皆々様こんにちは。
久しぶりに『サイコパス3』担当に舞い戻ったgatoです。
今回は遅ればせながら劇場版の『サイコパス3 FIRST INSPECTER(以下『劇場版サイコパス3』)』の記事を提供したいと思います。
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『サイコパス3』は様々な謎を残しているため、続きが気になる方が多いことでしょう。
そんな僕らの期待が今作でどのように決着したのか、早速振り返ってみましょう。
なお、今回の『劇場版サイコパス3』はなかなかのボリュームであり、例によって文字数がすごいことになりそうなので、前編・後編に分けていきたいと思います。
この前編では『劇場版サイコパス3』の内容のおさらいや解説をメインにやっていきます。
また、今回取り扱っている『劇場版サイコパス3』はAmazon primeで配信されているバージョンです。
スケジュール的にもご時世的にも映画館に行けなかったのでご容赦を…。
もし劇場版を見た方がいらっしゃったら、コメント欄にて補完をお願いします(笑)
目次
公安局襲撃
『劇場版サイコパス3』の舞台は公安局ビル。
六合塚を負傷させた梓澤は彼女からパスを奪い、テレビ版終盤で逮捕された小畑やパスファインダーのジャックドー、ヴィクスンと結託して収監されている潜在犯を開放し、毒ガスを利用して公安局がある本庁舎ビルをまんまと占領してみせました。
そして本庁舎ビルにいる職員を人質に、「都知事の辞任(あわよくば始末)」を要求してみせました。
さらに局長の細呂木(ほそろぎ)を人質にしたり(これは無意味だったけど笑)、二係を壊滅させたりと(これは毎度のこと笑)、傍若無人の暴れっぷりをみせましたね。
それにしても、これまで陰で暗躍することが多かった梓澤にしては、かなり大胆な手口を使ってみせましたね。
まぁ後述する梓澤の目的を踏まえると、彼がこんなやり方を選んだのはコングレスマンの代銀(しろがね)のためだけでなく、シビュラシステムにアピールすることも狙いだったのかもしれません。
シビュラになろうとした男
テレビ版から劇場版まで、『サイコパス3』を通してラスボスとして君臨し続けた梓澤ですが、今回初めて彼の目的が明らかになりました。
梓澤の真の目的はコングレスマンになることではなく、「シビュラシステムの一員になること」。
いやー予想の斜め上をいったな(笑)
ただ、結局免罪体質のことを知らなかったばかりにシビュラシステムにあっさり断られ、キレて大暴れしたために色相が濁ってあっさり逮捕…。
なんていうか、すごいダサい幕切れでしたね(笑)
そんな梓澤ですが、その目的はある種の競争主義の権化ともいえる彼のパーソナリティを考えると、納得はできますね。
梓澤は社会の頂点に立つために、常に競争に勝ち続けようとする上昇志向の持ち主でした。
そう考えれば、作中の社会において最も超越的な権力を持ち、文字通りトップに君臨するシビュラシステムの一員になろうと考えることは不自然ではありません。
後述しますが、ビフロストは結局シビュラシステムの盲点に入り込んで独自の影響力を持っているに過ぎず、社会のトップとはいえないですからね。
そんな上昇志向を持つ梓澤が、自らを「シビュラ的」と称しているのはかなり興味深いものです。
一見する梓澤の上昇志向は単なる野心的なものに見えるかもしれませんが、彼の思想はある意味作中の社会だからこそ醸成されたものだといえます。
作中の社会において、市民は色相が濁らないようにメンタルをケアし、タフネスを鍛えるだけでなく、「選択」を重視する必要があります。
もし選択を間違えれば色相を悪化させ、社会的地位を失うだけでなく、最悪命を落としかねないですからね。
そのため、神経質なまでにメンタルをケアし、タフネスを鍛え、人生の選択に注意する…そんな市民性を持ち得ることになるのです。
この市民性は一見すると健全に見えますが、過剰なまでに発揮されると極端なまでの潔癖や他者への排斥も招くことになります。
そんな市民性は『サイコパス』シリーズの随所で描写されていましたが、『サイコパス3』において、その市民性を持つ代表格は小宮でしょう。
温和で日本人はもちろん入国者にも優しい小宮ですが、潜在犯を避けたり、入国者であるアンを泣く泣く解雇するなど、決して選択を間違えないようにしています。
彼女の色相がきれいなのは持ち前のメンタルもあるでしょうけど、選択を間違えないようにしていることも大きく影響しているでしょう。
これを踏まえると、『サイコパス』特有の市民性を持ち合わせ、自らの社会的地位を引き上げていった点において梓澤と小宮はかなり似通っているキャラクターといえるでしょうね。
ただ、前者はシビュラ的な市民性を堅持するために他者を積極的に利用したり、蹴落としたりするのに対し、後者は例え解雇してもアンを守ろうとするなど、ギリギリまで他者を信じています。
つまりシビュラ的な市民性を持つうえで、他者をどう扱うかが梓澤と小宮を対比するポイントなのでしょう。
また、梓澤というラスボスの存在は『サイコパス』シリーズにおいて、大きな転機になっているともいえます。
これまでの『サイコパス』シリーズのラスボスは、槙島や鹿矛囲(かむい)のように、どちらかというと社会の外側にいる、ある意味超越的な存在だったといえます。
これに対し、梓澤は社会の暗部に隠れていた犯罪者とはいえ、シビュラシステムに忠実であり、普通に犯罪係数も悪化する人物です。
彼が作中の社会におけるごくありふれた市民性の持ち主であることを踏まえると、今回は初めてラスボスが「社会の内側から出てきた」と捉えることができます。
つまり梓澤はシビュラシステムが管理する社会だからこそ登場した人物であり、ある意味作中のあの社会が育ててしまったものだといえるわけです。
だとしたら、梓澤のように悪意に満ちた精神を持つ人間でも普通の人間と同等の色相を持っていることが…ちょっと怖くなりますよね(笑)
免罪体質のことも知らず、狡賢く腕っぷしが強いことを除けば、平々凡々な市民に過ぎない人間がこれだけの犯罪をやっても、色相が濁らないが故に「シビュラ的」になってしまえる…。
これが梓澤を通してみえる、作中の社会の一番深い闇ではないでしょうか。
ある意味、梓澤はシビュラシステムが管理する社会に最も適応できてしまっている人間なのかもしれません。
…とはいえ、梓澤がこんなパーソナリティになってしまったのは篤志に蹴落とされたことが原因のようなので、一概に断定することはまだできないんですけどね(笑)
それにしても、免罪体質という一番重要な要素が抜けていたとはいえ、独自の推理でシビュラシステムの正体を見抜くあたり、やっぱり梓澤って賢いんだな…(笑)
ビフロストの正体
これまでずっと追ってきたビフロストの正体ですが、今回やっと判明しました…。
シビュラシステムのデバッグシステムである管理用AI「ラウンドロビン」を有する極秘部署を、出資者が自分達が利益を得るための組織に組み替えたのがビフロストでした。
つまりラウンドロビンもビフロストも、シビュラシステムに付随するシステムが派生して生まれた存在だったというわけですね。
だからビフロストは公安局の内部情報や免罪体質のような機密を把握していたのか…。
おまけにビフロストの本拠地はシビュラシステムと同じノナタワー!
灯台下暗しを地でいっていたというわけですね…。
うーん、これもちょっと予想の斜め上だったな(笑)
そんなビフロストの目的ですが、それは次のタームで掘り下げたいと思います。
盲点に巣食うもの
ビフロスト…ひいては代銀の目的は小宮の命を奪い、彼女が用いていたAIのマカリナをそのまま都知事に据えることでした。
なるほど、入国者政策にばかり気を取られていましたが、実際の目的は彼女が獲得した都知事という地位そのものだったというわけです。
どうしてこんな回りくどい真似をしているのか…それはマカリナという「非実在的市民」を権力の座につけることで、新たな盲点を創造するためでした。
そもそもビフロスト自体がシビュラシステムにとって盲点であり、彼らはそこでシビュラシステムが、ひいては公安局が取り扱っている事件に介入して利益を得ていました。
そこに非実在的市民のマカリナを都知事の地位に据えることで、政治機構に盲点を作ろうとしたのでしょう。
つまり、自分達が利益を得るために利用できる抜け道をさらに増やそうとしたわけです。
あくまで自分達の利益のために政治や権力すら利用し、シビュラシステムの届かない安全圏に潜り込む…。
そんな彼らのやり方を体現しているかのような計画でしたね。
慎導篤志という男
『サイコパス3』における最大のキーパーソンである灼の父、篤志ですが、今回も彼を取り巻く謎の全貌は語られることはなく…。
ただ、断片的に提示された情報は結構重要そうでしたね。
灼が免罪体質者であることを知っていた篤志は、灼がシビュラシステムの一員になってしまうのを防ごうとしていました。
灼がシビュラシステムの正体を知っていながら、その記憶がなかなか出てこなかったとも、彼が封印していたことが原因のようですね。
そう考えると、灼が色々事件の背景にいたことや梓澤を蹴落としたことも、それと関係がありそうな感じがしてきますね。
さらにビフロストに関わっていたとみられる篤志ですが、彼はコングレスマンであり、法斑(ほむら)の父親でもある劫一郎(きょういちろう)と面識がありました。
ここにビフロストとの接点があったようですね。
ただなぁ…今回の劇場版を見通してもわかったのはこれくらい…。
舞子や炯、灼の仲立ちをしたのも篤志のようですが、炯の兄であり、2年前に故人となった煇(あきら)との関わりは語られないまま…。
そこを知りたかったのに(笑)
まぁ、何はともあれ、篤志の行動原理に灼が免罪体質であることが大きく関わっていたことがわかっただけでも…よしと…できる…かな?(笑)
篤志の「人として生きてほしい」という想いが、灼に大きな影響を及ぼしたようですし。
ちなみに、篤志が灼の記憶を封印する際に口にしていた台詞は、三好達治の『大阿蘇』という実在する詩を引用しています。
篤志はこの『大阿蘇』の後半の部分を引用していますが…この辺り突き詰めると面白いかも。
ただ、僕は寡聞にして三好達治を知らなかったので、この辺りはまたの機会に(笑)
人として生きるために
壮絶な戦いの末に、無事に梓澤を逮捕した灼ですが、なかなかの活躍ぶりでしたね。
まぁ主人公だから当然なんですけど(笑)
そんな灼ですが、今回は印象的な場面が多くありました。
まず、彼の過去。
免罪体質者である灼ですが、なんと彼はシビュラシステムの正体を知っていたとのこと。
なるほど、よくよく考えると厚生労働省の大臣官房の子供が免罪体質者であれば、シビュラシステムからスカウトが来るのは必定ですね。
しかし、灼はシビュラシステムの一員にはなることを拒否し、篤志もその想いを受け入れました。
ただ、灼を見ているとそんな篤志の想いが良い形になっているように感じましたね。
灼は朱のように人や社会正義を信頼する人間ですが、時として過剰なまでに人を救おうとする危うさを秘めていました。
この辺が灼の免罪体質的な側面かもしれません。
朱も人を救おうと奔走しますが、灼ほど強迫的ではなかったですし、鹿矛囲のように救世主になろうとはしませんでしたからね。
そんな灼の免罪体質的な側面のベースは彼が持つ「人であることの信頼」であることのような気がします。
灼はドミネーターを嫌いだといいつつも、ドミネーターに引き金がついていることを評価していました。
なぜなら引き金がついているからこそ、人が人を裁く責任がまだ人に残されているからです。
また、灼は人が「罪を償える」と信じていますが、これは同時に人に対する篤い信頼があることを窺わせます。
これらの点から灼はシステムの有用性を認識しつつも、人という存在を信じ、懸命に救おうとするパーソナリティの持ち主であると窺えます。
だから朱は灼を推薦したのでしょうし、シビュラシステムは彼の存在の重要性を認めて、監視官に置き続けているのでしょう。
そしてラストで朱の提案からシビュラシステムは自分達の正体を公開する際の橋渡しに灼に託そうとしていましたが、ある意味灼は作中のおける今後の社会を担う重要なファクターになっているのかもしれません。
チームプレーとしてのスタンドプレー
テレビ版のラストでサーティーン・インスペクターになったために、今作で灼と対立するのではないか…と危ぶまれていた炯ですが、蓋を開いてみればそんなことはなかったですね。
まぁ…よかった(笑)
炯はあくまで独自の路線で真相の究明にあたった…といった感じでしょうけど、どちらかというと法斑に利用されていた感じが否めない(笑)
ただ、炯の振る舞いは彼がいうように「チームプレー」の一環ということができます。
つまり、一見すると個人的で、独断的なスタンドプレーに見える炯の行動は全てチームプレーとして成立するものだったというわけです。
これが成立するのも、炯が灼達を、そして灼達が炯を信頼しているからこそなのでしょうね。
実際、狡噛と殴り合っている際の炯は灼の勝利を信じていましたし。
それに、お互いに秘密を隠し合っていても、決して信頼を失わない炯と灼の絆は、かなり重要なファクターになる予感がします。
法斑の暗躍
テレビ版の時から謎だらけだった法斑ですが、今回は彼の目的が明らかになりました。
法斑の目的はなんと「ビフロストの破壊」、つまり初めからビフロストもコングレスマンも全部失くしてしまうために行動していたわけです。
なるほど、彼が公安局に肩入れしていたのはそれが理由だったわけですね。
また、法斑はシビュラシステムが、ひいてはシビュラシステムが管理する社会を容認している節がありました。
ただ、ヘブンズリープのような妄信的な信者というよりも、シンプルにその有用性を認めているという感じがしますね。
それに彼はシビュラシステムの正体を知っているようでしたから、何もかもを知ったうえで受け入れているという感じでしょう。
うーん、ここにきて法斑が一気に曲者になってきたな…。
結局法斑の過去は語られなかったですが、ラストで度肝を抜く立ち回りを見せてきました。
なんと落命した(ことになっている)細呂木に代わって、法斑が公安局局長に就任!
…これはヤバいですよね(笑)
彼が公安局に関わること自体にも驚きですが、これまでシビュラシステムの構成員でなければ着任できなかった地位に生身の人間が就任したことはシリーズにおいて、かなりインパクトがあることです。
こうなると法斑が免罪体質者である可能性すらでてきますが…。
ただ、個人的には免罪体質者ではない人間が局長に就任するというシナリオの方が面白いですね。
そうなれば、シビュラシステムが免罪体質者を重視する姿勢を改めたいうことになりますし、何よりシンプルに人を信頼する道筋を選ぼうとしていることになりますからね。
いずれにせよ、法斑が今後のシリーズにおいて最大級のキーパーソンになる可能性は出てきそうです。
先達の活躍
今回は狡噛(こうがみ)や宜野座(ぎのざ)など『サイコパス』シリーズの人気キャラが一堂に会しましたが、あくまで『サイコパス3』のキャラクターの引き立て役に終始していましたね。
ただ、狡噛は相変わらずの猟犬っぷりを発動…挙句の果てに炯をボコボコにするという暴走っぷり(笑)
まぁ第一期主人公の面目躍如ってところでしょうけど(笑)
後、個人的に印象的だったのは霜月と唐之社(からのもり)。
元々『サイコパス3』ではかなり丸くなった感じが出ていた霜月ですが、今回は誤って催涙ガスを放った廿六木(とどろき)に謝ったり、一緒にロボットを倒してグータッチするなど、意外な一面がちらほら…。
うーん、僕の知っている霜月じゃないぞ(笑)
そして今回毒ガスが充満する部屋の中で命を賭してサーバールームを奪還した唐之杜。
犯罪係数の低下と共に、一般的な市民として生活を送ることを不安がるなど、フラグを立てまくりでしたが、無事に生還。
同じ一命をとりとめた六合塚とラブラブ(?)なシーンをみせつけてくれました。
これからは潜在犯の分析官ではなく、一般市民に戻れた唐之杜が見られるかもしれませんね。
そして今作のみならず、『サイコパス3』においてずっと監禁されっぱなしだった朱ですが、ラストで無事に解放。
おまけに「法廷執行官」になるという結果になりました。
個人的にこれも法斑の局長就任ばりに驚きましたね。
漢字表記は勘で書きましたが、もし「法廷執行官」なる職業が文字通りのものだとしたら、朱は作中の社会においてはほとんど形骸化した司法に関する職務に就くのかもしれません。
実はこれもシリーズ的には結構重要なことだったりしますね。
作中の社会において、裁判だの弁護だのといった司法はほとんど機能していませんでしたが、それを取り戻すということであれば朱はかなり大きな社会変革をもたらそうとしていることになります。
そして作中でも明言されているように、法はシビュラシステムを守りつつも縛るもの…つまり、朱はようやっと社会を管理するシビュラシステムを管理するものを作りつつあるのかもしれません。
また、朱とシビュラシステムのやり取りを聞いていると両者の関係性がちょっと変わった感じがしますね。
朱がシビュラシステムの前であんな穏やかな笑顔を浮かべていますし、これまで「電源を落とす」だの「一緒に地獄に落ちる」みたいなことを言っていた彼女が「法がシビュラシステムを守る」なんてことをいっているわけですからね。
こういうところを見ていると両者の関係がちょっと軟化した感じがします。
まぁ詳細は結局不明でしたが、朱を監禁している状況をシビュラシステムが「保留している事案」と称し、法斑に解決を託そうとしているところを見ると、もしかしたらシビュラシステムは何らかの限界を迎えているのかもしれません。
シビュラシステムが自身の限界を認知し、何かしらの認識を改めたからこそ、朱は彼らとの向き合い方を変えているのかもしれませんね。
それにしても朱が狡噛とやっと直接対面する場面は…やっぱほっこりしますね(笑)
『劇場版サイコパス3』感想
いやーやっぱり文字数がすごいことになった…(笑)
もう感想だけなので簡単にまとめちゃいますけど、色々出し惜しみがあって不完全燃焼感は否めませんが、物語としては色々今後を期待させるものでした。
ただ制作陣…続編に色気出し過ぎ!(笑)
それでは、さらなる掘り下げや続編予想については後半の記事をご覧ください~。
▼劇場版サイコパス3含む全シリーズを無料で視聴する方法はこちら
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