皆々様こんにちは。
『イド:インヴェイデッド』(以下『ID』)担当のgatoです。
人の頭に穴を空けるという猟奇的なシリアルキラ一「アナアキ」の謎解きからスタートした『ID』ですが、早速黒幕と思しき富久田(ふくだ)と接触する展開になってきました。
さらわれたと思しき新任外務分析官の本堂町(ほんどうまち)の安否が気がかりですが…。
一方で謎はまだまだ盛り沢山なので、酒井戸(さかいど)と一緒に色々追っていく必要はありそうですね。
スポンサーリンクかえるちゃんの正体
前回の記事では密室で起こった「かえるちゃん事件」を張り切って勘ぐっていましたが…。
今回のエピソードでものの見事にひっくり返されました(笑)
実際に富久田がアナアキとして起こした事件とかえるちゃん事件は別物…それどころかかえるちゃん事件はほぼほぼ無関係どころか、事件として存在していないようです。
おまけにイドに入るとかえるちゃんは必ずといっていいほど何らかの形で命を奪われているとのこと。
どうやらかえるちゃんの正体はイドにおけるある種の象徴・記号のようなものらしく、様々な形で現れているとのことです。
実際かえるちゃんは富久田のイドではナイフで刺されていたのに対し、本堂町のイドでは首を吊っていました。
恐らくかえるちゃんはそれぞれのイドの背景に合わせて姿を変えて現れてくるのでしょう。
例えば富久田のイドの右目の辺りが描かれていないかえるちゃんは「頭に穴を空けられた被害者」を反映しており、本堂町のイドの足を縛って首を吊っていたかえるちゃんは本堂町の状況と行為を示唆している…という具合に。
少しメタ的に捉えるなら、かえるちゃんはイドにおける「被害者」の役割を担っているという感じでしょうか。
「名探偵」の役割を得ている酒井戸、そしてイドで謎を生み出す者を「犯人」と捉えるなら、ちょうど「名探偵」—「犯人」—「被害者」というミステリーを成立させる三竦みが成立しますね。
ただ、依然としてかえるちゃんに関する謎は残っています。
まず富久田のイドに出現したかえるちゃんがナイフで刺されていた理由。
本堂町のイドでは彼女の状態を再現していたのに対し、「ナイフで刺されている」という状態は事件と関連性がない感じがしますね。
富久田のバックボーンが絡んできそうな予感がしますが、あのかえるちゃんの状況には別の意味があるような気がしますね。
また、かえるちゃんの正体それ自体にも色々疑問が。
東郷と早瀬浦のやり取りを聴く限り、かえるちゃんはミヅハノメが特定の要素を便宜的に再現するための記号であり、実在していないと推測されていたようです。
しかしジョンウォーカーが実在している可能性が浮上したうえに、百貴が口にしていた「むくちゃん」や「三回忌」という言葉を踏まえると、少なくともかえるちゃんにはモチーフとなった故人がいる可能性が高くなります。
それこそ秋人が部屋にたくさん貼り付けていた娘と思しき人物が「むくちゃん」であり、かえるちゃんのモチーフである可能性が高いでしょう。
そうなるとかえるちゃんはミヅハノメが用いている記号というより、酒井戸…ひいては秋人が生み出している存在…と解釈できる余地が出てきますね。
スポンサーリンク酒井戸と秋人
今回は酒井戸の本体(?)である鳴瓢秋人(なるひさごあきひと)が登場しました。
外見こそ酒井戸とそっくりですが(若い頃は完全に瓜二つ)、微妙にパーソナリティが食い違っていましたね。
その原因は彼がイドに入り、酒井戸になる度に記憶をリセットしているからでしょう。
どうやらイドは潜入すると現実世界での記憶がリセットされる仕組みがあるようです。
ただ、イド内部での記憶はそのまま残るみたいですね。
それにしても秋人の言動を見ていると、彼は犯人に対してかなり辛辣…というか百貴の言動を聞いていると彼はイドを通じて最終的に、犯人が自ら命を落とすよう追い込むなんてことをやっている模様。
それも「五度目」という台詞を聞いている限り、一度や二度じゃ済まないようですね。
おまけにイドに入り込むことをわりと楽しんでいる節があり、単純な正義感で動いている人間ではないのでしょう。
これだけ見ると彼は事件の捜査よりも犯人の始末を目的にしている感じがしますね。
事実、彼は服役中と思しき描写もあり、松岡のいう通り過去にサツ人を犯している可能性は高いでしょう。
過去に妻や娘がいたことや犯罪者への感情も踏まえると、もしかしたら家族が悪質な犯罪者の犠牲になったために復讐した…みたいなエピソードがあるのかもしれませんね。
また、秋人はかえるちゃんに対しても並々ならない思い入れがあることが窺えます。
酒井戸のかえるちゃんに対しての思い入れはまさに秋人のものですし、その思い入れは記憶の有無に関わらずより深い感情に根付いたものなのでしょうね。
むくちゃんが秋人にとって重要な人物(娘)だとしたら、かえるちゃんはむくちゃんと何らかの接点がある…あるいは彼にとってむくちゃんを投影する対象になっているのでしょう。
後、もう少し勘繰るなら秋人が酒井戸となっている際の容姿が家族がいた際の容姿になっているのは、彼にとってかえるちゃんの謎を解くという行為がかつての家族…ひいては娘を救う行為と同じことなのかもしれません。
秋人にとって酒井戸として活動することは、かつて救えなかった家族を救う代償行為なのかもしれませんね。
スポンサーリンク探知の基準
個人的に印象的だったのが本堂町のワクムスビに関する説明でした。
ミヅハノメやワクムスビはサツ意を探知する機械ということですが、どうやら単純に「人をコロしたい」という気持ちや憎しみを感知するわけではないようです。
つまりミヅハノメやワクムスビが探知するサツ意と「人をコロしたい」という気持ちや憎しみは別物ということなのでしょう。
だとしたら、そのような気持ちや憎しみが「サツ意」となる何らかのファクターが重要となりそうですね。
それにしてもイドは自ら命を落とすでも発生するんですね。
実際本堂町は自分の頭にドリルを突き立てましたが、それをきっかけにイドが発生しています。
あの様子だと、もしかしたら本堂町はその結果を見越してあの行為をしたのかもしれません。
だとしたらイドは安直な他者へのサツ意だけでなく、自分自身へ向けたものでも発生する可能性がありますね。
あるいはサツ意がイドの発生事由ではない…のかもしれません。
バラバラの富久田
今回はアナアキこと富久田の内面が描かれていました。
まだまだ謎は多いですが、ひとまず彼にとって自分や他人は壊れており、彼自身の心はバラバラになっている、しかし自身の心がバラバラになっていることを認識していないということがわかりましたね。
東郷の台詞から察するに彼は前頭葉にダメージを受けているらしく、それが原因であの性格になっている可能性が高いでしょう。
前頭葉は統合失調症の発症における重要なファクターですしね。
ただ、彼が「穴」に固執する理由はまだ判然としませんね。
本堂町とのやり取りで富久田が「人が頭に穴を空けるところが見たかった」と語っていましたが、これだけだとただの悪趣味で終わってしまう…。
「頭の穴」は舞城王太郎が別作品でも使っていたモチーフなので、今回もこれが出てくるからにはそれなりに意味があるものだと邪推していますが…。
ひとまず今の段階では「頭に風が通ると世界がキレイにみえる」ということで、彼自身が抱える閉塞感を開放するファクターとして穴が機能している印象です。
そもそもイドの意味合いの一つである井戸は「井の中の蛙」という言葉にもあるように「閉塞した世界」という意味合いで用いられることもあります。
そしてイドはある種の心の世界とも解釈できる。
つまり富久田にとって頭の穴は閉塞した自身の世界を解き放ち、良好に保つうえで不可欠な要素とみることが出来るわけです。
心がバラバラなのに富久田が真っ当に振る舞えるのも、穴が安定剤のような役割を担っているからかもしれませんね。
そんな富久田ですが、今回はあっさり逮捕されてしまいました。
でも本堂町にすっかり首ったけになった挙句に「会いに来てくれ」といっているところを見ると、再登場の可能性は濃厚ですね。
ジョンウォーカー
前回はチラ見せ程度の登場でしたが、今回は「連続サツ人鬼メイカー」ことジョンウォーカーが本格的に出現してきました。
井戸端スタッフの東郷は実在を疑っていましたが、イドの住人=イドの発生源の人物が恐怖の感情を露わにしていたところを見ると、どうやらジョンウォーカーは実在する人物であり、富久田のようなシリアルキラ一を何人も生み出しているようですね。
ただジョンウォーカーの正体に関してはまだまだ謎ばかり…。
「メイカー」っていうくらいですから、シリアルキラ一を作り出すことを目的にしているようですけども…。
それに、ジョンウォーカーが「イド(無意識)に残るほど強烈な印象を残せる」という点を考えると、かなり危険な人物である予感がします。
下手したらイドに関する知識も持っているかもしれませんね。
蔵の軋轢
今回は本堂町がさらわれたのをきっかけに、蔵内部の軋轢が垣間見えましたね。
どうやらミヅハノメやワクムスビは非常に重要性が高い設備であり、そのため蔵にはスタッフよりも設備を優先する傾向があるようです。
おまけにイドの分析やジョンウォーカーの確保を優先するあまり、現場に出向く外務分析官への配慮が足りていない様子。
ワクムスビにGPSがついていなかったり、拉致された本堂町が露骨に後回しになっているのはそのためでしょう。
松岡が局長の早瀬浦に噛みついていましたが、あのやり取りを見ている限り、どうやら蔵は一枚岩の組織ではない感じがしますね。
スポンサーリンク『イド:インヴェイデッド』第2話感想
色々予想していた前提をひっくり返されてすっかり参っちゃいましたね(笑)
ただ、色々面白い要素は詰まっていますね。
1話と2話と立て続けに視聴しましたが、わりと舞城王太郎寄りな内容の印象です。
彼の作品を全て見ているわけではないですが、舞城王太郎は個人が抱く世界…ひいては「セカイ」を解体して突き詰めるようなシナリオが多い印象があります。
個人が生み出すイド=セカイが現実世界にどのような影響を与え、どのように人を狂わせていくのか…。
そんな物語になっていったら個人的に胸アツなんですが(笑)
▼前回までの記事はこちらから
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コメント
う~んなんて言うかこの犯人結局何がしたかったかすら分からずあっさり捕まっちゃいましたねw正直重要そうに思えたのは恐らくラスボス?のジョンウォーカーの存在ぐらいかな、今後の話的には彼に関わった殺人者達を調査していき彼に近づいていくって感じになるのかな
カエルちゃん、素直に考えたらダイブする度にここは何処?私は誰?状態を回復させるために主人公自身が無意識に作った存在って感じかな、娘?に似た外見で注目する毎回死んでるのは死んだ娘を連想させるため?
ジョンウォーカー、この話の流れ的に娘の死因は彼が原因?
イドの世界の事に理由付けをしてはいけないみたい事言ってたがこれ推理モノとして成立するのかな?そして主人公って推理らしい推理もしてなかったと思うが何で名探偵って肩書きなんだろw
取り敢えず次回も観てみます
名無しさんコメントありがとうございます!
>う~んなんて言うかこの犯人結局何がしたかったかすら分からずあっさり捕まっちゃいましたねw
ホントにあっさり捕まりましたよね(笑)
富久田のバックボーンがわからないのでなんともいえませんが…。
まぁあの事件はバラバラになった彼の世界観を補強、あるいは安定させるうえで必要な手段だったのかもしれません。
>正直重要そうに思えたのは恐らくラスボス?のジョンウォーカーの存在ぐらいかな、今後の話的には彼に関わった殺人者達を調査していき彼に近づいていくって感じになるのかな
恐らくイド内でジョンウォーカーの残滓に接近しながら彼に迫っていくのでしょうね。
ジョンウォーカーも坂井戸…もとい秋人の身近な人間が正体だったりするのでしょうかね。
>カエルちゃん、素直に考えたらダイブする度にここは何処?私は誰?状態を回復させるために主人公自身が無意識に作った存在って感じかな、娘?に似た外見で注目する毎回死んでるのは死んだ娘を連想させるため?
個人的にも同意見ですね。
秋人と深いつながりを持つ娘をイメージにすることで、かえるちゃんはイド内で記憶喪失に陥った秋人を「名探偵坂井戸」というキャラクターに結びつけるノードの役目を果たしているのかもしれません。
『インセプション』では夢と現実を判別するためにコマを用いたり、『サイコパス3』ではメンタルトレースをした灼を我に返らせるために炯が「雨は止んだ」と告げたりしますが、かえるちゃんはそれらと同じような役割を持っているのかもしれません。
>イドの世界の事に理由付けをしてはいけないみたい事言ってたがこれ推理モノとして成立するのかな?
>そして主人公って推理らしい推理もしてなかったと思うが何で名探偵って肩書きなんだろw
それ!(笑)
探偵や推理を脱構築するような台詞ですよね…。
作中における探偵や推理にどんな意味を持たせるつもりなのか、注目したいところです。
普通の人がイドに入ると記憶喪失のままだけど
殺人衝動の世界であるイドの共通点である殺人の記憶の部分を引き継げて
その被害者をカエルちゃんとして具現化して認識する事で『名探偵』と言う役割を思い出すように自己暗示をかけている
だから殺人を犯した人しかイドに潜入できないと推測
親子の写真に写っている
子供の方は本堂町の面影が
大人の女性はカエルちゃんに似ている
カエルちゃんは亡き妻で
その妻を殺害した衝動ににジョンウォーカーが絡んできて
冤罪を実証するために協力しているのかなと憶測
名無しさんコメントありがとうございます!
>殺人衝動の世界であるイドの共通点である殺人の記憶の部分を引き継げてその被害者をカエルちゃんとして具現化して認識する事で『名探偵』と言う役割を思い出すように自己暗示をかけている
なるほど、だから「人をあやめた」という共通点を持つ人間がパイロットに選ばれるわけですね。
その推測が一番筋が通っているのかも…。
>カエルちゃんは亡き妻でその妻を殺害した衝動ににジョンウォーカーが絡んできて冤罪を実証するために協力しているのかなと憶測
あーそっちかー!
確かに奥さんの方がかえるちゃんに近い印象がありますね。
本堂町と娘もそれとなく重なります。
ただ秋人自身は冤罪の証明よりも犯人への私的制裁に傾いている印象ですが…それもイドに潜り続けた影響で人格が変貌した結果なのでしょうかね?
元々はザントマンがキリストや釈迦の謎を暴いて強制的に永眠させる話なんだろうけど作者が上級国民だから謎は謎のままのほうがいいとか眠たいこと言って終わるんだろうな
名無しさんコメントありがとうございます!
>作者が上級国民だから謎は謎のままのほうがいいとか眠たいこと言って終わるんだろうな
うーんあながち否めないところですが(笑)
一部の作品しか読んだことないのでイメージとして適切かはアレですが、舞城王太郎は徹底してカオスに突っ込みつつ、意外とシンプルなテーマをやっていたりしますからね。
ただ、今回は探偵=謎解きという方程式自体を崩そうとしている感じが…しなくもないかも(笑)