敢えて探偵をアンビバレントな存在として扱っていることが窺えます。
なぜ探偵とサツ人鬼とセットにしているかは続編を待たなければわかりませんが、この点は今後も追っていきたいと思います。
かつての同僚
今回は井戸端スタッフのリーダーである百貴(ももき)と秋人の関係性が明らかにされました。
どうやら二人は刑事時代の同僚だったようですね。
同じく同僚だった松岡は秋人をかなり嫌っていましたが、百貴の方はまだ秋人を仲間と思っていたいようです。
徹底的に秋人を酒井戸として使い倒す百貴ですが、さりげなく彼の様子を案じたり、自分を人ではないと思う秋人に「お前は人間だよ」と諭すところにそれが窺えますね。
一方、秋人が百貴に対して敬語で話すなど、どこか他人行儀で振る舞っているところは意図的に百貴と距離を取ろうとしている感じがします。
まぁ前述したように秋人は自分の得体のしれないサツ意を制御しきれていないことがありますし、かつての仲間だった百貴に対して後ろめたい気持ちを抱いているのかもしれませんね。
また、かつての同僚ではないにせよ、酒井戸に対しては井戸端スタッフは応援するなど、どこか信頼を寄せている描写も多くありました。
秋人にとって最終的に縋れる理性の端緒は百貴であり、酒井戸として活動できる生命線は彼を信頼する井戸端スタッフの存在があってこそなのかもしれません。
“名探偵”穴井戸
冒頭で視聴者を驚かせたのが、第1話~2話の敵だった富久田が「名探偵穴井戸」としてイドに潜入していた場面ではないでしょうか。
前回の秋人と冬川とのやり取りや、秋人が看取に連れて行かれるところを見た富久田は、蔵がサツ意を検知し、秋人を使って捜査していることを見事見抜いていました。
頭がおかしいことで定評がある(笑)富久田ですが、以前はIQ150以上の数値を叩き出すなど、結構頭脳派だったらしいですね。
そしてちょうど秋人が冬川の件で懲罰房に入っていたので、あっさりイドのパイロットに選ばれた富久田ですが…。
結局、富久田はイドですぐ命を落としてしまっていたので名探偵として稼働するのは一度見送られたようです。
富久田は「自分で頭に穴を空けている奴のサバイバリティは低い」と自嘲していましたが、あの様子を見るとわりと初めてのイドを楽しんでいただけのような節がありますね。
それにイド内での穴井戸という名前…。
穴に固執する富久田ですが、探偵になっている時にもそれが表れている点も注目していきたいポイントです。
ところで余談ですけど、名探偵になるとちょっと若返るんですかね?
秋人は結婚していた時期の姿になっていましたし、富久田も現在の外見ではなく身分証の写真に近い風貌になっていました。
あの姿だった時期に妻と娘の命が奪われる事件が起こった秋人にとって、名探偵になるある種のターニングポイントをあの姿が示しているといえますが、富久田もそうなのでしょうかね…。
また、サツ人鬼にとことん冷酷でも、かつて刑事だった秋人に対し、富久田は純然たるサツ人鬼ということもあって、井戸端スタッフ間でも嫌な空気が流れているようですね。
富久田の存在と空気感が蔵内部に嫌な亀裂を生じさせる可能性もありますね…。
後、富久田がイドに潜入している際もかえるちゃんが出てくるようですね(富久田=穴井戸は「かえるくん」と呼んでいましたが)。
どうやらかえるちゃんはイドに潜入した人間を前に共通して出現する記号のようです。
うーん、秋人の妻と娘の命を奪ったのが「タイマン」であると判明している以上、富久田が秋人、あるいはその家族と個人的な関わりがあったとは考えにくいしなぁ…。
でもどうしてミヅハノメがかえるちゃんという記号を用いるのか…この点の謎は深まるばかりです。
スポンサーリンク『イド:インヴェイデッド』第4話感想
少しサスペンス要素が強めだった印象ですが、秋人のサツ意、富久田の探偵化、秋人が駄目になると機能不全になる蔵の不安定さなど今後の展開につながりそうな要素が多かったですね。
今後の展開につながるといえばラスト!
現場復帰した本堂町が富久田の被害者である数田遥にキスされてましたね。
これは普通にびっくりした(笑)
頭に穴が空き、すっかり魂が抜けたような数田ですが、あの行動の意味はなんだろうか…。
続きが気になってしょうがない(笑)
▼前回までの記事はこちらから
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コメント
かえるちゃんって“井の中の蛙”だからかえるなのかと気が付いたこの頃。
なりひさごもヒョウタンの別名でしたね。やはりイドに入った人は水に関係する名前になるんですかね?
名探偵がターニングポイントの頃の姿をしているのなら富久田の火傷に何か意味があるのかも?
ミヅハノメの名は古事記から取ったとも言っているので、罔象女神(みずはのめのかみ)に関している他の神も何らかの形で登場してくるかも。古事記ではイザナミが火の神(ひのかくずちのかみ)を生んだ時に火傷をして、その後に他の神と水神ミヅハノメとワクムスビ生んでるから火傷をしている富久田はやはりストーリーに深く関係してるんでしょうね……
名無しさんコメントありがとうございます!
>かえるちゃんって“井の中の蛙”だからかえるなのかと気が付いたこの頃。
おおっ!
その解釈…理に適いすぎてる(笑)
なんで気づかなかったんだろうか…orz
だとしたら、妻と娘を喪った過去や自分のサツ意に囚われ続ける秋人の在り方を端的に示している感じがしますね。
>古事記ではイザナミが火の神(ひのかくずちのかみ)を生んだ時に火傷をして、その後に他の神と水神ミヅハノメとワクムスビ生んでるから火傷をしている富久田はやはりストーリーに深く関係してるんでしょうね……
なるほど、その解釈は面白いですね。
彼の過去は不明ですが、あの火傷が彼のパーソナリティや世界観に大きく影響したのであれば、それが今後のストーリーを大きく動かす可能性は高そうです。
それに火傷=火と考えると、なるほど水に固められた蔵の面々の中における異端とも見えますね。
個人的には富久田は頭に穴を空けることである種の開放性に固執している印象がありますが、それが井の中の蛙状態=ある種の閉塞性に囚われている秋人と対になっている…みたいに捉えても面白いかもしれない。
穴井の皮肉なセリフと言い、もはや原型を留めていないのに意地でもカエルちゃんだと言い張る坂井戸のセリフがシュールで笑ってしまった。
それに反して事件の結末は胸糞が悪くやるせなさが残りました。
映画ソウにもあのオチのギミックが施されいたので薄々感づいていましたが、ああはなって欲しくなかったなぁ。
本堂町小春はカーレッジ君並みの事件に巻き込まれる素質がありますね笑っ
数田はドリルで穴を開けられた影響で思念粒子を検出されない体質になってるのかも。
そこから被害者を容疑者に変貌させているジョンウォーカーの存在が垣間見えてきそうですね。
名無しさんコメントありがとうございます!
>もはや原型を留めていないのに意地でもカエルちゃんだと言い張る坂井戸のセリフがシュールで笑ってしまった。
あー、確かにあの外見でかえるちゃんと断定する様はちょっと不思議ですよね。
恐らくイド内での立ち回りとしてあらかじめプログラムされているような感じでしょうけど、秋人が結構かえるちゃんに思い入れがあるようですから、何かしらの感情でそうしている感じがありますね。
>映画ソウにもあのオチのギミックが施されいたので薄々感づいていましたが、ああはなって欲しくなかったなぁ。
結構嫌な結末でしたよね。。
『ソウ』は観た事ありませんが、何となく想像はつきます。
>数田はドリルで穴を開けられた影響で思念粒子を検出されない体質になってるのかも。
あー、なるほど。
「風で飛ばされる」といっているあたり、思念粒子は物理的なものっぽいですし、頭に穴を空けたことでそこから漏れ出ていく…みたいなこともありえそうですね。
>そこから被害者を容疑者に変貌させているジョンウォーカーの存在が垣間見えてきそうですね。
なるほど、被害者を容疑者に変貌させるというのは興味深い解釈ですね。
そうなればPTSDなどのような精神分析的なものと絡められますし。
ジョンウォーカーのサツ人鬼造りの手口がそれならば、作品としては結構マッチしている気がします。
福井出身の舞城王太郎は、登場人物名を福井関係にすることが多いですね。
特に今回は福井の地酒に関係するものばかりです。
日本酒好きとしてはたまらない設定です。
名無しさんコメントありがとうございます!
>特に今回は福井の地酒に関係するものばかりです。
そうだったんですね!
舞城王太郎が福井絡みのネタをよく使うことは知っていましたが、今回は地酒だったのか…。
「羽二重」ってあるから福井絡みとは思っていましたが、そこかぁ(笑)
てっきり餅だと思っていました(笑)