皆々様こんにちは。
再び『サイコパス3』の担当となったgatoです。
前回に引き続き、ここでは『劇場版サイコパス3 FIRST INSPECTER(以下『劇場版サイコパス3』)』の考察や残された伏線・謎、続編の可能性について記していきます。
▼前回の記事はこちら
作品の性質上、実質的に劇場版を含めた『サイコパス3』全体の統括になりますのでその点はご留意を。
まぁ今回は二部構成で書いているので、文字数は適度な具合になる…はず(笑)
それでははりきって参りましょう(笑)
目次
『劇場版サイコパス3』考察統括
ここでは『劇場版サイコパス3』を踏まえ、『サイコパス3』全体の考察を統括していきます。
内容を分かりやすくするため、ここでは「システム」、「人」、「真実」という3つのタームで分けて記していきます。
システムについて
『サイコパス』において、「システム」は正義や銃口など様々な意味を含めていますが、ここではシンプルに「シビュラシステムが管理する社会」というニュアンスで「システム」について掘り下げていきます。
さて、『劇場版サイコパス3』および『サイコパス3』では改めてシビュラシステムの限界が垣間見える描写が多々見られました。
ビフロストそれ自体がシビュラシステムの盲点を利用して設立された組織ですし、梓澤(あずさわ)達インスペクターやコングレスマンもビフロストが測定できないポイントを熟知したうえで犯罪を行っています。
おまけに梓澤や些々河(ささがわ)のように徹底的なメンタルケアや、「自分の正しさを確信する」という驚異的なメンタルタフネスを持つ人物の登場により、犯罪係数や色相をベースにした鑑定自体上手くいかなくなるケースも発生しています。
これは潜在犯や免罪体質者のように「社会の軌範から外れている」人間が犯罪を行っているケースとは異なり、シビュラシステムの測定上「社会の軌範を外れていない」とされる人間が犯罪者になり得るという状況が誕生してしまっていることを指しています。
そしてこの状況は同時にシビュラシステムが管理する社会によくも悪くも人間が適応できてしまっていることも示唆しているでしょう。
この事態はシビュラシステムにとっては致命的なものです。
なぜなら犯罪係数の計測基準自体を見直さざるを得ない事態を到来してしまっているわけですからね。
また、詳しくは語られていないものの、朱の監禁にまつわる事案に対してシビュラシステムは「保留」という驚くべき対応をしています。
これまで無限に進化を続け、あらゆる事態に対処できると自負してきたシビュラシステムが明確な解決ができずに保留という選択を取らざるを得ない。
この段階でシビュラシステムの進化が頭打ちになりつつあることが感じられます。
実際的にどのようにシビュラシステムが頭打ちになっているかは続編を待たざるを得ませんが、元々『サイコパス3』や『劇場版サイコパス3』の制作に関わっている冲方丁は『サイコパス2』でもシビュラシステムの盲点を暴くストーリーを描いていました。
今作においても、その路線は継承されているといえるでしょう。
人について
シビュラシステムの盲点や限界が露わになっていることもあって、『サイコパス3』や『劇場版サイコパス3』ではシビュラシステムの判断を仰いだり、ドミネーターで直接執行するシーンは少なめでした。
一方で灼(あらた)や炯(けい)達公安局が情報収集や分析を行い、直接敵と戦闘する場面が多かった印象があります。
まぁ作劇的にアクションシーンを増やしたかったという事情があるのかもしれませんが(笑)、それを差し引いても今回は「人が人の力を以て事態を解決する」場面が象徴的に描かれていました。
そして、その場面を成立させるうえで欠かせないファクターとなったのは灼と炯の関係に代表されるような、絆…もとい、ある種の信頼です。
『サイコパス3』で灼や炯が曲者揃いの執行官達との間で信頼を育んできましたが、その信頼があったからこそ『劇場版サイコパス3』で発生した前代未聞の事件を解決したといえます。
これは一見すると素朴なものですが、シビュラシステム自体が意外と「信頼」を重視している場面が『劇場版サイコパス3』にあったことを踏まえると、意外に馬鹿にできないものかもしれません。
『劇場版サイコパス3』ではラストで法斑(ほむら)を公安局局長に就任させるという意外な展開が発生しました。
公安局はシビュラシステムの直轄といっても過言ではなく、システムの意向が最も直接的に反映される組織です。
そこに人間を据えるという段階で、シビュラシステムがこれまでにない判断をしていることが垣間見えます。
さらに法斑の要請を受け入れる形でシビュラシステムは監禁していた朱を「法廷執行官」として開放しました。
法廷執行官がどんな職業なのかはまだ不明ですが、解放される直前の朱とシビュラシステムのやり取りを見ていると、シビュラシステムがかなり朱の意向を受け入れていると推察できます。
これまでのシビュラシステムであれば「シビュラシステムを法で守り、法で縛ることになる」と語る朱の話なんて耳を貸さなかったでしょうね。
これらの点を踏まえると、『劇場版サイコパス3』で見られた法斑や朱への対応は、シビュラシステムがかつて独占しようとしていたものを人に託していると捉えることができます。
そしてこれを意訳するなら、シビュラシステムが人を信頼しようとしているといえるのではないでしょうか。
いずれにせよ、システムに限界が垣間見えている状況において、『劇場版サイコパス3』や『サイコパス3』は人と人、人とシステムの間で「信頼」が重要なものになっていると示唆しているのではないでしょうか。
真実について
システムが限界を迎える中、人と人の間で、人とシステムの間で信頼が重要となってきている…と書いてきましたが、その流れは決してスムーズではありませんし、依然として失敗するリスクを孕んでいます。
その要因となっているのが真実…正確には「秘められた真実」です。
『劇場版サイコパス3』では、灼は免罪体質者、炯はサーティーン・インスペクター(もしかしたら他にもあるかも)という真実を隠していますが、固い絆で結ばれた2人の間でも、最後までその真実を明かすことはありませんでした。
それぞれが抱える秘密が明らかになれば、現在の関係性のみならず現在の状況が根底から覆ってしまうことになりかねないため、簡単に明かすことはできないでしょう。
まぁお互いに秘密を抱えていることを明かしても簡単に決裂しないのが灼と炯の絆の強さですが…秘密を抱え続ける関係というは同時に危うさも孕んでいるものです。
そして、そんな灼と炯の関係はそのまま作中の社会にも当てはめることができます。
『サイコパス』シリーズにおいて、日本は戦乱渦巻く世界で唯一といっていい平和な社会を得ていますが、その平和を獲得しているのは社会…ひいてはシビュラシステムと人の間に信頼関係が成立しているからだといえます。
しかし、シビュラシステムと人の信頼関係は免罪体質やシビュラシステムの正体という重大過ぎる真実を隠したうえで成立しているものです。
免罪体質やシビュラシステムの正体といった真実は一度露呈すれば計り知れないインパクトをもたらすものであり、簡単に受け入れることはできないものです。
もし迂闊に公開すれば作中の社会は混乱するだけでなく、とんでもない反発が起こることは必至でしょう。
ただ、人とシビュラシステムの信頼関係を絶対的なものにするには、いつかこの真実を公開し、そのうえで信頼を得る必要があります。
実はこの課題に関しては第一期から言及されており、ある意味シリーズを通じて追求されているものだといえます。
そして『サイコパス3』、『劇場版サイコパス3』では「真実」の追求をベースに物語が展開され、改めて「真実をどう公開すべきか」を課題に立ち上げました。
個人的に『サイコパス』シリーズは「いかにシビュラシステムの電源を落とすか」を突き詰める物語だと思っていましたが、今作を通じて「いかに隠された真実を公開し、そのうえで信頼関係を構築するか」を突き詰める物語であると感じました。
これは今後作成されるであろう続編においても、かなり重要な指針になると考えられます。
残された謎・伏線
『劇場版サイコパス3』ではいくつかの謎・伏線が回収されましたが、結局回収されなかった謎・伏線もいくつか…それもとびきり重大なものも残っています。
ここでは一度それらを整理してみましょう。
篤志の謎
度々キーパーソンとして語られた灼の父である篤志ですが、彼が炯の兄である煇(あきら)の命を奪い、自ら命を絶った経緯は語られませんでした。
篤志はビフロストと深い関わりを持ち、朱の監禁の原因となった事件に関係しているだけでなく、シビュラシステムの正体を知っているなど、作中の社会の深部や物語の核心に最も近い人物です。
彼のエピソードが明かされるだけで物語の解釈がかなり変わるので、個人的には早く出してほしい(笑)
煇の謎
炯の兄である煇(あきら)は篤志と負けないくらい…いや、それ以上に謎に包まれた人物です。
テレビ版でもほとんど登場シーンがなかったうえに、素顔も明かされないなど、その素性が全くと言っていいほどわからない…。
現状分かっていることとしては「篤志に命を奪われた」、「コングレスマンがその存在を知っている」といった情報があるくらい…。
うーん、つまり全然わからない(笑)
個人的にはインスペクターの一員として、入国者絡みの案件に関わっていたんじゃないのかなー…と思っていたり(笑)。
朱の謎
朱が監禁されていた経緯もなんやかんやで明かされず仕舞い。
『サイコパス』シリーズの顔といっても過言ではない朱のことですから、一刻でも早く知りたいところなんですが(笑)
朱が監禁された経緯は篤志が関わっていますし、そうなれば煇も関わってくる可能性も出てきます。
また、公安局局長が禾生(かせい)から細呂木(ほそろぎ)に代わったこともこれが転機かもしれません。
いずれにせよ、朱の謎は篤志のそれと同じくらい重大な核心でしょうね。
個人的に朱の監禁は入国者だけでなく、シビュラシステムの真実の公開が絡んでいるのかなーって予感がします。
シビュラシステムの正体を知っていると思しき篤志と、正体を知っている朱の絡みですから、これくらいはあってしかるべきかと…(笑)
法斑の謎
公安局の新局長になった法斑ですが、彼もなんやかんやで謎が多いんですよね…。
彼が公安局(厳密には灼?)に肩入れする理由も不明ですし、父親であり、先代のコングレスマンである劫一郎(きょういちろう)に何があったのかも謎のまま。
劫一郎は篤志とかなり関わっているため、篤志方面の謎が解き明かされると出てきそうですね。
また、法斑は親子そろってシビュラシステムの正体を知っていたと思しき描写もあるなど、作中の社会の深部にかなり関わっていると窺わせます。
そんな彼が公安局局長に就任するということは…物語にかなり大きな転機をもたらす気がしますね。
外務省行動課の謎
花城率いる外務省行動課もなんやかんやで謎が多いんですよね。
まず結成の経緯。
狡噛(こうがみ)は『恩讐の彼方に__』で参加の経緯が語られましたが、スカウトを一度断っている須郷やスカウトされていない宜野座の経緯は不明。
さらに『劇場版サイコパス3』では梓澤が花城との取引の過程で、彼女の「復讐」について触れている場面がありました。
どうやら花城は「復讐したい相手がいる」ということですが、この辺も語られないまま…。
他にもジャックドーやヴィクスンといったピースブレイカーと狡噛の間にある因縁も気になるところ。
外務省行動課の結成の経緯は朱の監禁とセットで解き明かされそうなところですが、花城の復讐に関しては続編でピックアップされそうな予感がします。
続編の可能性は?
最後に『サイコパス』シリーズの続編があるかどうかについて触れてみましょう。
結論からいってしまうと、続編は十中八九あります。
まぁそうでないと、ここまで出し惜しみしないだろうしね(笑)
インタビューなどで制作者が続編について言及している場面もありますし、篤志や朱といった重大なキャラクターの謎がそのままなので、続編を作る余裕は十分にあります。
ただ、『劇場版サイコパス3』でかなり重大な展開が出てきたうえに、「シビュラシステムの真実を公開する」という最も重大なイベントが具体性を帯びてきましたので、次のシリーズが最終章になるかもしれませんね。
もう少し細かく予測するなら、恐らく外務省行動課結成の経緯や法斑の過去を『SS』みたいな短編・中編の劇場版でやった後に(長編になるかもだけど)、残りの謎をテレビシリーズで片付ける…といった具合でしょうか。
あるいは残された謎を分割した劇場版で全部片づけた後に、改めてテレビシリーズで最終章を作る…みたいな感じかな。
いずれにせよ、「シビュラシステムの真実を公開する」を突き詰めていく展開になるのは間違いないでしょう。
そうなると公安局と外務省行動課が対立しそうな予感がちょっとするんだよなぁ…。
まぁこの辺は続報に期するとしましょう(笑)
最後に
いやぁ、なんだかとりとめのない記事になってしまって反省…。
ひとまず、『劇場版サイコパス3』に関してはこれにて一度落着。
次のシリーズがいつになるかはわからないですが(下手したら2年以内に来そうですね)、また続編の情報が出ることを楽しみにしたいと思います。
▼劇場版サイコパス3含む全シリーズを無料で視聴する方法はこちら
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コメント
一点、指摘。
「法廷執行官」ではなく、「法定執行官」が正しいと思われます。
係争中の重要人物なので、「法の定めに従って執行官に任ずる」という意味で、朱は執行官に任命されたのでしょう。
ヒソカさんコメントありがとうございます!
>「法廷執行官」ではなく、「法定執行官」が正しいと思われます。
ご指摘ありがとうございます。
確かにそっちの方がしっくりくるというか…すいません、何も考えずに変換しちゃったと思います。。。
他にも間違いがあったらいつでもご指摘ください!